「西蘭花通信」Vol.0556   経済編 〜投資という旅〜                  2012年3月24日

ごくたまに投資のご相談を受けることがあります。今のような低金利だと「銀行に預けていてもつまらない」と感じる人も多いのでしょう。リーマンショック前のNZでは、銀行にポンと預金しておくだけで7%以上の金利がつく時期もあったので、今の3〜4%の金利では「損をしている」気分になるのもうなずけます。今では5%の金利を得るために、ほとんどの銀行で3年以上の定期預金を組む必要があります。

「安全で、預金より利回りがいい投資は?」
「あまり資金はないけれど、なにか手軽な投資先は?」
「友だちがFXで大儲けをしたので、自分もやりたい」
こういう質問の背景にあるのは、
「安全」(元本保証)
「手軽さ」(面倒な勉強はしたくない)
「他人の儲け話」
ということではないかと思います。この辺の関係を自動車の運転に例えてみます。これらの問いに答えはなく、自分で探すしかないものだと、私は思っています。

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まず、「目的地」を「儲け」としましょう。「目的地」までどうやって辿りつくか?「投資なんてわからない」と決めつけておきながら儲けを追求する人は、「クルマ」という資金があっても免許がなく「運転できない人」だと言えましょう。自力では行けないのに、「目的地」に行くことを主張します。

本人に「自分には免許がない」という自覚があればいいのですが、
「○○さんはあんなに儲けた!」(つまり「遠い目的地まで行った」)
と他人の儲け話にばかり目が行き、
「私だって!」
と見よう見真似でエンジンをかけ、公道に出たとしましょう。

投資ですからそれで逮捕されることはありませんが、無事に遠い目的地まで行ける可能性がほとんどないことはおわかりでしょう。かえって事故に遭い、「クルマ」(資金)を台無しにしてしまうことの方が心配です。知識がないゆえに、驚くほど無鉄砲になってしまう例です。

ところがこの無免許運転、1回だけだとけっこう上手くいったりします。いわゆるビギナーズラックと言われるもので、「なんだ、免許なんか要らないじゃないか」と、投資に真剣に向き合うことなく、「目的地」にばかりにこだわり始めるきっかけになってしまうこともあります。しかし、ルールもわからないままズルズル投資を続けていると、初回の儲けなどあっという間に吹き飛んでしまい、無免許運転は早晩事故に遭うでしょう。

「運転はするんですが、遠出はちょっと・・・・」という「ご近所ドライバー」もいます。彼らは自分の行ける「目的地」や「行き方」(投資手段)をよく心得ていて、非常にタイトなリスク管理でFXをするとか、自己資金だけで株をするとか、なにかルールを決めてそれを忠実に守りながら、決まった「目的地」まで、決まった「行き方」から外れることなく、自分で責任の持てる範囲内で運転していく人たちです。クルマは「通勤と買い物だけでいい」と割り切り、必要な「目的地」をよく理解している人たちでもあります。

では、免許がないのに「目的地」に行きたい場合はどうすればいいのでしょう?2つ方法があります。ひとつはおわかりのように免許を取ってしまうことです。日本の教習所のようにコースで学ぶにしろ、NZのように親きょうだいなど免許を持つ身近な人から手ほどきを受けるにしろ、自分で道路という市場に出て冷や汗をかきながら、運転技術や交通ルールを学び、雨天や夜間の視界の悪さ、ラッシュ時のイライラを経験し、車検などメンテナンス(情報収集や投資の記録をつけることなど)の大切さを知り、免許皆伝となることです。

もうひとつは運転手を雇うことです。免許を取る気がないのなら、他人に頼むしかありません。この場合、絶対に注意すべき点は「投資のプロ」と呼ばれる人たちでも、常に安全運転で確実に「目的地」まで導いてくれる保証はないことです。投資はそれほど道なき道を行くことであり、運転手の質、知識、運もまたバラバラなのです。また、ほとんど知らない相手にクルマを預けているという、非現実的な状況を自覚しておくことも重要です。

運転手は必ず費用をとります。中にはどれが「費用」なのかはっきりしない投資商品もあります。インデックス・ファンドを買い、指数はこんなに上がったのに、「指数に連動するはずの自分の投信はこれっぽっちしか上がっていない」という話はよくあります。「目的地」には着いたものの、途中でガソリンを大量に使われてしまい、プラスマイナスで考えると「これっぽっち」になってしまうようなものです。

「免許を取るのも大変、運転手に頼むのも嫌!」
というのであれば、銀行という「電車」で「目的地」まで行くことです。つまり銀行預金で確実に金利を受け取ることです。普通預金が「鈍行」(乗り降り自由)、定期預金が「急行」(しばらく停まらないので、その間乗り降りできません)。「電車」が脱線(倒産)しない限り、最も安全で確実な方法ですがリスクがない分、利回りが最も低いことも覚悟しなければなりません。

電車に乗っているだけで大金持ちになる人がいないように、銀行預金だけで大金持ちになる人もいません(預金額の多さは別のことでお金を作ったからであり、投資の結果ではありません)。自分で免許をとり、長距離を運転するリスクもとり、「大型の二種もとった!」という方が可能性が広がるのがおわかりでしょう。

しかし、どんなに注意していても事故を完全に避けることはできません。自分の中できちんとルールを決めて忠実に従い、謙虚に奢らず、他人と比べず、日々研鑽に励むなど、成功への道は極めて地味で真面目なものです。何よりも市場で生き残っていく体力と精神力を養っておくことも大切です。

ハンドルを握る皆さん、安全運転でがんばりましょう!

西蘭みこと 

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