「西蘭花通信」Vol.0522   生活編   〜横車は押さない〜                2010年6月7日

6月1日のことでした。5月31日で永住権取得5周年を迎えた私たちにとり、永住6年目の初日となったその日、夫と2人で移住前の思い出のカフェに行き、今までの5年間を労おうということになりました。昼前に強い雨が降っていたものの小止みになったので、予定決行で出掛けることにしました。
(思い出の「カフェ・セザンヌ」。9年前の2001年のこんな逸話も→)

クルマに乗るためにガレージに向おうとすると、レンガの通路が小川のようになっています。こんなことは初めてだったので驚いて水の来る方向を見ると、段差のあるお隣から小さな滝のように横幅数十センチの水がどんどん流れ込んでいます。咄嗟に何が起きたのか分かり、鳥肌が立つ思いでした。ここ半年ほど密かに恐れていたことが、とうとう現実になってしまいました。

「こんなことが本当になるなんて・・・・」
虚しさとやるせなさで胸がいっぱいでした。ちょうどお隣のご主人も出てきていて、自宅のガレージ前で池のようになった大きな水溜りを見ているところでした。
「この水は隣から来るんだ。」
最初の一言がそれでした。

お隣は前々から、ちょっとした雨が降ると我が家との境目にあるガレージ前が氾濫し、池のようになる家でした。水は床下であるガレージ内に流れ込んでいるので、ちょっとした雨でも毎回床下浸水になるわけです。この一帯はゆるい傾斜地になっており、本来非常に排水のよいエリアで、道路に水が溜まることもありません。お隣は歩道脇を走る市の下水管までの管がやや斜め上になるように設置されているとかで、雨になると敷地内が冠水してしまうのです。

冠水した後の排水にも時間がかかっていたので、なぜこうした状況を放置しておくのか不思議に思い、引越し以来、何度かご夫婦にこの件を尋ねてみましたが、2人とも下水管を埋め直すなどきちんと対応する意思はなさそうでした。ただ、池ができてもうちの敷地にまで水が流れ込んで来る訳ではなかったので、私たちにとってもそれ以上嘴を挟むことではない、所詮は「お隣の問題」でした。

3年が経ち、ある日、ご主人が問題の場所に電動ポンプを取り付け、セメントで埋め込みました。溜まった水をポンプの力で斜め上に向いた管に流そうというのです。大雨のときは外に出ないので、ポンプが作動するのを見たことはありませんが、マニュアルで対応しているようでした。逆に言えば、彼らが不在のときには作動しないということです。

それから数ヶ月が経ち、半年ほど前の夏に突然、お隣にコンクリートミキサー車や工事関係者が現れ、
「いよいよ、下水管を埋め直すのかしら!でも、ポンプをセメントで埋めた後に?」
と思って見に行くと、もともと1台分の駐車スペースだった水溜りのできる場所を2台分の駐車スペースに拡大し、あろうことかコンクリで埋めているところでした。それを目にした瞬間も、雨季となる冬場に起きるであろうことが想像でき、鳥肌が立ちました。お隣のご主人は「ここにボートを停めるんだ」と嬉しそうでした。

コンクリ敷きでさらに吸水力を失ったお隣の水がもっと大きな水溜りを作り、一段低いうちの敷地に流れ込むことは素人目にも明らかでした。建設関係の仕事に就くお隣さんにはもっとはっきりと状況が飲み込めていたはずです。それでも問題の根源である下水管に触らないどころか、コンクリートで覆ってしまうとは!それから何日も気が塞いだものの、今夏は記録的な降水量の少なさで、問題は数ヶ月も先延ばしできました。しかし、延ばせただけで解決できたわけではありません。

「こうなることはわかっていたでしょう?どうしてここをコンクリ敷きにする前に下水管を埋め直さなかったの?こんなに水が流れ込んできて、これじゃ歩けないわ。」
という私の質問は、
「流れ込む?たかが4、5cmじゃないか。うちなんか隣から・・・」
という反論で押し戻されました。この程度の雨でポンプを稼動させてもこんなに浸水するということは、冬の間に何度同じことが起きることか。問題は最早「隣の問題」ではなくなり、「うちの問題」でした。

その間も水は通路を流れ、玄関の前を回って庭に流れ込んでいきます。うちは2年前に離れを建て、その時に市の条例通り、雨水用も含め下水管を新たに埋め直したばかりです。それ自体は数千ドルの費用でした。お隣も同じことをすればいいはずなのに、なぜ十数年も冠水をそのままにした挙句、事態をもっと悪化させてしまったのでしょう?水が溜まって歩けなかったので私はガレージに入るのを諦め、外から回ってクルマに乗り込みました。最初から最後まで謝罪の言葉の一言もありませんでした。(つづく)

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「マヨネーズ」
お隣のことですし、ここではネガティブなことを書かない方針だったのでこの件を書くかどうか1週間悩みました。けれど問題は深刻でとてもこのまま放置できるものではないため、経緯を記録に残すことにしました。

すでにオークランド市と連絡を取っていますが、在住の方でご近所とのトラブルの法律相談や専門家、調停・仲裁機関等のお心当たりがある方、問題を解決されたご経験のある方など何でも結構ですので、情報がありましたらお手数ですがmikoto@sailanmikoto.comまでご連絡くださいますよう、この場を借りてお願い申し上げます。

西蘭みこと 

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