「西蘭花通信」Vol.0628  スピリチュアル編 〜人生の春夏秋冬:豊かな秋〜    2013年6月24号

かつての同級生から30年ぶりに電話をもらった後、ふと心に浮かんだのが、
「人生の春夏秋冬」
「人生には四季がある」
という、いつの頃からか漠然と考えてきた発想でした。それほど電話の向こうのNくんは人生の違うステージにいるように感じられました。かくいう私も、自分が異なる季節を経てきたことを深く自覚しています。

ここでいう季節に甲乙はありません。同じ夏でも、熱く輝く絶好調の季節を過す人もいれば、猛暑や日照りのような長く辛い季節を送る人もいるでしょう。冬も同様で、雪に閉ざされた孤独で不毛な時間を強いられる人、来るべき新しい季節に向けて準備に追われる人、スキー場の賑わいと華やかさを体現するような夢のように熱い時期を送る人・・・・すべては星回りと、本人ひとりひとりの意思なのではないかと思います。

私が感じるように20年をひとつの季節とすると、80年で一巡します。きっと昔は還暦を迎える60年で一巡し、各季節は15年だったのではないかと想像しますが、今は各20年、計80年の方がしっくり来るのではないでしょうか?こんなところにも高齢化の波が押し寄せています(笑)年回りからして、分かりやすい友人の話をしてみます。

彼女の名前はミリー、ということにしておきましょう。こちらでは秋に当たる4月生まれの70代です。オークランド生まれの都会っ子、美人で聡明だった彼女は仲間うちのリーダー格で男女双方から人気があり、言い寄ってくる男には事欠かないタイプでした。幼なじみで、これまたイケメンでモテモテだったアダムと21歳で結婚。順調でみんなの憧れの的だった彼女の豊かな秋はここで終わります。

美男美女の理想のカップルが誕生したはずでしたが、自由を謳歌してきたミリーにとり、結婚は地獄のフタを開けてしまったようなものでした。すぐに一男一女をもうけたものの、アダムの女遊びが始まり、夫婦喧嘩に明け暮れる毎日。幼子を抱えて働きに出ることも離婚することもできない八方塞の中、ミリーは必死に耐えながら復讐を誓います。

30歳を迎えたところで、いくらでもその辺に転がっていたアダムの浮気の動かぬ証拠を基に離婚。その翌日にスティーブンと入籍、再婚しました。ミリーの復讐とは「ダブル不倫」でした。アダムは彼女の動向に全く気がついていなかったので、不意打ちに激怒。ミリーは溜飲を下げました。スティーブンは子煩悩で子どもたちを我が子のように可愛がり、ミリーはとうとう思い描いていた幸せな家庭生活を手に入れ、10年の歳月が流れます。波乱万丈の果て、後半は穏やかだった冬が終わり、季節は春を迎えます。

変調はごく些細なことから始まりました。40代になったところで、大学生だった愛娘が突然、家を出てしまいました。外から帰ると、
「フラッティング(共同生活)することにしたから。」
と言って、娘が荷造りをしており、その日のうちに出て行ってしまったのです。ケンカ別れをした訳ではなく、理由も、
「ちょうどいい空き部屋を見つけたの。私ももう大人だし。」
というもので、18歳で自立する習慣のある社会にあっては引き止める理由もありませんでした。しかし、事前に相談もなく、前日まで4人で食卓を囲んでいたミリーにとり、娘の突然の行動は人生初の喪失でした。

そうは言っても、子どもはいつか巣立っていくもの。ミリーにとって幸いだったことに、息子はまだ一緒に暮しており、娘にも頻繁に会う機会がありました。スティーブンと2人で営んでいた事業も好調で、心のどこかに寂しさを抱えながらも、忙しく充実した日々が続きました。そんなミリーの慰めはスティーブンとの旅行で、仕事の合間合間に2人で2、3泊の短い旅行に出ていました。

50代を目前にしていたある日、ロトルアの温泉旅行から戻ると息子の姿がありませんでした。
「もう27歳。大人なんだし外泊もするし・・・」
と思いつつも、連絡がないのが解せず、心当たりに次々と電話を入れてみるものの、誰も行き先を知りません。ますます不安が募るものの携帯電話のない時代の話、本人からの連絡を待つしかありませんでした。そんな時に入った連絡は、思いもかけない警察からでした。

息子は森の中で自ら命を絶っていました。クルマの不法駐車を通報され、警察が出動して遺体を発見しました。遺書はありませんでした。物静かな息子は亡くなる2、3ヶ月前に新車を買ったばかりでした。仕事や友だちにもそこそこ恵まれ、自殺の心当たりは全くありませんでした。辛い時期の心の支えだった、溺愛する最初の子を失ってミリーは茫然自失。
                 (NZのよくある森→)

「いったい私の何がいけなかったのだろう?」
と自分を苛み続け、それから3年間泣き暮らしました。自殺の理由はいまだにわかっていません。
(つづく)

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「マヨネーズ」
「20年がひとつの季節で80年で一巡?良くても悪くても夏だったり、冬だったり?それってこじつけ!」 と言われればそれまでのお話。感じたことを綴っているだけで、説得しようなどとは全く思っていませんので、お手柔らかに(笑)

日本人だと20歳で成人、40歳で男性なら厄年を迎え、女性なら厄年地雷原の30代を終えたところ、60歳で還暦と、なんとなーく節目節目の20年。ミリーの話を聞いて、キウイでもそれって「アリ」だな、と思ったのです。

そういう意味でも、自分で働きながら通過した経験からも、「40歳定年制」は理にかなっていると思うのですが、それは制度として行政が押し付けるものではなく、雇用契約の中での自由な意思決定として個々に実現していけばいいものなのではないでしょうか。というか、現実にはもう始まっているところもあるのでは?

西蘭みこと 

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