Vol.0273 NZ・生活編 〜オタラで逢いましょう〜

「5時半に来い」と言われたので、4時半に起き、荷物と半分寝たままの子どもたちをクルマに積み込み、夫の運転でいざ出発。目指す場所は南オークランドのマウカウ地区にあるオタラ・マーケット。家からクルマで約25分の場所です。「どうか雨が降りませんように」と祈って寝たせいか、目覚めた時こそ降っていませんでしたが、高速道路に乗ったとたん本降りに。日の出前の空は厚い雲に覆われ、その日1日降るであろうことは容易に見て取れました。「でも、行くと決めたからには行こう!」 

オタラ・マーケットとは、人気雑誌の「ベスト・マーケット」に選ばれるほど規模の大きいフリーマーケット(フリマ)です。前身は青空市場だったのか、毎週土曜日朝6時から12時までの朝市で、かなりのスペースが青果や生花、食品を売る店で占められています。私が参加した日はクリスマス直前、年内最後の開催日で、前日の電話での問い合わせに対し、係の人からは「予約はいっぱいだけど、雨でキャンセルが出るかもしれないから興味があったら来てみたら? ホールに5時半にね。」と言われていました。

着いた時には早くも仮設テントや後ろの扉を開けたバンがびっしりと並んでいました。年間予約で定位置を確保しているプロの業者が、大雨の中、商品を搬入している真っ最中です。「ホールはどこだろう?」 地図で確認できなかったので小さな建物なんでしょう。

クルマを降りたところで、段ボール箱を積み上げていたパシフィック・アイランダーらしき若い男性に尋ねると、突然「ニ―ハオ♪」と言われました!英語で聞いているのに、ニコニコしながら黙って左手の商店街の方を指差します。 その時、彼の斜め後ろでオレンジを積んでいた年配の女性が、何語かで彼に怒った後、"There, Over there"と言い、右奥の方を指差しました。彼は相変わらずニコニコと左を指し、母親らしき彼女は彼の頭を小突きながら右を差し・・・。私は2人にお礼を言うと右奥に向かいました。果たして2階建てのコンクリートの建物があり、何十人もが入り口にたむろしているのが見えました。「あれだ!」

驚いたことに、そこにいた30人近い人はほとんどが男性で、9割が華人(中国系)でした。輪の中に入ると、「ここはどこ?」と言わんばかりに周りからは中国語(北京語)しか聞こえてこず、たまに広東語や福建語が混じるくらいで、中国本土のムードが濃厚です。英語と違って、中国語ならそんなに注意していなくてもたわいのない会話がどんどん耳に入るので、彼らが場所を確保するためにここに来ているのはすぐわかりました。

しかし、「初めてだし・・・」と思い、念のためそばにいた若い華人系女性に、「初めて来たんですけど・・・」と英語でおずおず声をかけると、心外そうな顔つきで、「私も初めてで何もわかりません」と、たどたどしいながらもピシャリと言われてしまいました。その顔には、「あんた、なんでこんなとこで英語しゃべってんのよ!」という表情がありありと出ていました。「しまった!」

気を取り直し、今度はいかにも場慣れした感じの「ハンチング帽」「ジャンパー」「長靴」という"完全市場三点セット"の、これから競りにでも参加しそうな中年男性に中国語で話しかけてみました。「初めて来たのか?今日は大変だぜ。」と、彼はかなり呆れ顔。「なにを売るんですか?」と、敬語がない中国語にしては精一杯丁寧に聞いてみると、「野菜だよ、野菜。だから時間が勝負なんだ。しかも、この雨。でもこいつら、先に仲間に準備させて、8時ぐらいになってから俺たちに場所をあてがったりするんだぜ。その間もどんどん鮮度が落ちてくからたまんないよ」と、彼はそばを通りかかった小山のように大柄なポリネシアン系の係員を小さくあごで差しながら言いました。

「8時?」と思わず素っ頓狂な声が出てしまうと、「やれやれ、これだから素人は・・・」と顔を背けられながらも、「お前は何を売るんだ?」と聞かれました。「手作りのアクセサリーです」と言うと、まったく興味なさ気に「ふーん。」 8時となると、これからの待ち時間は2時間半?! 「プロの業者ばっかりで、ぜんぜんフリマじゃないじゃない。軽い気持ちで来るところじゃなかったんだ」と、ややがっかり。クルマで待っている夫と子どものことも気になり始めました。

その時、先ほどの係員がファイルを持って出てきました。小さなテーブルにつくと指先を舌で濡らしてファイルを開き、おもむろに名前を呼び始めました。「やった、場所の振り分けが始まる♪」 テーブルを囲む人の輪が自然と1メートル以上小さくなり、彼ににじり寄りました。誰にとっても場所が確保できるかどうかの重要な局面、名前を聞き漏らすまいと必死なのです。しかし、係員はいかにもうっとうしそうに近寄ってくる人を手で追い払う仕草をしながら、盛んに後ろに下がるよう促しています。しかし、呼ばれるのはどれもこれも中国人名ばかり・・・。(つづく)

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「マヨネーズ」 ホームページをリニューアルしました。と言っても作成ソフトを変えたというこちらの事情によるもので、「見た目はできる限り今まで通りに」という、リニュと言ってもいいものかどうか? ついでに「移住前サイト」を作り、2004年7月24日以前と以降の記録に分け、「重すぎて読み込めない!」という不親切サイトの汚名を少々挽回してみました^^? 「移住後サイト」のアドレスは今まで通りです。これを機に「トラウマ日記」日記「さいらん日和」に改名し、完全に私、みことが担当することになりました。以上、よろしくお願いしまーす。

西蘭みこと