「西蘭花通信」Vol.0432  生活編  〜20台の机〜              2007年2月6日

「与えられると信じるのであれば、できる限り真実を生きること。」 あとは、必要以上に求めず、分かち合い、運命を信じてその時々で必要なものだけを手に入れていく――。こうしていければ、21世紀を生き抜くその日暮らしに近づけるかもしれません。(メルマガ「西蘭花通信」〜21世紀のその日暮らしZ〜より)
と、常日頃から堂々と言い切っている私ですが、いくら自分のメルマガやHPとはいえ、ここまで言い切るにはそれなりの時間を要しました。

しかし、「この世に偶然というものはない」と視点をずらすと、身の回りで起きるさまざまなことが、
「何かを学ぶ機会を与えられているのではないか?」
と思えるようになってきました。
「こんなの偶然。」
と、突き放してしまうと、
「せっかくの学びの機会を逃してしまう。」
と、今では真剣に思っています。そう信じる以上は、自分にとって都合の良いことも悪いことも、等しく引き受けることになりますが・・・。

さて、久々にメルマガにしてまで記録しておこうと思うようなことがありました。小さなことですが、とても印象的なできごとでした。事の始まりは、「温(12歳)に勉強机を買おう」と、夏休みの初めのクリスマス直前に思ったことでした。彼は日本で言う中学1年生ですが、机というものを持っておらず、弟の善(9歳)同様、食卓で宿題をしていました。

この年になっても机がないのは、移住前の「家具を増やしたくない」、移住後の「キッチンにいる私が相手をしやすい」という親の事情を優先させてのことです。本人も特にほしがりませんでした。しかし、この2月からは中高一貫校、ニュージーランドでは高校扱いの高等学校へ進学するので、
「いくらなんでも机くらいなきゃ。」
と、いうことになりました。

前々からアンティーク・ショップとは名ばかりの古道具屋やチャリティー・ショップをのぞいては、中古で構わないのでしっかりとしたライティング・デスクを探していました。しかし、移住以来2年半、一度も理想に近いものを見かけたことはありませんでした。新品は、
「これが勉強机?」
と首を傾げたくなるような、カラーボックスを机にしたようなペラペラなものが主流で、量販店ではこればかり。値段は4〜5千円ですが、パソコンや本棚を置いたらしなりそうな薄さです。家具屋はベッド、ダイニングセット、ソファーばかり売っており、
「この国の親はどこで勉強机を買うんだろう?」
と訝ってしまうほどでした。

「みんなコンピューター・デスクを使ってるよ。」
友人宅をさんざん見てきた息子たちは言います。しかし、パソコンを置いたらまともにノートを開くスペースもない机には抵抗がありました。古い人間なのかもしれませんが、「勉学は語学でも数学でも、目で読み、手で書くことが基本」と考え、常々「計算でもスペルでもとにかく手を使いなさい」と、子どもたちに口酸っぱく言っている私には、その基本を遠ざけるようなコンピューター・デスクを買い与えることは、どうしても承服しかねる自己矛盾でした。

日本人のある友人は同じような事情から、日本的な勉強机を求めてオークランド中を探し回り、とうとう机専門店で素晴らしい品を見つけてきました。その机は私が目にしてきたものとはまったく異なり、新品としては最高の品質でした。お値段はかなり高額でしたが、物としては理想でした。ただ、すでに身長170pの温にはいささか小ぶりなのが気になりました。しかし、夏休みも残り10日ほどになり、
「大きさは気になるけど紹介してもらった店を訪ねようか?」
と、消極的に考え始めていました。

1月の終わり、昨年の11月から始めたチャリティー・ショップでのボランティアに出ていると、電話が鳴りました。同じくボランティアの主任が出て話し込んでいます。私は寄付の品をまとめては、倉庫に運び入れているところでした。
「机が20台来るの。どうしよう収納場所がないわ。」
電話を切った主任が倉庫に来て言いました。私たちの周りは善意の品で溢れかえり、床も見えないほどでした。

「机?」
私の頭の中では、キンコンカンコンキンコンカンコンと鐘が鳴り響いていました。
「来た!これだ。やっぱり与えられたんだ!」
品も見ないうちにそう確信し、私は息子たち用に2台を予約しました。

20台の机とは、大手不動産屋が支店の引越しに伴い寄付しようとしていたものでした。1週間のたった半日しか手伝っていない私の目の前で電話が鳴り、この事実を知らされたのです。しかも、「夏休み中に」と思っていたこの時期に。店では20台の机など、程度が良いものであればケーキや雑誌のように簡単に売れていきます。このタイミングで知らされなければ、私は寄付されたことすら知らずにいたことでしょう。これが偶然でしょうか?

届いた机はオフィス家具にありがちなスチールや新素材ではなく、シンプルでしっかりとした木製でした。個人の家にあっても違和感のないものです。大きさも造りも申し分なく、汚れやキズもほとんどない程度のいいものでした。まさに思い描いていた机。しかも、それが20台も届いたとあれば、いくら疑ぐり深くしていても、もう信じるしかありません。必要なものは与えられるのだと。

値段も1台4千円足らずと、収納場所に苦慮していたとはいえ破格で、私たちが確実に手にできるかのように設定されていました。けっきょく、仕事用も含め4台を買い、"大量購入"で店にも感謝されました。善き事は全方位に上手くいくものです。さて、与えられた後は分かち合うこと、です。(つづく)

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「マヨネーズ」

今日は44歳最後の日。
「何か書こう!」
と思ってはいたものの、誕生日とは全然関係のない、しかも数々の連載を引きずったままの続きもの。
45歳も凝りなそう>_<?

西蘭みこと