Vol.0266 「NZ編」 〜キウイの計算 その3〜

私:「どうしてニュージーランドのスーパーってたくさん買っても安くならないの?」
友人:「どういうこと?」
私:「例えば、5キロと10キロの袋があったら、5キロを2つ買った方が10キロ1つを買うより得なことがよくあるの。どうして?」
友人:「まさか!?」
私:「知らない? こういうのってけっこうあるのよ。この間もティーバッグを買おうと思ったら、30袋入り、60袋入り、100袋入り、200袋入りがあって、どれが1袋当たり一番安かったと思う?」
友人:「そりゃあ、200袋入りだろう?」
私:「ところが100袋入りなの!しかも、"特売品"って書いてあるのは60袋入りなのよ!」
友人:「まさか!?」

数年前からの友人であるニュージーランド人宅にお邪魔して、ワインを片手に屈託のないおしゃべりをしていた時の会話です。友人は大手投資銀行の幹部として鳴らし、数字には滅法強いはず。その彼でさえ、ここでは「大量に買っても単位あたりの価格が安くなるとは限らない」という現実に気付いていないようです。しかし、こんなことは日本人の間では常識です。誰に聞いても「そうなのよー。よく計算しないと、割高なものをたくさん買い込んじゃうことになるわよ」と言われます。

ティーバッグの件で言えば、30袋入りが89セント(一袋当たり2.97セント)、60袋入りが1.95ドル(同3.25セント)、100袋入りが2.85ドル(2.85セント)、200袋入りが5.89ドル(2.95セント)でした。一袋当たり3セントを超える60袋入りのみが、わざわざ"特価品"と表示されていたのには恐れ入ります。500グラム入りだと2ドルを切るマーガリンが1キロ入りだと4ドル以上など、こんなことは枚挙に暇がありません。そのため、売り場でハタと立ち止まり、暗算していることがよくあります。

小麦粉を5キロ買っても10キロ買ってもキロ当たりの値段が変わらないのであれば、場所を取る10キロを敢えて買おうとは思いません。いつも行っているスーパーの牛ひき肉のグラム当たりの値段は300グラムパックでも500グラムパックでも、1キロでもすべて均一です。でしたら、1キロの代わりに500グラムを2パックか、500グラムと300グラムを1パックずつ買って、調理に合わせて使い分けるか、すぐに使わない量を冷凍しておくという手もあります。1キロ全部を冷凍してしまった日には、解凍がどれだけ面倒なことか!パッケージの手間と料金が値段に反映されないのは不思議ですが、買う側としては助かるので文句はありません。

「どうしてなのかな?」 私は最初の質問に立ち返り、もう一度友人に聞いてみました。「うーん、スーパーの件は信じがたくてよくわからないけど、近所のデイリーで売ってる物がスーパーより高いっていうのはわかるな。」と、彼は話の焦点をずらしてきました。デイリーとはNZならどんな小さな町にでもある食料雑貨店で、パンや飲み物、乳製品などの食料品を中心に缶詰、調味料、雑貨、新聞などを売る店です。住宅街であれば、必ず一つや二つはあります。

「近所のデイリーで売ってるシリアルはスーパーで買うより、1箱1ドル(約75円)近く高いんだ。しょっちゅう朝ごはん用に買ってたら、そりゃ高くつくよ。でも、キウイはそれがわかってて買ってるんじゃないかな? 近所で便利だし、わざわざクルマを出してスーパーまでシリアル一つを買いにはいかないだろう。その分、少し高くなっても構わないから簡単にすませたい、つまり便利さにカネを払ってるんじゃないかな? ボクだったら払うよ。」

これと同じ話を、夫が近所のデイリーの韓国人オーナーから聞いていました。高級住宅地エプソンでデイリーを経営している彼の友人は、住人のほとんどが白人だった15年前くらいまでは商売が繁盛していたそうです。みんなが頻繁にまとまった買い物をしてくれたからです。ところが最近は住人の半数以上がアジア系になってしまい、彼らは週1回スーパーへ行ってドーンと買い込んでくるのでデイリーに来ることがなく、商売は上がったり・・・だというのです。現に西蘭家も牛乳やパンなどを切らしてしまい、「どうしても」という時以外はデイリーには行きません。それも月に1回あるかないかです。

遠くても足を運び、綿密に計算してでも割高なものをつかまないようにする、私たちアジア人。割高でも近所で便利に済ますというキウイ。両者の考えは相容れません。しかし、友人のように「便利さにカネを払う」と断言するのであれば、割賦販売での買い物にも合点がいきます。「今ほしい」にカネを払うわけです。彼はまた、「多少高くても高級な店で丁寧に対応されながら買い物するのは一種の贅沢であり愉しみでもある。ボクはそれにもカネを払うよ」と言いました。ここには「割高=損」という図式はありません。私はもう一つの価値観を前に、スーパーでの暗算さながらに自分の考えを弾き出していました。(つづく)

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「マヨネーズ」 今日もスーパーでキャットフードの缶詰を買おうとしたら、400グラム入りが65セントなのに、倍の800グラム入りは1.8ドル! グラム当たりでは大きい缶の方が4割増し! どちらも一度では食べきれない量なので、小さい缶の方が冷蔵庫に入れておく時間が短くなって大いに助かります。しかし、こんなに違うとなると「もしかして手違い?」とも思い、小さい缶を大量にカートに入れながらもレジでは思わずデジタル表示を凝視。なぁ〜んのこたぁなく「$0.65」でピッ!と通過。こんなもんです(笑)

西蘭みこと