「西蘭花通信」Vol.0679  生活編 〜青玉婚式〜                       2014年4月2日

4月1日は23年目の結婚記念日でした。
「確か15年目以降は5年ごとの記念日。23年なんて超ハンパだけど、何かの記念になってる?」
とググってみたら、青玉婚式でした。青玉はブルーサファイアだそうです。当の本人も「へぇぇぇえ」という程度の豆知識。そのまま通り過ぎてしまいそうな記念日ですが、今回はメルマガに残してみます。

毎年結婚記念日を迎えて思うことは、
「よくもってるな。」
ということ。真剣に離婚を検討していた時期があったわけではないのですが、
「私たちは別れた方がいいんじゃないのか?」
と、あまりにも異なる価値感を前に客観的にそう考えていた時期はありました。
「もっと考えが似ている人と人生を送った方が、お互い楽で楽しいんではないだろうか?」
と、できるだけ当事者意識を持たないことでやり過ごしました。

そんな私たちがこれまで一緒にやってこれたのは、愛情、努力、忍耐、妥協、諦めなどいろいろな要因がありますが、一番の理由はやはり「続けよう」という意思だったと思います。特に私はつい最近の48歳になるまで、「なにかあったら子どもと3人でやっていく覚悟」決めていました。これは離婚だけでなく、夫との死別も含めての話です。そこまで覚悟をした上で、 「行けるところまで行ってみよう」 と思っていました。

そのため、私は結婚・出産を経ても経済力を手放すことは一度も考えたことがありませんでした。「今度の休暇はバリに行こう」とか「次に引っ越す時は低層のマンションにしよう」というのとほぼ同じレベルで、
「なにかあったら、子どもと猫とジーナ(一生の恩人の住み込みのフィリピン人家政婦)とで生きていこう!」
ということが、移住するまでは予定の一つとして心の片隅に書き込まれていました。

しかし、2010年の移住後6年目の48歳でふと、
「私がいなくても、もう子どもたちは大丈夫。」
という考えたこともなかった想いが啓示のように降って湧き、瞬間に「それは真実」と悟って涙が止まらなくなりました。(この話は〜良き日、良き人生〜でどうぞ) あの年を境に、夫ともよく話し合った上、私は19歳で家を出てからずっと握り締めてきた経済力というものを人生で初めて手放すことにしました。

今でも仕事は続けていますが、本当に自分がしたいライフワークのような仕事にのみ専念し、収入の大半は夫に頼っています。新規の仕事に声をかけてもらっても、身を乗り出すほど興味の持てる仕事以外、私以上にその仕事を必要としている誰かに譲るようにしています。その分、世帯収入も減りましたが、子どもの学業の終わりも見えてきて、日本の長男・温(20歳)への仕送りは移住前の貯金を躊躇なく取り崩しつつ(笑)、なんとかやっています。これから先も夫婦2人なら、なんとでもなるでしょう。

長年の結婚生活を振り返ると、私たちの鎹(かすがい)だったものが3つあります。1つ目にして一番最初にやってきたのが2匹の猫、シロ猫ピッピとトラ猫チャッチャでした。その存在に責任を持つべき第三者の登場は、「独身+独身=夫婦」ではないことを身をもって知る機会になりました。弱いものを慈しみ、守り、育て、無条件に愛することは人生が新しい段階に入ったことを実感するものでした。

猫を迎えたことで我慢を厭わなくなり、不便を不便と思わなくなったことは、その後の出産・子育てへの予行演習となりました。実際に子どもを持つや、母親というものは全てを投げ打ち、自我を捨て、身を粉にしなければ務まらないということを即座に知るところとなりましたが、生後1、2週間から子猫を育てておいたおかげで、「大海の遠泳に出る前に、近所の川で泳ぎの練習をしておいた」ぐらいの経験にはなりました。

2つ目の鎹はやや意外ながら、借金でした。私が30歳、夫が26歳のときに、シンガポールで初めて家を買いました。本当は30になる前に購入したかったものの、
「この歳で借金地獄に陥るのは嫌だ。」
という夫の強い反対で、予定を遅らせました。何千万円かのローンを組んですぐに理解したのが、「借金地獄」ではなく「借金天国」であること!借入金でも利益は丸々自分たちのものになるのですから、金利を払ってでも自己資金だけでちまちまやっているのとは比較にならないリターンを上げることができます。

さらに借金返済という共通の目的ができたことで、それぞれのお金の使い方が目に見えて改善しました。無駄遣いが減った代わりに、海外旅行、繰上げ返済などまとまった支出に向けてきちんとお金を管理するようになり、「自分の収入+夫の収入=家計」なのではなく、家計というものを中心に据えた上で、計画的に消費や投資をする術を身につけました。この過程は大変有益で、誰もができるだけ早く身につけるべきだと思い、以来、心ある若い知り合いには、
「1年でも早く家を買え!」
と吹聴しています。

3つ目は子どもたちでした。夫婦で23年目を迎えられたことを喜ぶのであれば、一番感謝すべき先は子どもたちでしょう。本人たちにはピンとこなくても、まさに「子は鎹」でした。彼らが順に巣立っていくこのタイミングで、また黒猫2匹クロとコロを迎え、借家購入で15年ぶりに住宅ローンを組んだのは偶然ではないのでしょう。私たち夫婦をがっちりつなぎ止めるために、新たな鎹が送り込まれてきたようです。


    (鎹だったお2人さんも、それぞれの道を歩み始めています→)

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「マヨネーズ」

「1年でも早く家を買え!」と吹聴しているのは、NZのように資産インフレがある場所での話で、個人的に日本はそれに入れていないことをお断りしておきます。

西蘭みこと 

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