「西蘭花通信」Vol.0582   経済編 〜消費と投資:消費と投資:CELTA〜      2012年7月12日

「あれ?こんなのあるぞ。」
食後に新聞を読んでいた夫が不意に声をあげました。何かと思ったら、ケンブリッジ大学が主催する英語を母国語としない成人向けの英語教師資格、CELTA(Certificate in English Language Teaching to Adults)取得コースの広告でした。10週間のコースで、オークランド大学で受講できます。何よりも目を引いたのが、温(18歳)が名古屋大学に入学する9月末までに受講期間が終わることでした。

「いいじゃない。日本に行く前にこういう資格が取れるんだったら。やったら?」
傍にいた温も広告をのぞきこんでいます。奇しくもその日にメルマガ〜ブルースプリング・レポートVol.25:温のアルバイト〜を配信したところで、編集後記で、
「経済専攻なんだから、すぐに使えるビジネス英語をエグゼクティブや企業向けに教えるのはどうかしら?」
と言っていたところでした。

自らの経験で、学生時代のアルバイトに語学を教えるなら、子どもよりもエグゼクティブや企業向けの方が、収入面で優遇される上(この話はメルマガ〜永漢日語教室〜で)、社会勉強になることを、ちょうど温と話したばかりのタイミングでもありました。
「企業相手だったらTOEICの点数もだけど、こういう資格が役に立つんじゃないかしら?」
広告を見るまで、そんな資格があることも、CELTAという名前さえ知らなかった私ですが、ピンと閃くものがありました。夫も同じだったようで、
「どうせ大学のテストが終われば名古屋に行くまで暇なんだから、行ってみたらいいじゃないか。よくウェブサイトで確認してごらんよ。」
と勧めています。

言われるままに確認に行った温はすぐに戻ってきました。
「いくらだと思う?」
「1,000ドル(約6万5000円)ぐらい?」
と当てずっぽうに言う私。
「3,000ドルだよ!たった10週間で3,000ドルだよ。大学だって半年で3,700ドルなのに。ばかばかしい!」
と憤慨する温。
「そんなにするのか。ケンブリッジっていう名前なのかね。いいアイデアだと思ったんだけど。」
と諦める夫。話はそれで終わり、2人は部屋に戻っていきました。

私は食器洗いを始めながら、なんとなく頭の整理がつかず、ぼんやりと考え続けていました。片付けが終わると、温が切り抜いた広告が、テーブルの上に置いてあるのに気付きました。手に取ってしげしげと目を通してから、温と夫をリビングに呼びました。
(温が切り抜いたCELTAの新聞広告。しかし、なんちゅー切り方^^;→)

「ママはこの資格のことを知らないし、3,000ドルは確かに高いけど、逆に言えば3,000ドルを出す価値のあるものなんじゃないかしら。ケンブリッジはこれを商売にしてるのよ。この金額でも生徒が集まるってことでしょ?ということは、この資格はそれぐらいの価値がある、世界的に認められたものなんじゃないかしら。」

「だったら、高いけどやってみる価値があるんじゃない?タイミングもバッチリで日本に行くまでに資格が取れるわけでしょう?こうしたらどう?温、パパ、ママで1人1,000ドルずつ出して投資するの。温がこの資格を取って、名古屋でビジネス英語を教えるアルバイトを始められたら、安定した収入になるでしょう?マクドナルドで時給いくらのアルバイトをするより、ずっといいはずよ。」

「パパとママで1,000ドルずつって言ったって、家計から出るわけじゃないか。」
と、夫が横から口を挟みました。約20万円の頭割りとはいえ、実質的に家計の負担は12万円超ですから大きな出費です。
「温が堅い仕事を見つけたら仕送りを減らすのよ。毎月1万円減らせたら1年で12万円、投資は回収できるわ。3年間で36万、仕事によってはもっとになるかもよ。」
ここで夫の目がキラリーン。納得したようです。

「温にとっては卒業前から日本人のビジネスマンと知り合えて、彼らのニーズや企業が英語を通じて何をしようとしているのかを知ることができるでしょう?お金をもらいながら勉強できる貴重な機会だと思わない?企業内で教えるんだったら、夕方からだろうから勉強とも両立しやすいだろうし。まずは、確実に資格を取ることね!」
うんうんと、うなづく2人。

温とは同じお金を遣うのでも、「消費と投資がある」という話をした直後だったので、温は私の提案にピンと来たようでした。20万円は大金でも、やりようによっては回収でき、それ以降は「儲け」になります。同時に温はキャリアも積めて見聞を広めることができるので、投資益は金銭面にとどまらないでしょう。投資は株や為替に限りません。

こうして温は1,000ドルを払い、先週からCELTAのコースに通い始めました。

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「マヨネーズ」
「1,000ドルが出せなかったら、債券で運用している分をママたちが買い取ってあげるわよ。償還まで何年かあるからそれまでの金利は温のものだけど、元本が返ってきたらママたちが受け取ればいいじゃない。」
これは私の提案でした。文字通りタンス預金で眠らせていた祖父母からもらった小遣いの累計が10万円以上になった時点で、経験のために息子たち2人に債券投資をさせていました。利回りは7.75%以上。銀行預金以外の運用方法を覚えてほしかったのです。

「いいよ、今1,800ドル持ってるから。」
「え〜!そんなにあるのかぁ?!なんだ、半額出させりゃよかった。」
というのは夫の弁。

西蘭みこと 

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