Vol.0239 「NZ・生活編」 〜父の日改革〜

「父の日」といえば、6月の第3日曜日。「母の日」に比べてかなり地味で盛り上がりに欠ける日。「母の日」のカーネーションのような定番がなく、なかなかプレゼントが思いつかない日。思いついてもタバコだのお酒だの、積極的に買いたくないものばかりの日。作り物のホワイトデーよりはましながら、何もしなくてもたいして後ろめたさの残らない印象の薄い記念日・・・。

私にとっての「父の日」のイメージは、こんなものでした。子供たちが幼稚園や学校で作ってくるカードや工作も、どう見ても「母の日」の方が凝っており、私のイメージは世間一般のそれと大きくかけ離れているわけではなさそうでした。しかし、ニュージーランドに来て、そのイメージが一変しました。それは私だけでなく、夫自身、子供たちも含め、家族全員にとっての一大意識改革、嬉しいサプライズでした。それを教えてくれた近所の人たちへの感謝も込めて、西蘭家が過ごした「父の日」をお伝えします。

NZの「父の日」はなぜか9月で、今年は5日でした。「何かしてあげたら〜?」と、子供たちに軽く念押ししながらも、何の予定もないまま迎えた当日の朝。8時ごろ玄関でドアベル代わりの金属をカチカチ鳴らす音が・・。「さっそく子供の友だちが遊びにきたな」と思っていると、見に行った夫に「ハッピー・ファーザース・デー!!」と言っている声がします。そして彼らが帰った気配。「わざわざあいさつに来たの?」と思っていると、夫が首から黄色と青のレイをかけ、大きなケーキを持って戻って来ました。

「イライジャの家からこんなもんもらった。」と本人も呆然。よくよく見ると手作りのカードまで手にしています。「いつから近所の子のパパになったの?」とクスクス笑いながらカードを開けると"To Taka, Welcome to New Zealand! Happy Father's day"とあり、善の同級生のイライジャ他、きょうだい3人のサインがしてあるではないですか!ケーキは焼き立てでした。本格的なプレゼントにパジャマ姿で出てきた子供たちと家族全員でビックリ!(イライジャたちもパジャマのまま届けに来たのですが・・・笑)
(←とっても美味しかったバナナケーキ♪)

思いがけないことに、西蘭家の朝食は急きょバナナケーキとなり、みんなそれぞれ感慨深げ。「いやぁ、驚いたなぁ。今までの「父の日」、いや人生でこんなに意外なプレゼントをもらったのは初めてだよ〜」と、レイをかけたまま感動にひたる夫。内心、「やっば〜〜」とでも思ってるのか言葉少なの息子たち。イライジャ一家の粋な計らいに感心しまくる私。朝食後、夫は感動のまま、用事で出かけて行きました。

すぐに近所に住む別の友達シオネがやってきました。きょうだいの多いシオネ一家ですが、誰も今日が何の日か覚えておらず、お父さんが家族の前で思わず、"Happy Father's day to me, Happy Father's day to me・・・"と"Happy Birthday"の替え歌で歌ったそうな・・・(笑)「なにかしてあげなさいよ、あなたたち。今からでも遅くないから」と諭すと、3人は相談を始めました。その結果、@歌を歌う、Aカードを書く、B詩を贈る、C夕食を作る、という四大作戦で起死回生を図ることに・・・。

すぐに縦笛3本、ギター2本を出してきて、3人が練習を始めました。"Rock'n roll on Father's day, Rock'n roll on Father's day"と善がテキトーな歌詞でシャウトする横で、温とシオネは笛とギターの二重奏で"What a lovely Sunday on Father's day"と替え歌に挑戦。狭いリビングが割れるようなデタラメな音とその大きさに、思わず席を外したほど。歌の練習が済むと、今度はカード書き。シオネが大きな家の絵に丁寧に色を塗っている横で、息子たちは色鉛筆で字と絵をかいておしまい。性格の違いが良く出てます。
(←重いのかギターを横に置いてお琴状態の善)

そこに記された温とシオネの合作の詩。
Always nice
Taking care
Who am I?
Who am I?
I am your father?
I am your son?
Happy Father's day!

一応軽く韻も踏んで、さすが高学年。ちょうど帰ってきた夫にさっそく歌とカードのプレゼント。ランチの後はさすがにゲームに流れて、一休み。

本当に夕食をあてにしていいものかどうか4時ごろ3人に念を押すと、「大丈夫!」との力強い返事。「材料も作るものも決まってないのに?」と、土壇場でこちらに振られるのを覚悟していると、な〜〜んと子供たち、シオネの家に行って中学生のお姉さん、リサを呼んできたではないですか!突然呼ばれた彼女も何事かと、"What can I do for you?"と私に聞く始末。「お料理得意?」と聞くと、「あんまり」という答え。でも4人とも作る気だけは満々なので、こちらで音頭を取りつつ任せることにしました。

善(7歳)−米とぎ係
シオネ(8歳)−サラダ係
温(10歳)−フレンチ・ドレッシング係
リサ(11歳)−焼き鳥係

温とリサにはいなり寿司も詰めてもらいました。焼き鳥は他の料理に使うためわざわざ骨付きで買っておいたチキンを、リサが苦労しながらもなかなか器用に小さく切り、脇で温が串に刺し最終24串。いなりも60個を作り、それぞれ両家で分けることに。私も焼き鳥を焼きながらタレを作り、スープを作って準備完了!シオネたちはカードと夕食を持って6時に帰宅。その後、ワインを開け、ご近所総出で盛り上がった「父の日」ディナーを家族水入らずで楽しみました。

きっかけとなってくれたイライジャ一家、一緒にがんばって新しい過ごし方に協力してくれたシオネとリサに感謝します。私たちは今年2回目の、笑い声が絶えなかった「父の日」をずっと忘れないでしょう。そして来年からは必ずや、この日を思い出しては家族全員で自分ができることをしながら、祝うことでしょう。棚ボタで「母の日」にも期待できるかな? もちろん「子供の日」も安易にプレゼントで済まさずに、何かをして楽しむことにしましょう。
遅まきながら、NZのパパたちへ、Happy Father's day!

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「マヨネーズ」 8月の終わりから大型店は一斉に「父の日キャンペーン」に入りました。しかし、お世辞にも全店挙げてという状態ではなく、キャンペーンの商品目玉も、芝刈り機だの日曜大工セットだの実用品ばかり。「父の日まで働けってか?」と、芝刈りにも日曜大工にもまったく興味のない夫は、わんさか入ってくる新聞の折り込み広告を見てはやや食傷気味。そうでなければ、靴下、下着、髭剃りセットと、限りなく日用品に流れ、「どっちにしろ買うつもりだったから」とついでに贈られるような品ばかり。これが「母の日」にはどうなるのか、今から楽しみ♪

西蘭みこと