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Vol.0031 「NZ編」 〜お勝手口から失礼します〜

たまたま夫と行ったイタリアン・レストラン「DALUCA」で大好物のアーティチョーク料理を見つけ、すっかりご機嫌になりホロ酔い加減で帰って来た時でした。「やっぱり粗塩で焼いたに限る」とブツブツ言いながら頭の中は何層にもなった分厚い皮で包まれたアーティチョークでいっぱいの私のところへ、パソコンを立ち上げメールのチェックをしていた夫が「ごめん、つい読んじゃった・・・」とちょっと深刻な顔してやって来ました。「寝る前に読んでおいた方がいいと思うよ」という夫の一言に従ってフラフラ〜とパソコンのある部屋に行ってみると、メールボックスに届いていたのは、なぁ〜んとニュージーランド移住の師と仰ぐレディーDからの私宛のメールでした!「なんて、ラッキーな日♪」と、読み始めると・・・・。

「更新されたNZ移住のパスマークのことはご存知ですよね?オットは"そのページを添付して差し上げなさい"と言うのですが、もう目を通されていますよね?通常5週間前の通達のところが、今回はなんとたった1週間前!18日からは3ポイントアップの28ポイントとなり・・・」云々。「何のことかしら?28ポイント?パスマーク?」・・・そして次の瞬間、ワインの回った頭にも何のことだか理解でき、「ねぇねぇ。大変〜」と、とっくに何が起きたのか理解していた冷静な夫を呼ぶ羽目に・・・。

NZ移民局が今月11日出した通達によれば、まさに私たちには「このカテゴリーしかない!」という「一般技能部門」での移住申請に必要とされるポイント制のパスマークが、従来の25ポイントから18日以降は一気に28ポイントへと3ポイントも引き上げられることになったのです。3ポイントがどれほどのものかと言うと、「同一職種で6年以上の業務経験」に相当します。大学院を出ていても四大卒より2ポイント多いだけだし、配偶者が博士号を持っていようが、移住資金で1,200万円用意できようが、どちらも2ポイント追加になるだけです。ですから3ポイントはゆゆしき事態。

通達を読み進めると、昨年10月に年間移民上限数が従来の3万8,000人から4万5,000人(+/−10%)にまで拡大されたにもかかわらず、「一般技能部門」での申請件数比率が予想以上に増えてしまったことに対する対応策だということがわかりました。ダルジエル移民相は、「ここ1年で申請は急激に増えており今年度は5万3,000人が認可される見込みで、移住需要が下火になる兆候はまったく見られない」と現状を淡々と説明しています。

ここまで読み進めて妙に納得してきました。「そりゃそうだろう。こんなにファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が整っていて、世界的な景気不振の中でピカピカの経済を維持していて、物価も安く、安全で、自然も豊かで、自給自足度が高くて・・・」。自分がこんなに行きたいのだから、世界中に同じような考えの人が5万3,000人くらいいても不思議はありません。

更に「Clearly New Zealand is an attractive migrant destination・・」と続きます。「そうだ。そうだ。」と思わず合の手。そして「資格やこれまでの業務経験に関連する仕事を確保している人には今回の変更は影響しない」とはっきりと断言し、こうした仕事が確保できた人には従来の5ポイントに3ポイント上乗せした8ポイントを認めるとしています。つまり今回引き上げられる3ポイント分をこれで相殺しようと言う訳です。これは裏を返せば、"今までのキャリアに関連する仕事を見つけられた人のみ受け入れる"ということになるのでしょう。ですから美容師や看護婦といった手に職がある人は影響を受けないのです。

「素晴らしい!」。手に職のない自分たちサラリーマンにとってはめちゃくちゃ狭き門となってしまったことは棚に上げ、私はホロ酔い気分もすっかり覚めて心底感心していました。この迅速にして明確な政策決定、しかもその決定過程のディスクロージャー(情報開示)の完璧さ(ご丁寧に8月からは申請条件を毎月見直すと予告してますから、これからどんどん条件が厳しくなる可能性大)。同時に国にとって必要と思われる人材への適切な対応・・・「国家運営とはかくあるべし」というお手本を見せつけられたようで見事な政治手腕に舌を巻き、ますます惚れ直しました。「こんな国の国債買いたい。こんな国に税金納めたい・・」本気でそう思いました。ブラジル生まれの人に国籍をとったからと言って「三都主」を名乗らせるのとは大違いの大局感ではないですか!

しかし、よくよく考えたら西蘭夫婦はどちらの名義で申請しても自己診断では24ポイントでもともと1ポイント足らなかったのです。「移住コンサルタントに相談すれば1ポイントぐらいどこからかひねり出して来るんだろうか」などと、呑気に構えつつ何もしてこなかった私たち。それが仇になって(?)この度いよいよ門前払い状態に。まあ、1ポイントだろうが4ポイントだろうが足りないことには変わりないので、私たちには残念がったり悔しがったりする理由は特になかったのです。「表玄関があるなら必ずどこかに勝手口もあるさ・・・。」移住への夢はますます熱く・・・。

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「マヨネーズ」  ワールド・カップ・サッカーは、「これまであれだけボロボロに言われていたトルシエ監督への餞にも決勝トーナメントで1回ぐらい勝てたら・・・」な〜んて軽く思ってましたが、そんな感傷でどうかなる甘い世界ではありませんでした。私たちは日本に住んでいないし、ここでもスポーツ新聞をとっていないのに「トルシエ解任か?」っていう大見出しを何度も見た気がします。それだけ恒常的に出ていたってことでは?ともあれ、日本を離れて18年。日本人として日本をこれほど誇らしいと思ったことはこのW杯が初めてです。心から「ありがとう!」

西蘭みこと