「西蘭花通信」Vol.0716 スピリチュアル編 〜40代のミッドライフ・クライシス〜    2015年6月13日

ミッドライフ・クライシス(中年の危機)という言葉は、私にとって長い間他人事でした。それが身近になってきたのが40代。周りでドミノ倒しのように、離婚もしくは事実離婚というべき仮面夫婦が増えてきました。特に当事者たちの40代最後にかけては、「おしどり夫婦」で通っていたはずのカップルからさえも、「お互い新しいスタートを切ることにしました」的な知らせが舞い込み、何度愕然としたことか。

その勢いたるや、「駆け込み離婚」とでも呼びたいほどで、
「離婚って、50代になったらできないの?」
と、思ってしまうほどでした。別れる理由はさまざまながら、「再スタートを切るなら少しでも若いうちに」という思いが40代を急がせたようです。50歳の誕生日を迎えたとき、
「とりあえず40代は乗り切ったな。」
と思いました。面白いことに、自分も周りも50代になったせいか、ここ最近はふっつりと離婚の知らせが途絶えました(笑)

仕事と子育てに追われた30、40代が過ぎ、ほぼ子育てが終了した50代。私の場合、返ってきたのは「自分」ではなく「夫婦」でした。かつては仕事以外、どこに行くにももれなく子どもがついてきた時期がありましたが、今やもれなく夫がついてきます。お互い別行動になるのは、仕事かボランティアかランニングぐらいなもので、それ以外は買い物からラグビー観戦まで、いつも一緒です。24時間一緒にいることも珍しくありません。

そんなに一緒にいても話題が尽きたり、退屈したりすることもなく、笑いが絶えません。長い月日が2人をして手袋や靴下のように、左右揃ってこそ活きてくるたわいもない存在に変えてしまったようです。価値観や判断の基準が、ごく自然に"I"よりも、"We"に変わりました。まず夫婦としての利害を最大優先し、その中で自分に考えや主張があれば相手に伝え、なければ相手に一任し、意見が合わなかったり必要があれば話し合い、最後はお互い納得した形で決定を下して先に進む。当たり前のようですが、ここまでこなれた流れになったのは、やはり共に過ごした時間の長さがあってこそだと思います。

今の私たちが夫婦としてあるのは、世にも不思議な体験があったからかもしれません。それは2010年11月のことでした。私は3日3晩インフルエンザのような症状に見舞われ大変な思いをしました。高熱で意識は朦朧とし、悪寒で身体が震え、節々が軋み、その痛みで泣くほどでいた。しかし、風邪とは違って咳や鼻水はなく、ただただ立っていられないほどの寒さに何枚も着込んで雪だるまのようになってベッドに入るしかありませんでした。

ベッドに入ると軽い金縛り状態になり、身体が動かなくなりました。それまでの生涯で一度だけ金縛りを経験していたので、目を閉じているのに真っ暗な部屋の中の様子が見えたり、身体が全く動かず、声も出ない状態でも、やや落ち着いていることができました。常軌を逸した悪寒も病のせいではなく、霊的な何かが近くに来ているためだということが漠然とわかっていました。夫の父である義父が他界してから、私は何度か義父の訪問を知覚することができ、そのたびに尋常ならざる悪寒があることを経験していました。

3日3晩同じ時間になると体調が急激に悪化し、ベッドに入るや身動きができなくなり、意識が曖昧になり、部屋の様子だけはありありと見え、家族の様子もはっきりわかるという、夢でも見ているような状態に入りました。その中で、
「私たち夫婦は20年前の結婚のごく初期の段階でボタンを掛け違えてしまい、それ以降ずっとズレたままだった」
ということを告げられました。そのズレを私が無意識のうちに埋め、それが20年近く続いた結果、限界に達しているという、驚くべきことを知らされました。

私自身は心身ともに健康そのものだと思っていたのに、実はかなり危機的状況にあり、結婚生活のために私の健康が危うくなっている、と告げられました。まるで死の宣告を受けたかのようで、金縛りで身動きが取れないまま涙が出ました。
「このまま死んでしまうのか。こんなに短い人生だなんて。」
と思うと、とどめなく涙が溢れ、耳の中に流れていきました。告げられていることが真実であることを、私は悟っていました。

今やおぼろげな記憶になってしまいましたが、確か最初の日に結婚生活による私の健康の危機を伝えられ、2日目には私たちが何を間違えたのかを知らされました。しかし、3日目には最大の教えが授けられました。それは、
「これまでの20年は私が引っ張ってきたので、ここからの20年は夫が引っ張るように」
というものでした。そして、
「私が"よくやった"と思えたら、夫は私のおでこにチューをしろ!」
という、おまじないも教えられました。冗談のような方法が私へのブレーキになり、オーバーヒートの防止になるというのです。

あれから5年。私たちは今でも幸せな結婚生活を続け、私も元気に過ごしています。夫はほんの一時「でこチュー」と呼んでおまじないを守っていましたが、今や完全に忘れています。というか、自分で夫婦や家庭を引っ張るようになり、
「でこチューで褒めてほしいのはオレの方だ!」
ぐらいなのでしょう(笑) こうして私たちのミッドライフ・クライシスは回避されたのです。

(この話はブログ「さいらん日和」で少し書き残していました。メルマガにしてなくて残念)
(先日夫婦で行って来た温泉。こういうことがすっかり似合う50代?!→)

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「マヨネーズ」

昨日は20代のフランス留学中にパリで知り合った、古い女友だちがインドで再婚しました。相手はもちろんインド人。
「深く考えたところで、好機を待ったところで、人生は思っている以上に短い気がして」
と踏み切ったそうでう。相手は確か再々婚。酸いも甘いも知り尽くした2人の大人婚。心から祝福したいと思います。お幸せに。

西蘭みこと 

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