「西蘭花通信」Vol.0420  NZ・経済編 〜キウイ資本主義〜          2006年10月28日

ニュージーランドで暮らしていると、
「本当にこの国は資本主義国なんだろうか?」
と、思ってしまうことがあります。何も手厚い社会保障をして社会主義的といっている訳ではありません。資本主義下ではしのぎを削りあうのが当然の、民間企業に対してそう感じるのです。

身近な例を挙げると、私たちは今年7月に今の家に引っ越して以来、ずっとウォークイン・クローゼットを取り付けようと思っていました。すでに引越し前から業者を見つけ、ショールームを訪ね、担当者とも話をしていました。感じもよく、値段も妥当でそこに頼むつもりでいました。担当者からは、
「キッチンも直さないか?」
と勧められましたが、
「いつかは直したいけれど、まずはクローゼットだけお願いします。」
と答えていました。
(「不動産の価値を高めるには水周りを直せ!」の鉄則どおり、キウイはキッチンを直すのが大〜好き!これは中古市場に出てきたお古のシステムキッチン→)

引越前後にも何度も電話をくれていたので、荷物が片付き床が見えてくるや、さっそく電話を入れ正式な見積もりを依頼しました。
「キッチンもですよね?」
と念を押されたので、
「いいえ、前にも言ったように今回はクローゼットだけお願いします。」
と言うと、相手の声色が変わり、
「キッチンも一緒じゃなければ、前に言った値段ではできない。」
と言い出したのです。こちらは寝耳に水の話にただただビックリ!

それまでの良好な関係はあっさり崩れたものの、急いでいた私たちは割り増し料金に応じる用意があることを伝えました。それでも見積もりに来るのか来ないのか、約束の時間を何時にするのかで何度もこちらから連絡を入れなければならないほど、相手は及び腰でした。けっきょく、担当者は約束の時間を1時間過ぎても姿を見せず、携帯電話もつながらず、私たちはオフィスに連絡をし、見積もりの約束を取り消すよう伝言を頼みました。

これは驚きの経験でした。往々にして百万円台にもなるキッチの改装が実入りのいい仕事であろうことは想像に難くありませんが、シンプルな造り付けの家具といえども数万円から十数万円にはなります。それをみすみすふいにするとは、まったく予想外でした。彼らの立派なパンフレットには、キッチン以外にも、バスルームのシンクやキャビネット、リビングルームや寝室の注文家具もちゃんと掲載されていたにもかかわらず、です。
(中古のドア屋。店舗用らしいガラスの押し戸から玄関・棚まで、ありとあらゆるサイズのドアが無造作に立てかけられています。アンティークなステンドグラスのはまったドアを探しに行ったのですが、お目当ては見つからず→)

資本主義の常識であれば、企業というものは技術的にも価格的にも問題がなければ、客からの受注を断りはしないでしょう。それは利益を生むからです。受注なくして利益はありません。それでも断るとしたら、
1) 仕事が小さすぎるか複雑すぎるかして割に合わない、
2)受注が許容量を超えている、
などが考えられます。

彼らのパンフレットを見る限り、私たちの依頼が特別小さいようは見えません。クローゼットですから造りも簡単で技術的な問題も考えられず、1)の可能性はなさそうです。例えそうであっても、「キッチンと別なら何%上乗せすればやってもいい」とカウンターオファーが出てきてもよさそうです。ビジネスですからどこかに必ず損益分岐点があるはずです。2)の場合でも、「今はできないが2ヶ月待ちなら」と、条件さえ付ければクリアできそうです。しかし、そんな話もないまま担当者の方から連絡を絶ってきたのです。

「ふーん。」
香港という、アメリカとはまた別の形で資本主義が行きつくところまで行ってしまった街から来た身としては、みすみす商機を捨て、今後の取引につながるような好印象を残すことも、連絡を保とうと努力することにもまったく興味を示さない姿勢には驚かざるをえませんでした。どんなビジネスでも一度失った信用を取り戻すのはマイナスからの出発となり、ゼロから信頼関係を築くより遥かに難しいはずですが、彼らがそう思っている風はまったくなく、断りの伝言を残したオフィスも淡々としたものでした。

その業者を当てにしていただけに、話はしばし頓挫してしまいました。今月に入り、夫が「造り付け家具、家具修理専門」という業者を見つけてきたので、さっそく訪ねてみました。建物の後ろに木工所を併設した小さな事務所。企業として手広くやっていた前回のところよりかなり小規模でしたが、逆に、
「ここなら断られないだろう。」
と思いました。

ドアを開けると、いかにもオーナー社長という感じの白人男性がひとりで座っていました。
「ウォークイン・クローゼットを造りたいんですけど。」
と口を開くと、彼はすぐに首を振り、
「そういうのはやってないんだ。」
と一言。
「家具専門業者ではないんですか?」
と聞き返したいところをグッと飲み込み、
「キッチン専門なんですか?」
と聞いてみると、
「主にね。」
という答え。

この規模ならキッチンの改装を年に数ヶ所も受注すれば、手いっぱいでしょう。名前も連絡先も聞かれず、私たちは見込み客とすらみなされませんでした。 事務所を出てクルマに乗り込む前にもう一度看板を見上げると、「注文家具・家具修理、造り付け家具、キッチン、バスルーム」と書いてあります。
「ふーん。」
また一つ、今までの認識を改めなくてはいけないことを感じながら、クルマに乗り込みました。(つづく)

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「マヨネーズ」

またまた間が開いてしまってすいません´。`A 先週末は子どもの学校が4連休(カレンダー上は3連休)となったため、久しぶりに北へ南へと、日帰りながら遠出してきました。(北の話はコチラ、南の話はコチラからどうぞ)

こんなことができるのも、ラグビーシーズンがオールブラックスの海外遠征を残す以外、すべて終了したためです。おまけにガソリン代も安くなり気候もバッチリということで、しばらくはお出かけモード^ー^?

西蘭みこと