「西蘭花通信」Vol.0440  NZ・経済編  〜中華コスモス U〜        2007年3月21日

移住3年目にして初めて訪れた、誰もが勧める「ランタン・フェスティバル」。会場に着く前の沿道から中華ムードが濃厚で、なかなか期待させてくれます。中華圏暮らし20年の身としては、誰かの家を勝手口から訪ねるような気分でニヤニヤしながら足を踏み入れました。しかし、そこはニヤニヤを通り越し、爆笑したいくらいのド中華圏でした!

いきなり目に飛び込んできたのは白地に黒字のHSBCの文字と、赤く輝くヘキサゴン(六角形)!「世界の地銀」として今や米シティバンクとともに真のユニバーサルバンクとなった、かつての英植民地銀行エッチエスビーシーじゃ、あ〜りませんか!日本人には、
「ナニそれ?ホントに銀行?」
というくらい馴染みのない名前ですが(日本ではリテール業務をしていません)、世界の中華圏ではこの銀行がなくては夜も日も明けぬほど(?!)、絶大な影響力を持っています。
       (まるで香港。ランタン・フェスティバルにて→)

逆に「華人がいるところにHSBCあり」で、華人にとっての地銀感覚を維持するため、HSBCは圧倒的な資金力と植民地で培った(?)禿げタカ並みの嗅覚で、アメリカ、ヨーロッパ、南米、アジアと、世界中で地場金融機関の買収を繰り返しては、華人の皆さまの「いつもおそばに♪」を実現しています。彼らが宇宙に行き始めたら、真っ先に「火星支店」だの「土星支店」を出す銀行は、間違いなくHSBCです!

なぜイギリス人の彼らが(より厳密に言えばスコットランド系ですが)ここまで華人にこだわるのでしょう?植民地時代の栄光なんて話はまったく関係ありません。簡単です、儲かるからです。ここNZでも同様でしょう。HSBCにしてみれば、銀行といえばオーストラリア系か国営のキウイ銀行しか知らないキウイたち100人と取引するよりも、打てばお互い響き渡る中華系10人と取引した方が、冗談ではなく経営効率がいいのかもしれません。

華人の間では今さら知らぬ者もいない存在ですから、宣伝費もいらない、支店数もさしていらないの安上がり。彼らが好む多通貨取引など朝飯前。オーストラリア・ドルだろうが米ドルだろうがユーロだろうが、NZドル並みにドンと来い、です。為替、投信、株、保険、クレジットカードとそれこそ金融デパート。もちろん、オーストラリア系銀行でもこれらのサービスを提供していますが、商品構成のレンジと洗練度は月とスッポン。担当者の商品知識や裁量も、人によっては中学生と大学生くらいの違いがありそうです。

(香港ではこんな年齢から刷り込み開始?! HSBCは所属していたラグビークラブの一大スポンサーでタイへの海外遠征の時も、お揃いのユニフォームの上下、キャップ、スポーツバックにロゴマークが。当時6歳の善の胸にもヘキサゴン→)

こんなことを言うとオーストラリア系銀行やキウイ銀行に怒られそうですが、私たちは家を購入する前、
「創業1年未満のミジンコ在宅業の私たちに果たして住宅ローンがつくか?」
という、真面目な銀行比較をしてみたことがあったのです。

まず国営キウイ銀行。預金口座もあり、移住資金の一部を預け入れていたにもかかわらず、けんもほろろで相手にもされませんでした。「審査はすべてウェリントンで」という"お役所仕事"じゃ無理もないのですが。入金・出金の数字さえ間違わないでくれれば(つまり間違えます)、「それで御の字」の銀行なので、元々多くは望んでおらず、すぐに撤収。

お次はオーストラリア系の凸凹銀行。メルマガ「銀行チャチャチャ」で移住早々から堂々連載を張ったあの銀行ですが、台湾系の担当者が異動になってからのパケハ(白人キウイ)系担当者たちの話たるや、
「ホッ、ホントにアナタが融資担当?」
と借りたいこちらが不安になるほど。

単純な例ですが、「ン万ドルの預金を積むのでン万ドルを融資してほしい」というような話を持ちかけたとすると、
「なんで持ってるのに借りるのぉ?」
みたいな話に ̄▽ ̄; ズルっ〜☆

そっ、そりゃそうなんだけど、資金運用ってそういうものでは´▽`ゞ? 自己資金を手元に残したい時もあるわけで。それに貸出金利の方が預金金利より確実に高いのだから、銀行にしてみればリスクがほぼゼロ(同額の預金があるため)の融資をしない手はないのでは?しかも、担保価値の高い住宅ローンとなれば、話に乗って来ない方がハテナ?ハテナ?

でも、これは南半球の常識ではないようで、彼らが渋々出してきたのは、
「預金はどうでもいいから@@、(バカ高い)変動金利なら貸してやってもいい。」
という条件。
「その貸出原資はどーするのよー?NZは慢性的な資金不足なんじゃないの?預金を取ればそれが原資になるじゃない?!」
と、逆にこっちが心配〜。

で、ドアを叩いたHSBC。赤を効かせたモダンなインテリアが海外拠点との統一感を醸し出し、個室に通された時には一緒に来ていた子どもたちまで、
「ママ、香港みたいだね。」
と感想をもらしたほど。中華圏から来た身にはたまらないアット・ホームさで、ホッとさせられます。

他行でしてきたように、こちらの素性、借入希望額、始めたばかりの自営業という信用不足を補うための交換条件をあれこれ提示すると、
"It sounds good."(問題なさそうですね)
とあっさり。審査部次第ながら、特に問題ないでしょうと、即答されました。

実際、審査後に提示された金利はオーストラリア系4大銀行が「アンビータブル」(太刀打ちできない)などと巨額の広告費をかけて宣伝しているものと大差ない固定金利でした。「変動金利なら」などと言ったが最後、中華圏のほとんどの客が2度と戻って来ないことを、彼らは熟知しています。私たちも融資の件で凸凹銀行を訪ねることは2度とありませんでした。

ことお金のこととなったら、打てば響き渡る共通の価値観は重要です。それはまた、ランタン・フェスティバルの毎年の成功の礎でもあるはずです。(つづく)

=================================================================================

「マヨネーズ」
HSBCがどれだけ華人に傾注しているかは支店網を見ればわかります。 ビジネスの中心で観光客や留学生も多いシティーに1店、華人が多く住む住宅地タカプナ、ボタニー、ハウィックにそれぞれ1店と少数精鋭+効率重視のクールさ。シビれます♪

西蘭みこと