「西蘭花通信」Vol.0490  生活編  〜ブルースプリング・レポートVol.3:キャリア・エキスポV〜         2009年9月2日

長男・温(15歳)の高校で開かれた「キャリア・エキスポ」(進路相談会)でばったり出会った親子は、私が「どこでもドータ」と呼んでいるデンマーク人ママのドータと息子のステファンでした。ドータとは思わぬところで遭遇する確率が異常〜に高く、先日も外出した帰り道に偶然見かけ、立ち話をしたばかりでした。(彼女との遭遇ぶりはコチラでも)

「ステファンは9年生(日本の中一)でしょう?もう見に来たの?」
とその用意周到さに、何事にも積極的なドータらしさを感じながら聞いてみると、
「せっかくの機会だからね。何でも見ておいた方がいいじゃない?この子は土木技術に興味があるのよ。ねっ?」
と、隣に立つ息子を見上げながらドータが念を押すと、190p近くあるキリンのように長身で大人しそうなステファンは曖昧にうなずきました。

「どこの大学に関連学部があるのかしら?一番大きいからやっぱりオークランド大学?」
「そうじゃない。すぐそこにブースがあるから聞いてみたら。」
「そうね。温はどうするの?」
「さっき知ったんだけど、経済に興味があるみたいよ。」
と苦笑しながら言い、
「これぐらいの歳の子はいろんなことがやってみたいのよね〜」
とお互い笑って別れました。

三度(みたび)温が戻ってきて、
「だいたいわかった。どこの大学も1年目は経済のいろんなことをやって、2、3年は選ぶサブジェクト(科目)が減ってディープ(専門的)な勉強になるみたい。」
と言います。
「温くんは大学で何がやってみたいの?」
と単刀直入に聞くと、
「アカウンティング(会計)とか面白そう。」
と実にあっさり返答してきました。

これはかなり寝耳に水でした。前に、
「国の経済がどうなっているかマクロ経済を見るには、その国の有名な会社や業界が儲かっているかどうかミクロ経済も見ておいた方がいいよ。会社が儲かっているかどうかは業績を見るんだけど、それには会計がわかるともっといいね。」
という話を漠然としたことがあり、その話が飛躍してしまったとか?

(あちこちのブースを回って資料を集めている温。一番手前→)

「算数の先生のミスター・ベイカーの子どもって2人ともアカウンタント(会計士)なんだって。それってね、先生が勧めたんだよ。"アカウンタントは金持ちからカネを取る"からいいんだって。」
そう来たか><! 私とのミクロ経済云々の話などまるで及びでなかったよう。

「でもね、友だちのガビンのパパとステップマザー(継母)はアカウンタントなんだけど、最近2人ともリストラされちゃって、ガビンはママの家に行きたくてしょうがないんだ。ガビンのママはロイヤー(弁護士)でワンミリオンの家(日本の感覚では「億ション」)に1人で住んでるんだけど、ちゃんとガビンの部屋もあって部屋に電話まであるんだよ!」
今度は「アカウンタントはリストラされるかも。ロイヤーの方が安全?!」と言わんばかり。部屋に電話があるのがそんなに大事か?なんちゅー単細胞┐(  ̄ー ̄)┌!

まぁ、15歳にとっての大学卒業後の職業など五里霧中。ノー天気にあれこれ悩むのもまた良し。なれるもんならなったらいいじゃないの、金持ちからカネを取るアカウンタントにでも、リストラされないロイヤーにでも´艸`
ぷぷ つい最近まで、
「将来は幼稚園の先生になりたい」(←これはかなり長い期間言っていました)
とか、
「誰もいない遠いところでコーストガード(沿岸警備隊)になりたい。オークランドは人が多すぎる!」
なんて世を拗ねたことを言っていたぐらいなので、今はママにとってどんな職業も、馬耳東風さ!

ふと見ると、周りの人より頭1つ分飛び出したステファンにオークランド大学の担当者が説明しています。
「すごいなぁ。あの歳でどんどん質問してるのかな?」 と思って見ていると、ステファンの胸元近くに盛んにうなずいているドータの頭を発見@@!

やっぱり〜? 担当者は彼の陰になっていた彼女に説明しているところでした。2人はパンフレットを広げ始めましたが、当のステファンは友だちでも探しているのか明後日の方向を見ています。
「これじゃ、ステージママだな。」
と思わずクスクス。

温はいろいろ見た結果、高二に当たる来年の選択科目を「英語」「数学」「歴史」「経済」「会計」「ビジネス・スタディー」の6科目に決めました。温の高校では(多分、公立校はどこも同じかと思います)、高二以降は自分の選択した科目のみを勉強します。体育は中三までしかなく、音楽、美術、技術・家庭科もすべて選択科目です。親としては「もうちょっと幅広く勉強してほしいな〜」と思っても、この国の制度は自分の進む方向を早々に決め、それに絞った勉強をするようになっています。

「アート・ヒストリー(美術史)は取れないけど、まぁ、いいや。」
と自分の意思で取捨選択。そうそう、人生はすべて自分の選択なんだよねん。決めた時は「これがベスト!」と思っても、後でそうならないことはよくある話。その時に「自分で決めた事」だったのか「他人が決めた事」だったのかの違いは決定的なはず。「人の話を鵜呑みにしなければ・・・」と反省で済めばいいものの、ややもすれば下駄を預けた自分の責任を棚上げにして、問題を他人のせいにすり替えてしまいがちです。

よくわからなくても自分で決める勇気とその決定に責任を持つこと――
キャリア・エキスポのお土産はそれでした。(完)

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「マヨネーズ」
元同僚から「会社でブログと名のつくものは一切アクセスできなくなってしまったので、このメルマガが西蘭家ニュースの頼りです」というメールをもらいました。ご無沙汰ばかりの私、ここはひとつがんばらないと!
Kさん、いつも連絡ありがとう〜♪

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