Vol.0328 生活編 〜ゴーゴー!マリオ〜                       2005年7月20日

「今日のマリオはどうだった?」 冬休みが始まるまで、8歳の善が学校から帰ってくると、ついついこう聞いてしまうのが日課でした。マリオは近所に住む善の友だちで、ニュージーランドに来て最初にできた友だち、イライジャが引っ越してしまってからは一番の仲良しです。マリオは一人っ子。パパはキウイ、ママはブルガリア系です。でも、「パパは仕事で遠くに住んでる」そうで、ママと暮らしています。

「パパ(たまにママ)が仕事で遠くに住んでる」はニュージーランドの場合、十中八九は離婚もしくは別居を意味するようです。しかし、その辺は"お約束"。誰も「どの辺に住んでるの?どういうお仕事?」などと追求したりはしません。近所にはクルマで10分とかからないところにパパが住んでいるのに、「パパは仕事で・・・」という家もあります。

ですから、「マリオのパパってさ、お仕事で遠くに住んでるでしょう? だから今はママとマリオと、ママのボーイフレンドの3人で住んでるの」と聞かされても、「ふ〜ん」てなもんです。善はマリオから聞いた話をそっくりそのまま伝えてくれているらしく、話はそれだけでは済みません。

「でもね、そのボーイフレンド、お仕事しないでずっとお家にいるんだって。だからママが"出てって"って言って、今お家探してるんだよ」という続きが。「マリオのお家の前にずっと赤いクルマが停まってるでしょう? あれってボーイフレンドのなの。」 普段通らない道なので詳しくは知りませんが、子どもなりに良く見ているのには感心させられます。多分、マリオの解説があったのでしょう。

もっと感心してしまうのは、マリオ家の風通しの良さです。ママとボーイフレンドがマリオの前で「出てけ」「出てかない」とケンケンガクガクとやっているのか、ママが包み隠さず息子に詳細を話しているのかはわかりませんが、マリオが善に、善が私に伝えてくれる内容を聞く限り、本当にあっけらかーんとしたものです(笑) そのプロセスに人目をはばかる気配はなく、マリオも善も「そういう事は人に言わない方がいい」という意識の欠片もないまま、実に屈託なく話しているようです。

そんな風通しのいい家。マリオ・ママは中欧のイメージそのままの「肝っ玉かあさん風骨太子育て」をしているようで、マリオもスクスクのびのび育っています。それゆえに、天然児というより最近では野生児化している善と気が合うのかもしれません。マリオ・ママにお会いしたことはありませんが、善の話をもれ聞いているだけで、もう大ファンです♪

「朝、マリオを迎えに行ったの。"玄関じゃなくてキッチンのドアに来て"って言われてたから、キッチンのドアをノックしたらさ、マリオどこから出てきたと思う?」
「玄関?」
「違う。窓から飛び出してきたの!」(爆)

(←野生児化が激しい善。真冬でも靴をカバンにくくりつけて裸足で下校)

「今日もマリオを迎えに行ったの。そしたら"ランチがないからこれからパン屋さんに買いに行く"って言って、ママと一緒にバイクに乗って行っちゃったんだよ。」(クスッ)

「マリオを迎えに行ったら、"制服が乾いてないから先行ってて"って言われて、今日は1人で行ったの。あとでママと一緒にバイクで来たよ。」
「今日はさ、ママが"これから制服洗うから"って言って、マリオ、普通の服で学校来たんだよ。後からママが制服持ってきて学校でお着替えしたの」
「そういう子、けっこういるの?」
「いないよ。マリオだけだよ」(再び・・笑)

「今日マリオ、またモーニング・スナック(朝のお茶うけ)忘れちゃって、スナックタイムにランチ半分食べて、ランチタイムに残りの半分食べてたよ。スナック食べない子もいるのに"絶対食べなきゃダメ"って思ってるみたい。」
「マリオが持って来るのを忘れたの?それとも、ママが用意するのを忘れたの?」
「ママ」(やっぱり・・笑)

「マリオね、風邪引いちゃったの。咳が出るからママが"スカーフしてきなさい"って言って、制服にスカーフしてたの。」
「ふ〜ん。」
「でもね、カッコ悪いから取りたかったの。でもママが見てるからがまんして、ママが見えなくなってから取ったの。そうしたらどうなったと思う?」
「わかんないな〜。」
「ママがね、"マリオー!"って言いながら追いかけてきたんだよ。ちゃーんと隠れて見てたの!」
「それでどうなったの?」
「マリオはお家に連れて行かれて、ママに怒れた。後からママと一緒にスカーフしてバイクで来たよ。学校で取っちゃったけどね。」(「スカーフでバイク」って仮面ライダー^^?)

なんだか楽しそうなマリオと善。「ねぇ。今度、マリオを呼んで一緒に遊んだら?」と、盛んにけしかけているところ。マリオは放課後、日本の「学童」に当たる地域の集会場での活動に参加している日が多く、私の希望はなかなかかないませんが、善より頭一つ分大きな飄々としたマリオが、裏木戸からひょっこり姿を見せる日を心待ちにしています。

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「マヨネーズ」 冬休みに入る直前、とうとうボーイフレンドは出て行ったそうです。「お家が見つかったんだって」という善の解説。実は一度だけ学校に手伝いに行った帰り道、マリオの家から出てきた若い男性が外にゴミを出し、赤いクルマで出ていくのを見たことがありました。冬休みに入るのと同時に遠くからパパが帰って来て、一家は海外旅行へ。「朝6時の飛行機でね、マリオは服着たまま寝て夜中の2時に起きるの」と、さらに続く解説。

西蘭みこと