Vol.0309 NZ編 〜ワイカト・スピリット〜

「濃いな〜」 スタジアムに一歩入るや、夫が一言。まったく同感でした。今風な作りの洒落たスタジアム全体が、なんだか濃いのです。オークランドよりもみんなが厚着なのも理由の一つでしょうが、それだけではなさそうです。ポリネシアン系が集まるところでも「濃いな」と感じるものですが、ここはそれほど彼らの姿が多いわけでもありません。

それでも、濃いのです。みんなが身につけている赤黄黒の原色を組み合わせた服、マフラー、ニット帽がやたらに目立つことも、濃さに拍車をかけています。それにも増して、各人から発せられる熱気のようなものがオープンな作りのスタジアムに、厚く垂れ込めている気がしました。彼らの吐く白い息は外気が冷たいからなのでしょうが、なんだか彼らの身体の中が通常より熱くなっているような錯覚に陥るほどでした。併設のバーはまるで火照りを冷ますかのように、白い息を吐きながら冷たいビールをあおる人で溢れていました。   (年齢性別問わず、なりきりサポーターがいっぱい→)

ハミルトンの「ワイカト・スタジアム」。私たちは地元ラグビー・チーム「チーフス」と南島のオタゴを拠点とする「ハイランダーズ」の試合を見に、2時間近くクルマを飛ばしてやってきました。新しいスタジアムはオークランドの「イーデン・パーク」に比べればかなり小ぶりでしたが、ラグビーコートから観客席まで10メートルあるかないかの上、私たちはかぶりつきに位置する子連れ専用席に陣取ったため、運動会の応援にでも来たかのような親近感。臨場感はいやが上にも盛り上がりました。

試合は、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ3ヶ国の強豪プロ12チームのリーグ戦「スーパー12」の中の一試合でした。4強入りできないチーフスにとっては今年最後を飾るホームグラウンドでの試合、4強入りをかけたハイランダーズにとっては絶対に落とせない試合で、いずれのサポーターにとっても見逃せない一戦でした。超満員のスタンドはみんなの期待を熱く代弁していました。
(←世代を超えての熱い応援。後ろのお父さんは盛んにカウベルを鳴らしてました)

「ホントに阪神タイガースだよな〜」と、苦笑まじりに言う夫。再び、まったく同感の私。常々、オークランドの「ブルース」は花形選手を揃えた「NZラグビー界の読売巨人軍」と言ってきましたが、チーフスは赤が入るものの、黒と黄色のチームカラーといい、サポーターのノリといい、毎年下位グループでもピカ一の応援といい、阪神タイガースそっくりです。「洗練?スマート?何ソレ?」といわんばかりのコッテコテな応援を前に、「実はハイランダーズのジョシュ・ブラッキーを見に来たんですけど」などとは小声でも言えなくなり、気がつけばチーフスがトライを決めるたびに、こちらもガッツポーズ(笑)
(←赤ちゃんサポーター。始めはギョッとしたものの、だんだんいとおしくなった着ぐるみ♪↓)

NZでのラグビーはイーデン・パークでしか見たことがなかったので、応援の違いは一目瞭然です。まず鳴り物系の多いこと、多いこと(笑) 有名なカウベルがあちこちでガランガラン鳴っているかと思えば、子どもに配っている空気の入った剣を象ったものをバンバン打ち鳴らす音(大人も)、本物の楽器を持ち込んでガンガンやっているコーナーもあります。しかも、クイーンの「ウィー ウィル ロック ユー」が流れ出すと全員総立ち、露出度の高いチアガールのダンスとともに、スタジアム中で大合唱。「ラグビーでロック?」なんて深く考えてはダメダメ。とにかくこちらも大声で歌って参加、参加ぁ(笑)

イーデン・パークでもラッパを吹いている子どもはいますが、ここまで老若男女の息が合うと一体感が段ちがいです。試合前から観客参加のゲームあり、子どもラグビーの前座試合あり、チアガールがレースクイーンさながらにチーフスの旗を振っていたり、ユニフォームを着込んだ着ぐるみが盛んに愛嬌を振りまいていたり、まあ、盛りだくさん。ブルースの試合でも海賊の着ぐるみが登場しますが、「若手の球団職員が持ち回りでやらされてるんだろうな」と思われるやる気のなさで、訴えるものがありません。チーフスは着ぐるみまで熱かったです。このノリでは対戦相手も、さぞややりにくいでしょう。
(←この旗をガンガン振ってたチアガール。「ブルースのよりいいなぁ♪」と夫。好みの問題ですが^^;)

「さぁ、いよいよ試合♪」と思った矢先、ドッカ――ンという轟音とともに打ち上がる花火! 「えええっ? 試合後じゃなくて今打ち上げちゃうの?」と呆気にとられている間もドッカ――ン、ドッカ――ン、ドッカ――ン、ドッカァァァァァ――ン。花火の煙でぼんやり霞むグラウンドで待ちに待った試合開始! いやぁ、いきなり応援のすごいこと、すごいこと。チーフス・ボールになっただけで、まるでトライを決めたかのような大声援。選手の一挙手一投足に漏れなく怒涛のような歓声がついてきます。     
                          (寒空に咲く大玉→)

そのうち、試合が「ここぞ!」という展開になるや、どこからともなく「ウィ――ンウィンウィンウィンウィ――ンウィンウィンウィン」とクルマのエンジンを吹かしたような音が? 「えっ?なにコレ?」と辺りを見渡すと、グラウンドの外、高さ10メートルはありそうなクレーンの先のゴンドラの中で、チーフスのユニフォームを着込んだ恰幅のいいおじさんが、あろうことにチェーンソーを振り上げているではないですか! ここまで来ると、平伏すしかありません。ひょえ〜、お見それしましたワイカトのみなさま(伏)
     (コレですよ、コレ@@!→)

結果はチーフス31対ハイランダーズ8で、ハイランダーズは4強入りを逃したばかりか 8位転落。蹴落としたチーフスは6位と健闘。翌日の新聞の見出しは「遅すぎたチーフスのピーク」となってましたが、終わり良ければすべ善し。今頃ファンは「来年こそは優勝だぁ」と、地ビール「ワイカト・ドラフト」片手に、気勢を上げていることでしょう。

(←トライが決まるたび、チアガールがコテコテのデザインのチーフス・オリジナル・ボールを観客席に投げ入れてのファンサービス。ブルース見習って!)

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「マヨネーズ」 いやぁ〜、楽しかったです♪ ハミルトンまで自分で運転して行った、記念すべき一試合でした。

西蘭みこと