「西蘭花通信」Vol.0441  NZ・経済編  〜中華コスモス V〜        2007年3月24日

「ランタン・フェスティバル」の会場に入るや、中華圏の金融の大動脈を担う旧英国植民地銀行、今や真のユニバーサルバンクに躍進したHSBCの巨大ブースが出現し、アドレナリンが一気に上がる思いでした。
「そうそう、何事もカネから。中華圏はこうこなくっちゃ!」
ニヤニヤが止まらない私。最大スポンサーとして彼らは出入り口付近に大きな白いテントを構え、その前で赤い風船の大盤振る舞い。子どもならずとも大人まで、しっかり風船をもらいに行くところが、これまたド中華。タダのものは外しません。

しかし、世の中タダほど高いものはナシ。風船を取りに来た大人に、揃いのユニフォームを着た行員がにこやかに北京語や広東語で話しかけながら、さりげなく住宅ローンのニーズをチェックしています@@ 風船1個がン十万ドルの融資話に化けるのであれば、安いものです。声をかけられる方も、その辺は重々心得ており、
「カネがなくってねぇ。家を買うなんて夢の夢だよ。」
「ちょっと話を聞かせてもらえんかね?」
などなど、気軽な対応。

興味アリと見たら、すかさず、
「では、こちらへどうぞ。」
と真っ白なテントに招き入れ、隣でどこかの子どもがお絵かきしてようが、ちょっと休みたいだけの大人が座り込んで大声でケータイしてようがお構いナシ。さっそく本題に入ります。ここからは私の勝手な想像による完全なフィクションですから、そのおつもりで。(HSBCさん、勝手に名前使ってゴメンなさい!)

HSBC(以下H)「お客様のお名前は?北京語のままでよろしいですか?」
客「姓は呉だ。この年だから英語は無理だよ。潮州語(中国語の方言の1つ)ができないかい?えっ、福建人?じゃ、北京語で頼むよ。」
H「すいません、呉先生。潮州語はちょっと。住宅購入をお考えですか?」
客「そうなんだ。中国で工場をやってるんだが、工場長仲間がNZに家を買って儲かったらしい。今回は観光で来て、親戚の家に泊まってる。ニューマーケットってとこだ。周りにはいい家がいっぱいあってね。どうなんだい、あの辺は?」

H「高級住宅地ですね、利便性もいいし。評判のいい学校の学区で人気があります。ただ・・・」
客「なんだい?いろいろ教えてくれんか?」
H「はい。実は市政府が中心部の交通渋滞を緩和するために対策を検討中でして、ニューマーケットのように中心部に近い場所だと、その対象となってクルマの走行に課金されるかもしれないんですよ。」
客「あぁ、シンガポールみたいなやつだな。中心部に入る時にゲートみたいなもんをくぐるとカネを払うってやつか。」
H「まだ決定してないのでわかりませんが、そんな案も出てるんです。」

客「決まったら不動産価格に響くかね?」
H「住人にどれぐらいの負担になるかですが。まぁ、あの地域の人は元々お金持ちですから、関係ないんでしょうけど。アハハハハ。それよりもハウィックはいかがですか?」
客「どこだいそりゃ?」
H「少々郊外ですが、華人が大勢住む新興住宅地です。やはり人気の学校がありまして、海外の大学に進学しやすい制度を導入してることもあり、アジア人はそこに子弟を入れたがるんです。」
客「じゃ、もう高いんじゃないか?」
H「はい、確かに。でも、まだ将来性が高いと思います。」

客「よさそうだな。高くてもその学区の物件がいいんだろう?」
H「そうですね。学区内の住所ほしさに常に賃貸需要も高いですから投資向けでしょう。」
客「どっかいい物件はないかい?」
H「弊行では斡旋はしていませんが、金馬地産や長江地産が華人系の経営であの地域に特化して手広くやっています。一度ご相談になられたら?」
客「英語じゃないだろうな?」
H「もちろんですよ(笑) 北京語か広東語で。これが連絡先です。あちらにお電話もご用意してますので、よろしければ。」
客「すまんね。電話してみるよ。で、おたくのローンはどうなんだい?」 (両者、条件の提示でゴニョゴニョ)

H「呉先生の条件でしたら頭金15%を収めていただき、20年ローンで、金利は・・・」
客「15%の20年?もっと勉強せんかい。10%で25年でどうだ。外貨建てでも構わんのだろう?NZドル金利はバカ高いからなあ。米ドルやユーロ建てはどうなんだい?」
H「外貨収入があれば外貨建てもできます。細かい数字は審査部次第で(ちょっと汗汗´。`;)」
客「まぁ、そうだろうな。だいたいわかった。1軒50〜60万ドル(5千万円前後)なんだろう?5軒ぐらい買うかな?1軒は自宅用に現金で買って担保代わりだ。他の4軒は全額借入でどうだい?返済も金利だけで元本返済はナシだ。金利は経費になるからな?大丈夫だろ?」

H「はい、基本的には。4軒への外貨建てご融資で、ご返済は金利のみ。ご自宅を担保にされて・・・(と一生懸命メモ)」
客「この週末に見に行ってみるよ。」
H「あそこにはおいしい潮州料理の店もあります。お口に合うかわかりませんが。」
客「そうかい、そりゃいい。若いのにいろいろ勉強してるし熱心だし感心だな。月曜日に連絡をくれんかね?これが電話番号だ。また風船配りかい?がんばるように。」
H「恐れ入ります、呉先生(萌)」

とかなんとか、まったくの想像ですが、ありがちな話かと。この打てばお互い響き渡る関係、この手応えを知ってしまうと共鳴できない銀行とは取引できないんでしょう。中華コスモスでは風船1個も侮れません。錬金術の始まりになるかもしれないのです。彼らときたら触れるものをどんどんカネに変えてしまいます。それがフェスティバルでも。(つづく)

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「マヨネーズ」
前回HSBCは日本ではリテール業務をしていないと言ってしまいましたが、元行員の友人情報によると、していました!ただし、
"顧客になるには「金融資産5億円以上、うち3億をうちにもってきてください」だそうです。や〜っぱプライベートバンクも3億ぐらい資産もってきてくれないと"
とか。さすが庶民にキビシイ銀行><;

(小さい頃から慣れ親しんで。本当に世界中どこにあっても華人たちには「地銀」なのかも→)

西蘭みこと