「西蘭花通信」Vol.0520  NZ編  〜5月31日〜                    2010年5月31日

私たち一家にとり、5月31日は特別な日です。2004年5月31日にNZへの移住認可が下りました。当時暮らしていた香港から申請したロングターム・ビジネス・ビザ(LTBV、いわば起業家ビザ)は、「内容が複雑すぎる」とかで申請後1年以上も放置同然でした。移住エージェントのお尻を叩き叩き、自分たちも七転八倒しながらのすったもんだの末、1年2ヶ月を経てやっとの思いで認可を得たのが5月31日でした。

この辺の経緯は当時のメルマガにも綴っているので、よろしかったらどうぞ。
Vol.0219 〜5月12日 午前編〜
Vol.0222 〜第7天国・第9積雲〜

それから2ヶ月も経たない7月24日に一家で移住を果たしました。およそ国際空港らしからぬ朝のオークランド空港の閑散とした雰囲気、レンタカーに荷物をギュー詰めにして走り出したときのなんとも言えない解放感は、いまだにはっきりと思い出すことができます。子どもたちを学校に通わせ、家を借り、夫婦でそれぞれの在宅業を始め、移住生活は思った以上にスルスルと順調に進んでいきました。夫婦で海外引越しを繰り返してきたせいか、ここでの生活も「新しい国での新しい生活」の一つでした。

しかし、今回ばかりは「その先」がない移住。今までの「いつか出て行くことを前提とした引越し」とは訳が違います。そうなると、どうしても手にしたいのが永住権です。LTBV自体の期限は3年間で、取得してから2年後でないと永住権の申請ができませんでした。ここでの生活を一刻も早く安定させたかった私は、申請条件が緩和されたのを機に自分名義で永住権を申請してみることにしました。

そのきっかけとなったのが、あるキウイの一言でした。
「仕事がないアジア人は申し込んでも絶対に取れない。取れるのはアメリカ人とイギリス人だけだ。」
という彼の一言が私の心の琴線に触れたのです。それは「アジア人をバカにするな」というものではなく、
「NZを見くびるな!」
というものでした。私はNZの公正さに賭けてみたかったのです。
(ここでいう仕事とは雇用のことで、私のように自営業者は雇用主がいないため、「仕事がない」と見なされます)

実は、このキウイは私たちの移住エージェントでした。LTBVの申請のために、私たちは最終的にNZ最大のエージェントを選びました。というか、そこ以外、引き受けてくれるところがなかったのです。その経緯は長いですが以下のリンクに綴っています。
Vol.0083 〜西蘭杯ダービー〜
Vol.0084 〜西蘭杯ダービー その2〜
Vol.0085 〜西蘭杯ダービー その3〜
Vol.0089 〜西蘭杯ダービー その4〜
Vol.0096 〜西蘭杯ダービー 最終回〜

料金は他社の2倍というべらぼうな高さながら、実績のあるプロ集団という印象で出足こそ好調でした。ところが景気が上向きだったせいか担当者が次々に転職し、3人4人と変わりました。その度に一から状況を説明させられるのに、申請自体は全く進展がないという繰り返しに、私の堪忍袋の緒が切れ、
「いったいオタクの会社はどうなってるの?社長を出しなさいよっ!」
と電話で息巻いた結果、本当に社長自身が私たちの担当につきました。

なので彼の一言はNZ最大のエージェントの正真正銘のトップの言葉でした。
「どうせ取れないからキミたちの永住権申請は引き受けられない。」
とまで言われました。LTBVのときも他社に断られ、とうとう最後の1社にも三行半を突きつけられ、後は自力でやるしかありませんでした。
「上等上等!」
移民事情をとことん知り尽くした人の言葉だったからこそ、私は俄然挑んでみる気になったのです。

そして、NZへの移住認可を得た奇しくも1年後の2005年5月31日、とうとう自力で永住権を取得することができました。それまでの経緯もメルマガにしているのでよかったらご覧下さい。
Vol.0314 〜Indefinitely−永久に〜
Vol.0319 〜in NZ indefinitely〜

あれから今日で丸5年が経ちました。「石の上にも三年」だとしたら、今の生活はそれよりも磐石になったということでしょうか。移住して来たときはともに小学生だった子どもたちは高2と中2(こちらでは12年生と9年生)になり、長男・温(16歳)は寝耳に水だった「日本への進学」を目指して日々受験勉強に明け暮れるようになりました。次男・善(13歳)もティーンの仲間入りですっかり手が掛からなくなってきました。夫婦の仕事は細々ながらもおかげ様で途切れることなく、2匹の飼い猫はチャッチャ1匹になってしまったものの、18歳の誕生日を前に元気にしています。

毎年この日を思い出しながらも、月末締め切りの仕事に終われ、なかなか祝えずに来ました。でも今年は永住権取得から5年という節目。リンクばかりになってしまいましたが、たくさんの思い出をここで振り返り、明日からの糧にしてみようと思います。私たちを受け入れてくれたNZへの感謝は尽きることがありません。これからの5年間もまた、笑いの絶えない明るく楽しい心穏やかなものでありますように。

(2010年5月31日の朝の空。快晴ではありませんがうら暖かい日でした。5キロ走っていい汗をかきました→)


西蘭みこと 

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