「西蘭花通信」Vol.0714 生活編 〜硝子屋阿郎〜                  2015年5月26日

「ウェイ?(北京語の「もしもし?」)ワイ?(広東語の「もしもし?」)イン師傅(シーフー、親方)から紹介があったガラス屋だ。そっちは国語(北京語の意味)か?広東語か?」
という北京語の電話。ガラスというカタカナよりも、硝子という漢字の方がしっくりきそうな場面。ただし、中国語の硝子は玻璃(ポーリー)だからややこしい(笑)
「国語よ。」
と答えながら、
「これでキッチンの改装は全部中国人になったなぁ。」
と、思いました。

2月から準備を始め、3月には古いキッチンを取り壊して本格的に始まったキッチンの改装。5月も終わろうというのにいまだに完成していません。これにはかくかくしかじかな理由があり、またいつかメルマガにでもするとして、今日のところはスプラッシュバックの話です。日本だとバックスプラッシュと言うようですが、要は跳ねよけのガラス板です。ここ5年ほどNZではこればかりといわんばかりの流行具合で、一枚ガラスならではの掃除のし易さを買い、改装前から、
「タイルではなくガラスで!」
と決めていました。

いろいろ話を聞いて改装の構想を練っていくうちに、スプラッシュバックはガラスの専門業者に頼むもので、キッチン業者がするのは業者の手配だけだということを知りました。バスルームの改装でタイル屋を頼むのと同じ按配です。さらにキャビネットが全て入った段階で、きちんと採寸してから注文するものであることも知りました。なにせ壁にピッタリ貼り付ける一枚ガラスですから、どれだけ寸法が大事になってくることか。

今月13日にキャビネットが全て付き、再採寸してベンチトップの作製に入りました。作製自体は2、3日でできるそうですが、工場の混み具合と取り付け業者の予約の関係で10日後の23日にベンチトップ設置。すぐに何度かガラス修理を頼んで印象が良かったキウイのガラス業者に問い合わせると、
「スプラッシュバックは前にやってたけど今はやってない。別の業者を紹介する。」
というまさかの返事!この住宅ブームの中で事業縮小とは驚きの展開でした。

慌ててベンチトップを取り付けてくれた、前回のメルマガに登場した老板(ラオパン)(社長、棟梁、親方などの意)こと、イン師傅に泣きつくと、
「広東人の業者がいるぞ。」
と、紹介してくれました。こうして今回の改装はキャビネット業者、キャビネット取り付け業者、ベンチトップ業者、スプラッシュバック業者と全員が中国人、しかも中国生まれの移民第一世代となりました。当然ながら英語の「え」の字もなく、のっけから中国語です。

「こっちのガラス板は1平米380NZドル。こっちのクリスタルは平米520NZドルだ。1平米より小さくても、最低料金は1平米分だ。ガラスのカットは1ヶ所50NZドル。コンセントの穴も1ヶ所分だ。色はここから好きなのを選ぶんだな。ガラスかクリスタルかの違いは横から見ればわかる。ガラスは緑っぽくてクリスタルは完全に透明だ。」
やって来た硝子屋は阿郎(アラン)と名乗りました。中国語によくある呼び名やあだ名に付ける阿のついたままの名前を名詞に刷り込んでいました。「阿Q正伝」の阿Qや、日本語で言えば「やっちゃん」「よっちゃん」のノリ。キウイにはAllanで通しているのか(笑)?

「スプラッシュバックはグレイッシュなブルーで!」
とずっと決めていました。差し出された5cm四方のサンプルを見ながら、イメージに近い色2枚と予定していなかったものの、元々好きなライムグリーンにもつい手が伸びて1枚選び出しました。ベンチトップの上の壁に3枚を立てかけ、原案でいくか、修正案でいくか?
「薄い青がよさそうだな。緑は色が強すぎて目に来るぜ。まぁ、好きなのを選ぶんだな。You are the boss!」
という硝子屋阿郎。夫は、
「キミの好きなのにしたらいいよ。」
という結婚24年目の円熟の対応!?

いつも直感で即断即決の私にしては珍しく、2、3分迷っていると、
「今決められるか?今日決めたら明日製図して工場に発注できるぞ。発注したら2週間だ。ホントは10日ぐらいでできるんだけど、工場の受注状態にもよるから、『客には2週間って言え』って工場から言われてるから2週間って言っておくけど、早くできれば早く来るぜ。」
さすが百戦錬磨の移住第一世代。ツボを心得た押しです。
「じゃ、これにするわ。」

決まった瞬間に電卓を叩き始め、面積がこうで、カットがいくつで、GST(消費税)込みで・・・・と1分以内に見積もりが出て、
「手付金は半額でもいいか?小切手か銀行振り込みだ。」
その場で銀行の口座番号をもらい、彼がクルマで出て行った直後にはネットで送金終了。このスピード、この価格(かなり適正な価格に思えました)。今日は我が家で3軒目という、まんざら大風呂敷でもなさそうな話の仕事量。きっと今までの業者のようにきっちりやってくれることでしょう。

キウイのガラス業者に紹介された別のキウイの業者は、立派なホームページにトールフリーの電話まであり、商品は20年保証。施工例の家はどれも豪邸ばかりで、壁全面がガラスだの、柄入りだの、我が家の半分ぐらいをキッチンにしないと合わないような、大振りなものばかり。うちはうちらしく、移民第一世代と一緒にがんばろう!ということで、阿郎と組みますわ。どの色になったかはまたの機会に。

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「マヨネーズ」

ブルーのサンプル2枚には裏に名前が貼ってあったものの、ライムグリーンだけは文字が薄くなっていて名前が読めません。
「これはなんていう色?読めないんだけど。」
と聞くと、
「WASABIだ。」
と言われて大笑い。日本人には身も蓋もない話ですが、ここではライムは庭でも育つ身近なもの。山葵の方がオサレというわけなんでしょう。

西蘭みこと 

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