「西蘭花通信」Vol.0481  NZ・経済編  〜クールビジネス〜              2009年1月13日

今日は朝からやや曇り空。夏休み中マンガ三昧の長男・温(14歳)を動員して家具のペンキ塗りを決行。彼のタンスなので断られる筋合いはなく、2人で黙々とベースコート(下地)塗り。途中、何度かパソコンに行ってはメールや為替をチェック。朝からNZドルが急落していました。昼は納豆・青さ・エビの冷やしうどん。

一服して、
「暑いけど1時半から再開しよっか?」
と部屋に逃げ込んだ長男に声をかけると、
「は〜〜〜〜〜い。」
と気のないけれど素直な返事。ここで挫けると今日中に下地が終わらないので暑いけど自分にも、
喝っ!

(ベースコート終了。これからペンキです。塗ってからなんですが「やっぱり家具は木目が好き!」を実感→)


ちょうどその頃、格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は「NZのアウトルックを『ネガティブ』に引き下げ」と発表していました。それを受け、2人が白い下地への照り返しに目を瞬かせている頃、チャート上のNZドルは鼻水でも垂らすようにツ―――――と下げていたのです。ご存知の通り、格付けは国や企業の信用をランキングにしたもの。「A」だの「B」だのと言ってるアレです。ソブリンと呼ばれる一国の主権格付けには外貨建てと自国通貨建てがあり、一般的に言われる格付けは外貨建てを指します。(自国通貨建てであれば、問題があっても他国や海外投資家にはあまり影響がないので)

しかし、外貨建てとなると話は違ってきます。その国が「海外からの借金を返済できるかどうかの尺度」ですから、「格下げ」となれば外国人投資家が身を乗り出してきます。投資というかたちでその国や企業に貸し付けた資金に約束通りの金利が払われるのか、はたまた元本が回収できるのか、格付けはその信用度を示すわけですから気にならないわけがありません。当該国にしても、格付けは「金利をいくら払えば海外で資金調達ができるのか」という目安になり、高ければ高いほど金利負担が低く済み、逆もまた真なりなのです。

格付けが当面どういう方向性にあるのかを示しているのが「アウトルック」。"信用見通し"というところでしょうか。S&Pは今日(NZ時間)それを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたのです。通常アウトルックの引き下げは格下げへの警告であり、一定の猶予期間を与えることで情況が改善されるかどうかを見極めようというわけです。現在のS&P のNZ外貨建て格付けは「AA+」(最高ランクの「AAA」から2番目、ちなみに日本は「AA」でNZより低いです!)。これが「AA」になるかもしれない!?

「それでもダブルAなんだから、いいんじゃな〜い?日本と同じなら上等では?」
というご意見もあろうかと。しかし、ここは大変な借金大国で、ガンガン借りてもバンバン返せているうちはいいのですが、世界的な景気後退の中、NZもリセションに突入しすでに3四半期連続でマイナス成長中です。頼みの綱だった財政も今年度から赤字転落。11月に新政権を樹立した国民党政権は景気対策に向けて支出を増やすよりも、収入減になっても減税を重視するという、「このご時世では逆なんじゃ?」という政策を打ち出し、国としても借金する気マンマンなのです。(通常、減税は消費促進につながりますが、不況下では減税分が貯蓄に回ってしまい景気対策への効果が弱いのです)

S&Pもまさにこの借金体質を懸念しており、見通し引き下げの理由を、
「2008年度の経常赤字が対GDP(国内総生産)比8%に達したことからもわかるように、NZでは対外収支の不均衡が拡大しているため、経済政策の柔軟性が狭まっていると判断した」
と言っとります。非っ常〜にざっくり言ってしまえば、
「海外から受け取る金額より海外に支払わなくちゃいけない金額がどんどん増えてるんだから(=経常赤字の拡大)、この不況下に政府が景気対策をやろうとしてもそんなに借金ができないんじゃない?(でも景気は悪化の一途)で、オタクらどーするつもり?」
みたいな。

新政権は財政赤字に関し、対GDP比で2009年度3.7%、2010年度4.4%、2011年度5.6%と見通しバッチリながら、どうやって景気後退から抜け出すかの青写真はほぼ皆無。
「収入の見通しがないのに借金の見通しだけあるって、どーいうこと?」
と思ってジョン・キー首相の施政方針演説を全文読んでみましたが、やっぱりナイんですよ、不況脱出のロードマップが。
「学校建築とかブロードバンド敷設とかって、不況と関係なく急務でしょう?」
というのがあるばかり。学校造って景気が戻るなら、各国みんなやりますよ〜┐(  ̄ー ̄)┌

「できたてホヤホヤの新政権なんだから、もうちょっと時間をあげたら?」
というハト派も多いと思いますが、こと信用収縮となると呑気に構えていたら、
「一夜にして市場から締め出され、朝起きたら風景が変わってた!」
なーんてことが起きるので、対応は一刻を争い、早ければ早いほどそのコストが低く抑えられるはずなのです。オバマ米次期大統領が就任前から経済対策に向けガシガシ動いているのはそのせいで、ノロノロしていてコストが嵩めばそれを負担するのは自分の政権なのです。(一方のキー首相はハワイで休暇中@@;)

新政権の閣僚が28日間のクリスマス・年末年始休暇を楽しんでいるところに、ガツンと一発お見舞いした格好のS&P。これぞクールビジネス♪(惚) これで閣僚たちがワラワラ仕事に戻ったら、NZに貸し付けている海外投資家も少しは溜飲を下げられる? S&Pが示唆した猶予期限は今年5月の予算案。

それまでにきちんとした政策と実績を示せないと・・・・(((@@)))

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「マヨネーズ」
キー新首相はかつてメリル・リンチのトレーダーだった人です。信用を失ったときの市場の怖さ、そのための「不況時の正しい過ごし方」を熟知しているはずなのに「それでもハワイ♪」とはけっこう驚きました。世間の景気に対する根強い楽観論、問題軽視の傾向も非常〜に非常〜に気になる貧乏神ミコトであります。

西蘭みこと

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