Vol.0342 NZ編 〜選挙に行こう!−昼飯前〜                  2005年9月7日

日本では総選挙を今週末に控え、「最後の、最後のお願いにあがりました〜」とウグイス嬢が一段と声を振りしぼり、窓から白手袋をにゅ〜っと出した選挙カーが走り回っているころでしょう。(選挙は学生時代の短期厚遇バイトでした・・・笑) ニュージーランドも9月17日が総選挙です。選挙カーこそありませんが(場所によっては党の街宣車を出しているところも)、連日メディアを舞台に、熱い"舌戦"が繰り広げられています。

選挙戦が始まってから、突然流行り始めた言葉があります。"by lunchtime"です。文字通り「ランチタイムまでに」ですが、日本語風に言えば、「朝飯前」ならぬ「昼飯前」というところでしょうか? 朝飯前と同じく、「まっ、かなりカンタンですよ」と言ったニュアンスに聞こえます。これを最初に聞いた時、かなりの人が顔を引きつらせたかと思います。私も思わず眉につばをつけたくなりました(笑)

「非核立法などランチタイムまでに改正しますよ。」
と、ゴルフをしながら米国の上院議員2人に言った党首がいるというのです。国民党のドン・ブラッシュ党首です。この件を2004年5月に初めて公表したのは現在の労働党政府で、発言はその年の1月になされ、録音されていたというのです。ブラッシュ党首も2人の上院議員も当初からこの件に関しては「記憶にない」とし、真実は藪の中ですが、選挙戦が本格化する中で発言が蒸し返され、"by lunchtime"は流行語になりました。

「減税もですが、新政権では○○問題はどうなるのでしょう?」
とキャスターが言えば、
「それも"by lunchtime"に解決するんじゃないですか?」
と、評論家が答えるといったあんばいで、至るところで口にされました。当然ながら事あるごとに、ブラッシュ党首はこの発言の有無を問いただされましたが、すべて「記憶にない」「相手の上院議員も記憶にないと言っている」という返答で通していました。 "記憶にない"という答弁は、政治家の間では万国共通のようで、「絶対に言っていない」と断言しないところがミソです。

NZ非核化の礎は、選挙戦真っ盛りの先月13日に逝去した、労働党のデビッド・ロンギ元首相によって築かれました。彼は1985年に米海軍艦船が入港に当たり核を搭載しているかどうかの通告を拒否したことをきっかけに、原子力船や核を搭載した軍用船の寄港を禁ずる非核法案を提出し、法案は87年に可決されました。その後、NZは現在に至るまで、何かとアメリカから目のかたきにされ、政治上のみならず通商上も多大な圧力をかけられています。一方のブラッシュ党首は、世界銀行勤務時にワシントンで5年間を過ごし、アメリカと太いパイプがある親米派であることを外交の決め手にしています。
  
(涙あり笑いあり歌ありのカジュアルで温かい、故人そのままのロンギ首相追悼式。大人気のサモア系デュオ、「アディーズ」↑)

「非核か?通商か?」 
本来、これらは比較したり、等価交換したりできるものではないはずですが、政治の世界では可能なようです。「非核の看板を取り下げれば有利な自由通商が約束され、対米輸出が増え、その分経済が潤い、国も国民のポケットも膨らみ・・・」というシナリオが描かれます。その代わり、非核の看板を掲げたままであれば、「自由通商など遠い話で、対米輸出が増えることもなく、経済も恩恵を受けず、国も国民のポケットも膨らむことはなく・・・」という筋書きになります。
「どちらがいいか?」

この話は、私にはこんな風に聞こえます。

あるところに、健康と長寿のために身を律し、不摂生をせずに身体を鍛えストイックに暮らしている人がいました。そこに裕福そうな商人が現れ、 「禁欲的な暮らしをやめたら、とっておきのタバコをうんと安く売ってやろう。なんだったらあげてもいい」 と言うのです。タバコは一度覚えてしまうとなかなか止められないものです。商人ですから、最初は損をしても後から儲けは取り戻します。ですから、甘い話を持ちかけることは痛くも痒くもありません。
さて、「どちらがいいか?」

自分の健康と長寿のために1人でこつこつやっていたことに、他者が入り込み、それにカネが絡み・・・と、内政がいつの間にか外交に置き換えられ、最後はカネという経済――いつも言っている「化け物」が顔を出してくるように思えてなりません。ディベート番組を見ながら、「なぜすべてのことにカネに絡めて損得に換算するの? カネに換算できない国益というものがあるでしょう?」と思った瞬間、ヘレン・クラーク首相が、「私の外交政策はNZの国益を最大限に優先すること」と言い切ったのにはさすがに驚きました。あまりに絶妙なタイミングでした。

しかし、残念ながら白い雲がたなびくこの美しい島では、2003年10月より遺伝子組み換え作物の作付けが認められてしまいました。彼女率いる現政権の決定です。酪農・農業国として政府は組み替え解禁をカネに換算したのです。移住前であっても、あの時の砂を噛むような想いは今でも鮮明に覚えています。ここで再び非核立法の改正をカネに換算し、「化け物」に売り渡してしまうことには反対です。この島が未来永劫、慎ましく美しく、子孫を育み、すべての生き物が生を謳歌する場所でありますように。(不定期でつづく)
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「マヨネーズ」 ラグビーの試合が全部終わって、今週からオフシーズンに入った夫(プロはもちろんまだやってます)。さっそくジム通い再開。「地球に優しく、自分に厳しくトレーニング♪」と温の自転車で行ったものの、かなり辛かったようで、今は「トレード・ミー」(こちらで一番人気のネットオークション)でスクーターの出ものをチェック中^^?(おいおい)

「リッター40キロぉ?このガソリン高騰の折、これからはスクーターの時代だよ!」 とも。マリオ・ママ(なーんと28歳でした!パタッ)はとっくにやってますよん。

西蘭みこと