Vol.0376  生活編 〜働くママを応援します〜                2006年1月28日

夏休みが始まった直後の12月下旬、私はふたりのキウイ・ママの友人に、それぞれ同じことを申し出ていました。
「仕事が忙しかったら、いつでも息子さんたちをよこして。うちはだいたい家にいるし、子どもも喜ぶし、大歓迎よ。私もニュージーランドに来るまでずっと働いていたから、夏休みのような長期休暇が働くママにとってどんなに大変かよくわかってるつもり。用がない時でもいいわ。ちょっとしんどくなって、ひとりになりたくなった時とか、遠慮しないで電話ちょうだい。」

彼女たち同士は知り合いではありませんが、どちらもプロフェッショナルとしてバリバリ働く身。共通しているのは、移住してきてから知り合い1年ほどお付き合いがあること。なんとなく馬が合うこと。そして、2人ともシングル・ママであること。ひとりは離婚していますが、もうひとりがなぜシングルなのかは知りません。
「いくら1年のお付き合いとはいえ、普段から頻繁に会っているわけでもない外国人に、いきなりこんなこと言われても戸惑うかな〜」
と思いつつも、彼女たちならこちらの本意をわかってくれるだろうと、思い切って声をかけてみました。

離婚している方の友人は時間に融通が効く仕事な上、別れたご主人やすぐ近くに住むご両親から全面的な支援が受けられるため、私の出番はなさそうでした。それでもとても喜んでくれ、
「ありがとう。お互いさまよ。うちにも是非どうぞ。みんなまとめてプールに放りこんどくだけだけどね!」
と言い、弾けたように笑っていました。想いは通じたようです。

もうひとりの友人はたまたまこの夏休みに引っ越しをしたり、オークランドから遠い実家に帰っていたりで、申し出てから1ヶ月近く、会う機会もないままでした。「引越しは無事終わったのかな?」と思っている頃、急に、
「子どもを預かって!マフィン付きで送り込むから。」
というSOSの電話。
「そうこなくっちゃ!」
私は二つ返事で引き受けました。キウイの彼女にとって付き合いの長い気心知れた友人はいくらでもいるでしょうに、わざわざ私たちに声をかけてくれたことを、本当に嬉しく思いました。

子どもたちももちろん大喜び。
「明日だよね。」
と久しぶりの再会を楽しみにしながらベッドに入りました。私は野菜を煮込み、ジューサーで挽いてポタージュスープを作っておきました。西洋人にはよくあることなのですが、彼女のおぼっちゃま2人(少女マンガを地でいく金髪サラリの王子サマ風兄弟)は普段の食が保守的なためか、かなり食域が狭いのです。うちに来て何も口に合うものがなくても、パンとスープがあればなんとかなります。ポタージュだけは失敗がないのを、経験上知っていました。

彼らは約束通り、朝8時に登場。彼女はうちにクルマを置いて、電車でシティーに向かいました。息子たちは日本語の「デュエルマスターズ」カードを出してきて、彼らにルールを教えつつ、一緒にバトルを始めました。すぐにリビングいっぱいに明るい笑い声が響き出しました。一段落すると、今度は竹中直人が出ている映画「ウォーター・ボーイズ」のDVDへ。この映画は相手が何人(なにじん)であっても絶対にハズレがなく、みんな抱腹絶倒。案の定、お兄さん王子がハマって、もう大ウケ!

息子たちはさんざん楽しみつつも、一所懸命もてなしている様子。というのもお互い学校が違い、家も近所ではないため、普段から一緒に遊んでいるわけではなく、子どもなりにたっぷりある時間をどう過ごすか考えていたようです。少なくとも、長男・温にはそんな気配りが感じられました。日本語のカードでゲームを教える彼の姿を見て、
「休みの時にママがいないということが、どういうことかを覚えているのかな〜」
と思うと胸が痛みました。何年も続いた「ママの言い訳」が完全に過去になった今ですら・・・。

子どもをもってからも働いていた10年、私は数え切れないほど多くの人に支えられてきました。住み込みのお手伝いさんがいたとは言え、夏休みともなればたくさんのママが、
「映画に連れて行ってあげる」
「一緒にサッカーキャンプに入れない?」
「プールで遊ばせとくわ」
などと申し出てくれ、私は感謝の気持ちを返す暇(いとま)もないまま、次々にご好意に甘えてきました。遠慮している余裕もないほど、精神的に切羽詰まっていたのです。

情けは人のためならず―――。
私の申し出は友人のためのようでありながら、実は自分のためなのです。かつて果たせなかったことを今になってやってみては、当時惜しみなく救いの手を差し伸べてくれたたくさんのママたちへの感謝を、かたちにしているのです。ささやかな恩返しをする機会を得られただけでも、幸せなことでした。お互い海外で暮らし、今や消息さえ知らないたくさんのママたち、その節は本当にお世話になりました―――。

友人が差し入れてくれた手作りマフィンは、テーブルに置いたとたん瞬間蒸発(笑) 私が用意したランチは、王子サマ2人ともスープはOKだったものの、カツサンドは一切れが精一杯。何度もパンをめくっては、中身を確認しながら食べている姿が可愛いかったです。息子たちは彼らの分まで平らげ、それぞれ3切れをぺロリ。この食いつきの良さはまさに平民! 仕事から戻った友人からは、
「今度は2人でディナー・デートに行きなさいよ!ボーイズは任せて!」
と言われ、得した気分。これからも働くママを応援します!


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「マヨネーズ」 中華圏にどっぷりだった西蘭家の新年がいよいよ明日、明けます。大掃除は新暦の時よりお粗末な状態で、うちの新年、大丈夫でしょうか´。`A 夕刻には今年を惜しむように一家で1時間半ほど美しい近所を歩いてきました。

新年快楽。万事如意。

(うろこ雲が広がって、強い日差しの中にもオークランドには秋の気配が→)


西蘭みこと