Vol.0334 NZ・生活編 〜夢へのドライブ−ロード・オーソリティー〜     2005年8月10日

「制限速度50キロのところで55キロ以上出したりウィンカーを出し忘れたら、試験は即中止って言われたよ。」 
試験前の夫のアドバイス。
「中止にならない限りは可能性があるってことだから、諦めないで走り続けること。」
とも言われました。ペーパードライバーに産毛が生えた状態でも、筆記試験と合わせ1万2千円以上払ったのですから、ここはぜひ受かりたいところ。主婦はケチで、慎重で、野心家です。

ニコリともしなければ自分の名前も名乗らない、サングラスも外さないオーソリティーを助手席に乗せ、言われた通り車道に出た私。大通りを一本入っただけですぐに住宅街となり、さっそく「そこを右折」と言われました。ウィンカーを出したものの、角を見逃していきなり通過! 
「あっ、今の角だったんですね?」
と言うと、
「言い訳はそれまで。聞き逃しは1回きりだ。」
と言われ、次の角を右折して誰かの家のドライブウェイ(私道)に入ってUターンするよう新たなミッションが。ところがそのドライブウェイ、思い切り狭くてクルマ1台ギリギリの幅。前後左右の家はみな軽く1.5台分はあるのに(涙) しかし、指示は指示。頭を突っ込みバックしてターン。

すると、
「緊張してるのか?いつもの通り運転しろ。」
と、またまた指示が飛んできました。
「緊張してるんじゃなくて、ただヘタなだけなんです。」
と内心思いながらも、「正直に言わない方がいいのかな?」と判断し、普段はあまりしないアジア人特有のアルカイック・スマイルで曖昧に受け答え。これは西洋人にとり「東洋の神秘」とも言うべきミステリアスなものか、イエスかノーかわからない不気味なものかに映るらしく、後者だったら試験結果にはマイナスでしょう。私はこういう状況では非常に冷静な方で、ヘタなりにも運転自体嫌いではなく(料理と同じ)、それなりにリラックスしていました。

最初に言われた角を曲がり直し、右折左折とやっているうちにT字路にさしかかりました。再び「右折」との指示。私はTの横棒に当たるやや太い方の道におり、まさに縦棒の小道に入ろうとする時、1台の白いクルマが横棒に向かってきました。女性ドライバーは減速していてそのまま交差路で停まり、私が先に右折しました。
「停車だ。」 
「えっ?こんな交差路で?」
と思いながら数メートル先で止まろうとすると、
「聞こえなかったのか?停・ま・る・ん・だ!」
と言われ、誰かの家のパーキングの真ん前で停車。

「今はどっちが優先だ。」
「私です。」
「なんでだ?」
「優先道路からの右折なので。」
「私が優先?優先道路?そんなものはNZにはない!NZではどんな時も右から来るクルマが優先なんだ。"ロードコード"を読まなかったのか?筆記試験を受けたんだろう」
と、オーソリティー。しまった!彼の言うとおり!(オーソリティーですからね〜^^A)

細い道からやや太い道に出る場合、NZではかなり丁寧に「GIVE WAY」(譲)サインが出ていて、道に白い二重線が引いてあります。白いクルマはサインで停まったものと思っていましたが、振り向いて見るとこの小道にはそれがありませんでした。私が右折し始めていたので微妙なところですが、優先順位で言えば確かに白いクルマの方が先でした!
「がぁぁぁ〜ん。これで中止?」
と思っていると、
「本国とは反対だろうけどNZではこうなんだ。わかったか? じゃ、その先、右折。」
ときて、試験続行。ふぅ〜。

「これからこの道で見たハザード(危険物)を全部言うんだ。いいか?全部だぞ!」 
ほんの200メートルほどの通り。クルマが数台停まっているくらいで、対象となるような動くものが見当たりません。走り終わって停車しようとするとやっと対向車と、犬を連れた初老の男性登場。彼は交差点を渡ろうとしていたものの、私たちが試験中か教習中であることに気づいたらしく、犬のリードをグッと引いて「お先にどうぞ」と手で合図をしてくれました。この界隈に住んでいたら、異様に減速して走る二人乗りのクルマをしょっちゅう見かけることでしょう。私も軽く手を挙げ、交差点を越えてから停車しました。

「ハザードは犬を連れた通行人1人、対向車のバン。反対側のずっと向こうから自転車が接近中で、停車していたクルマは右が2台、左が4台・・・」
「あと、車道を歩いていた鳥が2羽」と言うべきかどうか迷っていると、
「よし、発進」
と言われ無事終了。すぐに停車しているゴミ回収車に出くわし、減速して通過しようとするとゴミ箱を回収中の若いアイランダーが姿を現しました。ニッコリしつつ彼が止まったので軽く手を挙げて通過すると、
「キミは歩いてるオトコみんなに手を振りながら運転してるのか?みこと」
と、突然オーソリティーが言い出し、思わず吹き出してしまいました。
「でた〜!」 
この手の初対面仏頂面白人がかますジョークはキツいと決まってるのに、すっかり油断してました。

「どうなんだ、みこと」と、今度はファーストネームの連発です。ゲラゲラ笑いながら
「えぇ、けっこう。みんなイイ感じじゃないですかぁ」
と言うと、オーソリティーは黙ったまま手に持った紙ばさみに何か書き込み始めました。「な〜に書いてんだか?」と思っていると、
「よし、次は高速だ。」                              (高速道路へ→)
と言われました。「よっしゃ、ここらで100キロで飛ばすのもワルくない♪」と思いつつ、入り口方面に向かってハンドルを切りました。(つづく)

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「マヨネーズ」 最近話題になりませんが、善の火の玉ボーイぶりは健在です。冬場は牧童スタイルでリボンを持って軽やかに踊る@@「メイポール・ダンス」がお休みなので、マオリの伝統芸能「カパハカ」クラブに入り、大地を踏み鳴らしては「ハカ」(戦いの前の踊り。「オールブラックス」の試合前のハカが有名)だのマオリの歌だのを習ってます。今週からは週3回朝練のあるクロスカントリー・クラブにも入り、学校周辺を走り回ることに。

西蘭みこと