Vol.0314 NZ編 〜Indefinitely−永久に〜

夫はジュリア・ロバーツの大ファンです。というより、「ノッティングヒルの恋人」に出てくるジュリアさま(うちではこう呼ぶことになっています^^;)の大ファンで、一時は気に入っている場面の英語のセリフが、空で言えるほど観ていました。話はロンドン郊外のノッティング・ヒルの冴えない本屋の店主、ヒュー・グラント扮するウィリアムの店に、ハリウッドの大女優アナがやってくるところから始まります。

2人はいつしか恋に落ちるものの、ラブ・コメディーらしく次々と問題が噴出します。とうとうウィリアムは分不相応な恋をあきらめ、涙ながらに愛を求める世紀の大女優をふってしまいます。それから月日が流れ、自分の過ちに気づいたウィリアムは決死の覚悟でニセ記者に成りすまし、アナの記者会見に潜りこみます。報道陣との質疑応答の中で、2人にしかわからないメッセージを忍ばせ、並み居る記者の前で変わらぬ愛を告白するウィリアム。それに答えるかたちで、他の記者の質問に答えながら返答するアナ。

こここそが夫の最愛のシーンで、DVDでなくビデオだったらとっくに擦り切れていたんじゃないかと思うくらい(笑)、繰り返し繰り返し観ていました。ウィリアムの告白を受け取ったアナは、何も知らない他の記者が気軽に尋ねた、「これからどれぐらいイギリスにいるおつもりで?」という質問に、"Indefinitely−永久(とわ)に"と答えます。一瞬の沈黙があり、次の瞬間には妙な質問をしていた妙な記者、ウィリアムの存在に報道陣がいっせいに気づき・・・と、話は一気にハッピーエンドを迎えます。

「いつかさぁ、ニュージーランドに移住できて、"どれぐらいここにいるの?"って聞かれたら、答えてみたいなぁ"Indefinitely"って・・・」というのが、当時からの夫の夢でした。しかし、「インディフィニットリー」という一言はそんな想いをギュッと詰め込まれたまま、長い間凍結されていました。移住という夢は1年前にかなったものの、私たちのビザは3年間という期間限定のビジネス・ビザで、とても「永久に」などと言えるものではありません。こちらに来てから会う人ごとに、"どれぐらいいるの?"と聞かれるものの、ついぞ"Indefinitely"と答えたことはありませんでした。

それがとうとう、凍結を溶く時が来ました。今年3月に私自身が「技能移民部門」で申請していた永住権申請に対し、先週5月27日になって不意に認可が下り、昨日31日に正式なレターが届きました。これで、「いつまでここに?」と聞かれたら、迷わず"Indefinitely"と答えられるようになりました。奇遇ですが、移住認可が下りたのも昨年5月31日でした。あれから365日、移住を思い立ってから4年4ヶ月を経て、ついに最大の夢がかないました。今まで長い間応援して下さった方々に、この場を借りてご報告するとともに厚くお礼申し上げます。

今は永住という名のもとに、私たちを末永く迎え入れてくれたこの国に対し、感謝の気持ちでいっぱいです。いまだに誰に何をどう感謝したらいいのかわからないまま、通り過ぎる見知らぬキウイに誰彼となく頭を下げたくなってしまいます(笑) 夫も子どもも、もちろん大喜びです。病気持ちの老ネコを二度と飛行機に乗せることなく、日課になった芝の上の散歩を思い切り満喫させてやれることにもなりました。移住認可が「第7天国・第9積雲」でしたから、今はもっと高い所まで来てしまったようです。

申請後すぐにあった面接では、NZという国そのものとの面接のつもりで臨みました。結果に不利になりかねない内容も含め、「いつか誰かに言ってみたかった」本心を洗いざらい明かしてもみました。実際、「もう一度学校に入って資格を取りたい」などという発言は明らかにマイナスだったようですが、「ここまで来てうわべだけ取り繕ってみても始まらない」という本音に従い、なぜその資格が必要で、それがどうこの国への貢献につながるのかまで、壮大かつ私にとっては大真面目な話をしてきました。「ダメだったら起業家ビザで1年後に再挑戦」と腹をくくっていたこともあり、相手がヘレン・クラーク首相でも同じことを言っていたでしょう(笑)

あれから2ヶ月近くが経ち、担当者の態度は悲観的になる一方だったので「認可」を伝えるメールをもらった時は、本当に驚き、感謝と感動で胸がいっぱいでした。これからがいよいよ移住生活の本番です。この美しい鳥の楽園に降りたった先人たちに続いて、私たちもここでの暮らしをしっかりと築き、この島で暮らせることの感謝を日々忘れず、先人の知恵と努力を敬い、後に続く人たちに道を開き、誰のものでもなかった島を大切に分かち合う者として、調和、敬意、信頼、平和、尊厳、不屈、実直、自然、友愛など、この国に相応しく実際に多くの人や物事がそれに沿っていこうとするところを、生涯をかけて生きてみようと思います。

末永くよろしく、ニュージーランド!

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「マヨネーズ」 これが前回の「グッド・カルマ」の顛末でした。とても誠実だったけれど、徹頭徹尾悲観的だった担当者の言葉からはまったく想像できなかった結果だけに、にわかには信じがたく、不可能が可能になった気がしてなりません。そうは言っても、理論的な経緯はどうあれ、私はずっと吉報だけを信じてきました。

先月、NZを代表する鳥「トゥイ」が庭に来て、不思議な七色の声で高らかに鳴いているのを見た時、「吉兆の印だ!」と漠然と感じ、なえそうな気持ちがシャンとする思いでした。あれからさらに1ヶ月以上経ち、その間ずっと「信じるところを生きよ」という心の内なる声を聴いていたように思います。ここから学んだことを固く信じ、これからも勇気をもってこの道を行くことにします。みなさまの夢も、ぜひかないますように。
(「トゥイ」は咽もとの白いポンポンに特徴のある日本のカラスほどある大きな鳥です。前々から独特な声を耳にしてはいたのですが、それが「トゥイ」とは知らず、自分の庭ではっきりと聞き、見たのはこれが初めてでした。しかも3羽一度にお出ましでした→)

西蘭みこと