「西蘭花通信」Vol.0425  生活編 〜心臓のように働き血液のように流れる〜  2007年1月5日

新年明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年の11月11日をもってピタリと止まってしまった、この「西蘭花通信」。待っていて下さった方、何度もホームページを確認して下さった方、メールで気遣って下さった方、本当にどうもありがとうございました。西蘭家の移住生活は、これからもずっと続いていくのでその記録を留めておきたいと思う気持ちに変わりはなく、2007年は少しでも時間を見つけて定期更新を心がけたいと思います。2006年の中断には心からお詫び申し上げます。

メルマガが更新できない間、移住記録を全面的に止めないよう、日記「さいらん日和」 だけは小まめに更新するようにしていました。ですので、日記をご覧になっていた方はお気づきかとも思いますが、昨年9月ぐらいから私が個人的に引き受けている翻訳やレポート作成の仕事が急に立て込み、忙しくなってしまいました。特に11月以降年末までは一段と拍車がかかり、最終的に12月31日夜11時30分に仕事納めとなりました。

仕事をしつつずっと考えていたことは、
「どうしてこんなに仕事が増えたんだろう?」
ということでした。普段からここでも言っているように、
「世の中に偶然というものはない。」
と信じている人間なので、何が起きても常にその因果関係を考えてしまいます。

真っ先に思ったのは、
「マイホームを買い、貯金も底をついてきて"真剣に働け"という思し召しだろうか?」
と、いうことでした。 最もらしい理由ですが、夫も仕事をしており、家賃負担がなくなり、生活をしていくという意味では何とかなっていたので、どうも一番の根拠とは思えませんでした。

次に、
「仕事を通じて社会とのつながりを回復せよ、ということ?」
とも思ってみました。サラリーママを辞して感じたことは人付き合い、情報の出入りなど、身の回りのすべてが驚くほど小さくなったということです。求めないところには、情報も縁ももたらされないということも実感しました。しかし、これも根拠としては決め手に欠ける気がしました。

そのうち、私にとってまったく予期していなかった英訳という仕事が入り始めました。
「どうして私の英語力で英訳?」
と驚き、
「仕事になるんだろうか?」
と半信半疑、翻訳料が振り込まれても、
「これでいいんだろうか?」
と訝っていました。

しかし、"The market was in a lull."(相場は一服)などという普段の会話にはまず出てこないような表現を書きながら、10年以上、来る日も来る日も山のように届けられる英語の経済レポートを読み続けていたことが(私がアジア株のディーリングルームにいた頃はほとんどのレポートがまだハードコピーでした)、「役に立っているのかもしれない」と思えるようになりました。

首を傾げながらも英訳に取り組んでいるうちに、これが将来へと続いていく太い道のように思えてきました。「収入を得る」「社会とつながる」ということにはそれほどピンと来なかったのに、思いがけない「英語で書く」ということに、大きな意義を見出したのです。

「いつか学業に戻りたい」という夢は捨てていないものの、実際に戻れば英語での読み書きは必須です。そのための準備はどこかで絶対に始めておくべきでした。英語で自由に書くことができれば、これもまた「いつかの夢」として神棚の高いところで埃をかぶっている、メルマガのバイリンガル化という希望も現実味を帯びてきます。

「そうか、今の私には"英語で書く"ことが必要なのね!」
理由はわからなくても、そう信じてみることにしました。私は元々、物事に鷹揚で、賢く取捨選択をせず(笑)、許容範囲内で受け入れる受身形ですが、ニュージーランドに来てからはさまざまな人智を超えた経験を通じ(詳しくは連載「21世紀のその日暮らし」をどうぞ)、 「身の回りに起きることをできる限り受け入れる」 という生き方を真剣に追求するようになりました。その方が物事がより上手く行き、結果的に望む方向に進めるということも、何度も体験してきました。

今では「割に合わない」「意味がない」「辛い」、はたまた「みっともない」「面倒くさい」と、せっかく与えられた機会を(仕事でも人との出会いでも)自分の判断で反故にしてしまわないよう、心にやましさを感じない限りどんなことでもできる限り受け入れ、自分の判断を少しでも先延ばしにするようになりました。「生きている」というよりも「生かされている」、人生を「切り開く」よりも「導かれている」ということを、宗教的な教えとしてではなく、自分で会得したところとして信じられるようになりました。

「心臓のように働き、血液のように流れよう。」
仕事納めが年末ギリギリになってしまったため、家族がキャンプで不在だったのをいいことに元旦から大掃除をしつつ、ふと思いました。心臓も血液も私たちが眠っている間も休むことなく働き、命を支えてくれているかけがえのないものです。地味で病気にでもならない限り感謝もされない存在でしょうが、ふとそんなことが頭を過ぎりました。

「与えられた仕事や運命をまっとうしながら、一生懸命働き、隅々にまで流れていこう。」
吸い込まれるような南半球の青空を仰いで洗濯物を干しつつ、そこから降ってきたかのように2007年の抱負が決まりました。


(元旦の空。その下のたわわになっている実は庭のパッションフルーツです→)

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「マヨネーズ」

あまりにも中断してしまったので、読み切りからスタートです。連載も必ず復活させますのでもう少々お時間を。

翻訳という仕事はキウイには絶対言えない"かなり恥ずかしい職業"です。うっかり言おうものなら、
「その英語で?」
と言葉にはしないまでも99%固まってしまうでしょうから。それでも日訳はまだいい方で、
「英訳してるの♪」
なんて言おうものなら、詐欺師にでも会ったかのように3歩くらい引かれてしまいそうです。なので親しいキウイにも、何を生業としているか、絶対口を割りませんよ〜^、^;

西蘭みこと