Vol.0250 「NZ・金融編」 〜銀行チャチャチャ その5〜

○×銀行で、開いてから24時間も経っていない口座を解約し、残高全額を銀行振り出し小切手にしてもらった私たちは、すぐに、朝方、口座を開いたばかりの凸凹銀行に向かいました。その日2回目の訪問です。口座開設を手伝ってくれたディーンはランチに出ていて不在でしたが、窓口に小切手を持ち込み、すぐに自分たちの口座に入金しました。「これで今日から預金全額に金利がつく」と思うと、まずは一安心。当面使う予定のない一部の資金は、更に金利の高い定期預金にしました。

前にも書きましたが、金利のつかない○×の当座預金口座に入れたままにしておけば、残高100万円相当ごとに1日約110円の金利収入(税引き前)をみすみす逃してしまうことになります。このニュージーランドドル高、高金利の中で、放置しておくわけにはいかない状況でした。最終的に丸1日で口座を解約したことで、金利がつかない状態は1日で食い止められました。銀行利用のレッスン代だと思えば安いものです。

ところで、なぜ銀行間送金にせず、銀行振り出し小切手にしたかというと、ニュージーランドならではの理由があるからです。ここではなんとTT(電信為替)での国内送金が3日もかかるのです!香港であれば、他行であっても翌日には入金されます。送金だけで3営業日、しかもその日は金曜日だったので、週末を含めれば最大で計5日間の空白期間が生じる可能性があったのです。入金が確認されない以上、凸凹が金利を払うことはないでしょうから、送金では最悪で5日間の金利を失うところでした。

その点、銀行振り出し小切手であれば振り出した銀行が支払いを保証しますので、受け取る銀行は取りっぱぐれがありません。ですから小切手を受け取った日から、小切手の決済が済んでいなくても、振り出した金額が私たちの口座に残高として計上されます。し・か・も、それに対して金利も支払われるのです!これが支払いの裏づけが得られない個人名義の小切手との大きな違いです。例え自分たち名義の小切手を、自分たちに振り出したとしても所詮は個人、受け取る凸凹の信用を得ることはできないでしょう。

ただし、実際のお金が届くのは小切手決済後になるため、凸凹は受け取ってもいない資金に金利を支払わなくてはいけないのです。考えてみれば妙な話ですが、ここではこれが普通なんだそうです。少しでも資金を手元に留めたい銀行同士が、互いに決済を遅らせては意地悪し合っているらしく、ディーンも「決済は相手の銀行次第だから・・・」と肩をすぼめていました。しかし、いくら意地悪でも、3、4日でケリが着くのかと思いきや、個人小切手と同じ5日もかかると知ってビックリしました。

ちょうどその頃、数週間にわたって借りていたレンタカーを返すことになり、かなりまとまった額の支払いをしなければならなくなりました。ぜひとも香港建てのクレジットカードではなく、銀行口座からニュージーランドドルで支払いたかったのですが、小切手が決済されないことには私たちの残高は絵に描いた餅で、現金を引き落とすことができません。けっきょく、レンタカーの返却日が伸びたため、ニュージーランドドルで支払うことができましたが、5日間の思わぬ"金欠"にはヒヤリとさせられました。

ディーンは始め、私たちが話す聞き慣れない英語に面食らっていたようですが(金融関連の英語も香港とは若干違ってました)、そのうち、「落ち着いて聞けば何を言ってるのかわかる!」と気づいてくれたらしく、だんだんリラックスしてきました。こちらが客である以上、なかなか"I beg your pardon."とストレートには聞けないことでしょう。「今おっしゃったのは、これこれこういう意味ですよね?」というような確認は何度かありましたが、そうこうするうちに耳が慣れてくれたようでした。

そのうちファーストネームで呼んでくれるようになり、私たちも買い物がてらに保険、法人口座、IRD(納税者)番号の取得の件(これがないと預金金利への課税率が上がります)などで、ちょくちょく彼を訪ねるようになり、口座を開いた後しばらく、毎日のように顔を合わせていました。シティーではなく最寄りの銀行の大きなメリットです。個人的な話もし、私たちがどういう素性の者かも、だいぶわかってくれたようでした。

機は熟しました。そこである日、「クレジットカードを作りたいんだけど・・・」と話を持ちかけました。ディーンの顔から、はにかんだ笑顔がさっと引っ込み、素直に当惑した表情になりました。「そのう、クレジットカードは永住権を持っている人にしか発行されないので、永住権のないキミたちには悪いけど・・・」と口ごもりながら理由を説明し始めました。それはこちらも十分承知しています。「でも、どうしても欲しいので申し込んでみたいんだけど・・・。」私は淡々と話を続けました。(つづく)

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「マヨネーズ」 ニュージーランドの4大銀行はすべて外資系で占められ、上位3行はオーストラリア資本です。「ニュージーランド銀行」という名前の銀行までオーストラリアの銀行なのですから、ややこしいです。そのうちの一行ASB銀行のテレビCMは、私はもとより、子どもまで楽しみにしています。

"ASB Bank, One step ahead"というキャッチフレーズが流れるたびにみんなでゲラゲラ。「アイエスビー・バンク、ワンスティープ・アヒード」とすごい訛りで、音だけ聞いていたら"ISB Bank?"という感じです。「何もここまでオーストラリア丸出しでなくても・・・」と思ってしまうのは、余計なお世話でしょうか?

西蘭みこと