Vol.0278 NZ・生活編 〜オタラで逢いましょう その4〜

ニュージーランドでの初のフリーマーケット(フリマ)参加。朝5時半から待って、「ここでもいい奴はいないか?」と、隅っこもいいところの場所を提示されたのが、かれこれ7時半。冷たい雨が降る早朝の2時間待ち。真っ暗だった外はすっかり明るくなっていました。「これで帰るくらいなら・・・」と、一番に手を挙げた私。小山のように大柄なポリネシアンの係員が「名前は?」と聞いてきました。"Mikoto. M.I.K.O…"とスペルを言っている横で、ずっと一緒に歩いてきたおもちゃ売りのおにいさんが、「何て言ってんだ?」と、小さい声で聞いてきました。

「ここでもいい奴いないか、って言ってるのよ。手挙げちゃいなさいよ」と言うが早いか、私の中国語の囁きを聞きつけた他の人たちが、一斉に手を挙げました。やっぱりみんなは係員の言っていたことを理解していなかったようです。ただし、1人を除いて。係員が私の名前を書き込んでいる後で、背の高い華人系中年男性も手を挙げていたのです。彼は明らかに質問を理解していました。しかし、係員が背後の彼に気付かないうちにみんなが一斉に手を挙げたので、私の次に名前を記録された人はおにいさんでした。

場所取り成功! 私は点呼を続ける一群から離れ、急いで家族が待つクルマに戻りました。さすがに3人とも起きていて、夫は外に出た後で、子どもだけが待っていました。「ごめんね。遅くなって。寝てた?パパは?」「外に見に行ったよ。」 子どもと話しながら数分待ちましたが、帰ってくる気配がないので携帯電話でだいたいの場所を夫に告げ、私は自分の場所に戻りました。なんとなく予感がしたのです。

戻ってみると案の定、誰かが私の場所にテント(正確には四角い幌)を張っている真っ最中でした。「やっぱりね。」 自然と筋書きが読めてしまう中華カルチャーに詳しい自分に苦笑しながら近づいてみると、先ほどの背の高い男性が奥さんらしき人と英語と中国語のチャンポンで話しつつ、せっせと開店準備に勤しんでいるところでした。言葉のアクセントからすると、マレーシア系かシンガポール系華人のようです。

"Hi, You are my neighbour."(ハイ、あなたがお隣ね)とスパイスを効かせて挨拶したつもりでしたが、「ひどい天気だよな。早く用意した方がいいぞ」という、あっけらか〜んとした答え。この辺も読めてしまうので、たいして腹も立ちません。厳密に言うと、彼がテントを設営していたところは私の場所ではありませんでした。係員が指差した、数店が並ぶはずの先頭である私の場所のさらに外側だったのです。立派なテントを張ってしまうと、所詮は路上、どこが最初なのか見分けがつかなくなってしまいます。なんともまぁ、逞しい人たちです。

私は自分の陣地に立ち、夫が来るのを待ちました。すぐにおもちゃ売りのおにいさんがやってきました。「お前、幌持ってんのか?」「ううん。パラソルならあるけど。」「大丈夫か?この雨で。」 彼らは情の厚い人たちでもあるのです。「止まないかな? ところで荷物は?」「友だちがクルマで持ってくる。進入路が混んでんだ。」 雨の中を彼だけ先乗りしてきたということは、彼も場所の確保が心許なかったのでしょう。私と同じように踏ん張っていないと、どうなるかわかりません。そのうち彼の向こう側の人たちが来て準備を始めました。素人臭く、私と彼のクルマだけはなかなか来ません。

「どいうこと? どうしてアタシの場所がないのよぉ?」 突然、中国語の金切り声が聞こえてきました。「アンタ何番目?」 中年女性が準備をしていた若夫婦にくってかかっています。「アンタたちは?」 今度は立っていた私たちにも聞いてきました。「私が1番で、この人が2番よ」と言うと、「一緒じゃないのね? アンタが1番?」 「じゃ、アレはなんなの?」と言わんばかりに、せっせと商品を並べている私の前の"ゼロ番夫婦"を睨んでいます。3番の若夫婦、5番の中年夫婦も集まってきました。 

真っ先に手を挙げたので、みんな私のことを覚えていました。「そうよ、アンタが最初だったわ。」 金切り声が多少落ち着いた声になりました。「ねぇ、幌に入れてくれない。私の売り物ってアクセサリーだけでテーブルも1メートル四方しかないから一緒にやらない?」 私はおにいさんに声をかけました。"ゼロ番夫婦"の場所は最初から数に入ってなかったので、冷静になれば5人分の場所がちゃんとあるのがわかるはずです。でも金切り声の彼女は、すでに5組が来ているの見て動転してしまったようです。
(←枕だけという思い切った商品展開^^;)

「いいぜ。俺たちもそんなにないから。」 おにいさんはニヤッとしました。「これで場所代の30ドル(約2200円)が折半になる。」 2人の腹の中は一緒だったはずです。リストにあるのは5人分の名前。後から代金を回収に来てもつじつまが合います。彼らは飛び切り勘のいい人たちでもあります。この辺の呼吸は知らない同士でもピッタリです。「素人だってこれくらいはしなきゃ」と思いながら、「いいわ。私たち一緒にやるから、この場所どうぞ」と言うと、息巻いていた彼女は「そうでしょう。みんな仲良くしなくちゃね〜」と満面の笑顔。彼らは平和的な人たちでもあるのです。(つづく)

(↑支離滅裂な商品構成もフリマならでは^^;)

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「マヨネーズ」 友人の家に遊びに行くと、イーゼルに立てたお洒落な表紙の料理本が。手にとると、まさに探していたような本。和洋中エスニックが均等に並ぶ様はまさに西蘭家の食卓そのもの。写真もレシピも大いに気に入りました。「絶対買おう!」と思っていたもののネットで調べたらすでに絶版。「アマゾン」ではプレミアが付いて5800円に・・・。その本の名前が「キッチンで逢いましょう」でした。仕方ないので、オタラで^^?
西蘭みこと