「西蘭花通信」Vol.0552   生活編 〜ブルースプリング・レポート Vol.20:オークランド大学商学部〜       2012年3月3日

12年生(日本の高二)になる直前に、
「日本の高校に行きたい!」
と、突然言い出し、その後は親を巻き込んでてんやわんやとなった長男・温もこの2月で18歳になりました。

付け焼刃で臨んだ日本の高校受験で見事撃沈し、意気消沈していたのも束の間、今度は、
「日本の大学に行く!」
と言い出し、あれからまた2年間すったもんだしているうちに高校を卒業しました。

温は今週からオークランド大学商学部に通い始めました。第一志望は今でももちろん、日本の大学への進学ですが、合格できても9月入学なので、こちらで一足先に大学生をになりました。日本の大学がダメだったら、このままここで学業を続けます。

              (厳密には学部としてはビジネススクールで、
                  その下に商学科があります→)


NZの大学には受験がありません。高校時代の成績を点数化したものが各人の持ち点となり、持ち点の順によって、オークランド大学の場合は、理工学部、医学部・・・というように入れる学部が決まってきます。(オークランド大学は理工学部の方が医学部より入学資格が厳しいのです!)学部によって持ち点の中に必須科目が入っていることが求められますが、受け入れ人数に上限はなく、持ち点さえ十分であれば全員が入れるという、間口の広〜〜いシステムです。

初日だった今週月曜日は母子で早起きし、温は6時台に朝食を済ませ、お弁当持ちで7時には家を出ました。授業は8時からで、大学までは列車と徒歩で30分もあれば着くのですが、朝のラッシュ時のダイヤは乱れがちなので早めに出ていきました。息子の背中を見送りながら、
「大学生の親になったんだなぁ。」
としみじみ思いました。

初日を終えて帰ってきた温の開口一番の感想は、
「アジア人、多い〜!!」
でした。
「中国人というより、東南アジア系の中国人かな?シンガポールとかマレーシアとかタイとかの。中国人や韓国人はそんなに多くないね。みんな元々英語を話してる感じのアジア人だった。」
ということでした。

NZの大学は間口を広くして浅く広く受け入れてから、どんどん落としていくピラミッド制。温曰く、
「"オークランド大学の医学部は9人に1人しか2年生になれないから、本当に医学を目指したいのかよく考えてから申し込め!"って、高校のとき、先生が言ってたもん。」
とか。他学部でもかなりの生徒が抜けていくようです。

アジア人は日本人を含め概ね教育熱心で、親が大学の学費を全額出している家庭が大多数ではないかと思います。しかし、キウイは一般的に18歳で成人した後は、「自分のことは自分で」という考え方なので、かなりの生徒が学生ローンを借りて進学します。そのため勉強についていけなくなったら早々に見切りをつけ、借金の返済のためにも社会に出てしまいます。こうした事情から、大学の「アジア化」または「非キウイ化」が年々進んでいると行っても過言ではないでしょう。

商学部は2008年に落成した最新の専用校舎を持ち、そこですべて事が済むようになっています。
「商学部用の図書館があるから、大学の図書館まで行かなくていいんだ。」
「カフェも2つあるしね。商学部用のジムはないけど。」
「商学部の駐車場は商学部の生徒なら1日10ドルだけど、他の学部の生徒はもっと高いんだって。」
と、見聞した温にも新鮮なら、又聞きする親にも新鮮な話がざくざく・・・・

冷蔵庫で有名なNZ唯一の白物家電メーカー、フィッシャー・アンド・パイケルは商学部の校舎のうち2フロアを寄贈したそうですが、どちらも空調の効きが強くて非常に寒く、生徒の間では下の階が「フリッジ(冷蔵庫)」、上の階が「フリーザー(冷凍庫)」というあだ名で呼ばれているそうです。「ほんっと寒いよ〜」と、なんだかウレシそうな温。なんでも目新しくて面白いんでしょうね。

教授陣も個性豊かなようですが、中でも76歳のスリランカ系の教授は50数年間教鞭を取り続け(つまり大学を出てからこの道一筋なんでしょう)、移住前にロンドンに住んでいたときは、ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソンがまだ学生で、家のすぐそばに住んでいたとか、ボディーショップ・グループの創業者アニータ・ロディックを教えたことがあるとか、多分何十年も繰り返してきた、商学部の卒業生全員が聞いたであろうベタな自己紹介がなんとも楽しい人で、温は非常に気に入っていました。

「寮のコはひとコマ空いただけでも家に帰るよ。でも門限があるから寮は人気がないんだ。」
「友だちに会って一緒に大学まで行ったら、途中の坂道で息切れしてた」
(大学は坂の中腹にあります)
「マセラティ乗って来る中国人のコ見たよ。先生じゃないよ、若かったもん。ナンバープレートも自分の名前みたいだった」
と、毎日帰って来てから、話す話す(笑) 

まぁ、楽しいのは何よりです。母も早起きとお弁当作りで応援したいと思います。

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「マヨネーズ」
「大学生なのにお弁当?」
なんですが、温は半年前から肉食を完全に止めてしまい、ベジタリアンとなったため(魚介類は食べます)外食のチョイスがかなり減ってしまいました。そのために協力している面もあります。

先日は中道右派国民党党首のジョン・キー首相が商学部に来たそうで、その前後の商学部学生へのアンケートによると、93%が「国民党支持」という結果に。 「なんかわかるよな〜」 とニヤニヤする温。なにがわかるんだかー。ー;

西蘭みこと 

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