「西蘭花通信」Vol.0744  生活編  〜ブルースプリング・レポートVol.41:アルファ世代がやって来る〜       2018年9月21日

次男・善(21歳)は2008年の11歳のときにアメリカのカードゲーム「マジック・ザ・ギャザリング」に出会い、のめり込んでいきました。マジックはポケモンカードや遊戯王カードの大人版のようなもので、プレーヤーは全世界で推定200万人、うちプロを名乗れるのは約200人なんだそうです。善はセミプロとして、かろうじてプロ枠に踏みとどまっており、NZのプロは善を含め2人のみです。

21歳にして10年のキャリア。親しいカード仲間との厚い友情も10年になりました。仲間の中でも特に親しくしているアラフォーのデイブは偶然にも家が近所で、仲間であると同時にメンターの一人として善を導いてくれています。年齢は親子ほど違っても、カードの世界では対等な関係。善は仲間との付き合いの中で、年齢に関係なく相手を敬うことや、戦績だけでは計れない大人の経験、考え方、価値観を学んできました。

親に言われるとカチンと来る話でも、仲間が諭せば耳を傾ける場合もあり、それは多感な10代だけでなく今も続いています。親の言葉には親子の圧力を感じても、彼らの言葉にはそれがないので、スーッと届くようです。過程がどうあれ、本人が納得して正しい道を歩むのであれば親としては本望なので、10代以降の善の子育ての多くを実質的に彼らに委ねてきました。

デイブは2人の子持ちで、善は子どもの頃から彼の家に歩いて遊びに行っては家族ぐるみの付き合いをしていました。彼の子どもたちは善の母校に通っています。しかし、デイブは数年前に離婚し、善はミッドライフ・クライシス(中年の危機)のリアルを間近でつぶさに見てきました。元夫婦は現在、スープの冷めない距離に住み、子どもたちは両家を自由に行き来して、相変わらず家族ぐるみの付き合いが続いています。

「デイブの子たち、スゴいよ。10年経ったらボクの仕事がなくなるって、わかるよ。」
と言って帰ってきたことがありました。善の限られた日本語ではよくわからないところもあるので、根掘り葉掘り聞いてみました。デイブの下の息子は小学校5年生。ぽっちゃり体系ながらスポーツもゲームも大好きなイマドキの子。お隣さんの息子と仲良しなので、放課後にお隣の裏庭で仲良く遊ぶ声がよく聞こえてきます。それだけだったら、ごく普通の10歳の元気な男の子というところでしょう。

「コンピューターとかスマホの使い方がボクたちと全然違って、スマホのゲームとかどんどん作っちゃうの。」
「アプリってこと?」
「そう。アプリなんて使えても作れないよ。」
「作ることがもうゲームなんじゃない?」
「それにあの子たちって、チャットするのにしゃべるの。」
「電話ってこと?」
「ううん。話してるんだけど、それがテキスト(文字)になって相手に送られて、返事もテキストで来るの。でも電話じゃないよ。」
「どうして電話しないの?」
「しゃべってるだけで手は他の事してるから、電話じゃダメなんだ。チャットしながら宿題したりゲーム作ったりしてるよ。」
「えぇぇぇえ!」

「あの子が今10歳で、あと10年ちょっとで大学出るじゃん?その時ボクは30歳ぐらいだけど、あんなマルチタスクの子たちが働き始めたら、ボクの仕事なんてなくなるよ。ホントにスゴいよ。」
「ゼネレーションギャップを感じる?」
「うん。ボクたちってチャットするとき自分で字打つもん。どれだけ速く打てるかは大事だけど、しゃベってる子はいないな。あの子たちはもう、字を書くことも打つこともないんじゃないかな。」

「ロボットに命令したり?」
「そうそう。口で言うと電気がついたりドアが開いたりとか。AI(人口知能)の中で育って、ロボットが友だちだったり、出かけるときはドライバーレスカー(自動運転車)だったり。」
「テクノロジーに抵抗がないどころか、それを使いこなしちゃうんだろうね。火星に行っちゃうとか。」
「そういうのはボクたちとは違うね。自分が古いってよくわかるよ。」
21歳が古かったら、56歳は生きる化石か?

21歳がゼネレーションギャップを感じる新世代は、こんな記事によればアルファ世代と言われているようです。2010年以降に出生し、全世界で毎週250万人が誕生している計算になるんだとか!デイブの次男は2008年生まれですが、2007年のGFC(世界金融危機)、日本的には2008年のリーマンショック以降、一部の古い価値観が崩壊し、世の中が変わったことを実感したので、個人的には2007年以降に生まれた子どもたちではないかな、と思います。字や絵をかいたりキーボードを打ったりする前からタッチスクリーンに触れだした、最初の世代。iPhoneが発売されたのは奇しくも2007年です。
        (生まれたときからスマホで自撮りが当たり前の世代→)

ベビーブーマーを筆頭にそれまでの世代の定義づけが西洋主導だったのに比べ、インドや中国が主導する世代になるというのも興味深い事実です。人数が違いますからね。リーマンショック後のインドや中国は、疲弊する欧米諸国を横目に世界的にプレゼンスを高め、その躍進は経済先進国の価値をどれだけ落としめたことか・・・と、つい物事を経済面から見てしまうのはいかがなものか(笑)デイブたちに導かれてきた善が彼らの子のアルファ世代を導くどころか、彼らに職を追われるのか?10年後はいかに?

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「マヨネーズ」
ここ20年以上、世界は中国パワーに圧倒され続けてきました。人口の多い国の影響力というものを、世界経済はどれほど目の当たりにしてきたことか。国連の試算では中国の人口がインドに抜かれるのは2024年。あとたったの6年です。10年もすれば、私たちはまだ見ぬインドマネーやインドパワーに右往左往しているのか?

西蘭みこと 

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