Vol.0297 NZ・生活編 〜同じアホなら回さにゃソンソン♪ その3〜

オークランド市の2年に1度の粗大ゴミ回収日を前に、ご近所が積み上げた「ゴミ」と呼ぶにはあまりにも忍びない「不用品」の中から、気に入った品々をいただいてきた西蘭家。この事実を「ゴミ漁り」と捉え、引け目に感じるのであれば、伏せておきたいところです。しかし、私たちは子どもも含め、大いにこれを楽しみ、意義あることだと感じました。今後ももちろん"参加"するつもりですし、「不用品」を「ゴミ」にしないお手本をたっぷりと見せてもらい、ずい分勉強にもなりました。

当のキウイたちの"参加"具合はどうでしょう? 最初に見かけたのは、いかにも勤め帰りといった感じのポリネシアン系夫婦でした。ご主人はネクタイこそしていませんが(ここでは普通です)、白いYシャツにベージュのスラックス姿で、洒落たデザインの木製ワインラックを、奥さんはプラスチックのおもちゃを提げていました。むき出しのまま手に持ち、いかにもその辺で見つけたようでした。2人は他所の家のものをのぞくでもなく、盛んに話しながら通り過ぎていきました。その姿は実に自然でした。

次に気づいたのは若いインド系女性でした。彼女はこれはと思う家の前に白い「シビック」を停めると、運転席から颯爽と降りてきました。かなりの長身。豊かな黒髪。今風なサングラス。見事なS字を描いたエレガントなボディーラインをピッタリとした白いTシャツとジーンズで包み、思わず口笛でも吹きたくなってしまうくらいのカッコ良さ。なにを探していたのかはわかりませんが、「不用品探しだって、こんなにゴージャスにできるんだ♪」と、妙に感動したものです。

よくよく回りを見渡すと、同じように探している人がそこここに。最初に見たポリネシアン夫婦や私のように歩いている人がいないだけで、ほとんどの人はクルマで探していました。そのため、パッと見では気づきませんが、あちこちで異様に徐行しているバンや、荷台にそれらしき「お宝」を積んで駐車している小型トラックがいます。「そうか、みんなもっと本格的にやってたのね!」と、またまた感動♪

すると軽トラックが停まり、蛍光ラインの付いた工事用ベストを着た若い長髪の白人男性が降りてきて、傍らにあったピンクの子ども用自転車をひょいっと荷台に載せました。荷台にはすでに大人用の自転車も載っています。「業者の人で、自転車だけ集めてるのか」と見ていると、私と目が合った彼はニッコリと微笑み、さっと運転席に戻りました。今度は大きなトラックがやってきて、親子と思われる良く似た褐色の男性2人が降りてきました。彼らはトタンやフェンスなど金属だけを回収しているようで、父親らしき人が「品」を確かめると、2人で素早く荷台へ運び上げます。まさにプロの所業でした。

      (この「屋根だったのか壁だったのか?」といった古トタンも、写真を撮った数分後にはきれいさっぱりなくなっていました↑)


ほんの数分の間にこれだけの人を見たのですから、1時間も立っていたらどれだけの"流通"が確認できることでしょう。その間にも、せっせと物を運び出してくる家もあり、普段は子どもの下校時間まで人通りのない界隈が、静かに活気づいていました。見れば見るほど素晴らしい制度です。捨てるにしても拾うにしても、彼らを動かしているのは、「みんなでゴミを減らそう!」という社会的意義よりも、もっと素朴な「もったいない」という気持ちではないかと思います。家に持ち帰る個人も修理して転売する業者も、元になるものは「まだ使える」という意識でしょう。

この際、拾っていく個人が同じものを新品で買える経済的余裕があるかどうか、業者が転売して儲けているかどうかなど、まったく関係ないことです。拾う理由など、捨てる理由同様に問われはしません。「どうしてこんなにいいものを捨てるんだろう?」という疑問と、「こんなものまで持ってってくれた!」という感動は同等です。ご近所を見る限り、そう感じられました。そこには"捨てる優越"も"拾う卑下"もありません。「もったいない」という共通の思いを前に、みんなが一列に並んでいるだけです。

少しでも引き取り手が見つかるよう、拾う人の負担が軽くなるよう、"丁寧にきれいに"「不用品」を並べている家の多さには感服しました。もちろん、そうでない家も見かけましたが、目にした限りでは気を配っている家の方が多かったようです。並んだもの一つ一つに、処分するものへの慈しみ、礼儀や公共心、もっとざっくばらんな親切心、優しさといった、彼らの生き方が反映されおり、律儀な隣人に囲まれていることを嬉しく思いました。そこには捨てる"優越"よりも"謙虚さ"の方が強く感じられました。

「すごい、すごい。みんな、すごい!」 私は見るものすべてに感激し、見つけた「お宝」を家の庭に放り込むと、何事かと怪訝そうな表情の夫を残したまま、今度はカメラを引っつかんで外に飛び出しました。こんなに素晴らしい光景を写真に収めない手はありません。ゴミがぐるぐる回っていく現状、誰に言われたわけでもないのに、ここには世間で声高に叫ばれている「循環型経済」があり、「循環型社会」がしっかりと根付いているのです。その姿を写真に残さずにはいられませんでした。(つづく)

(←市が派遣したらしい金属専門の回収業者。みんながさんざん持って帰ったあとでもたくさんの回収品が。写真を撮る人が珍しかったのか、この後全員で手を振りながら去っていきました)

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「マヨネーズ」  不定期配信になっていて申し訳ありません。移住以来の慌しさで、どうにも時間が作れずにいます。子どもの秋休み突入までは根を詰めようと思っているので、しばらく不定期配信が続くかもしれませんがご了承ください。その間にもステキなお客さんがあったり、嬉しいこと、感激することが日々起きたりで、感動に満ちた毎日です。今月1日は私たちの結婚記念日でもありました。「14年か〜、なげ〜な〜。子育てと仕事と移住に明け暮れる日々だったよ」と夫。同感。14年目は「象牙婚」だそうです。パォォ〜ン!

西蘭みこと