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Vol.0046 「NZ・生活編」 〜不味くてもいいから〜

「多少不味くてもいいから、安全なものが食べたい」。ここ数年はこんな思いが抗しきれないほど強くなってきています。特に子供ができてからは切実です。香港は飲料水から食品全般、口に入るもののほとんどを中国からを始めとする輸入品に頼っています。アメリカやオーストラリアといった農産物の主要輸出国以外からも、タイのチキン、オランダのトマト、スウェーデンのししゃも、イスラエルのオレンジ、南アフリカの貝、台湾のえのきだけと、枚挙に暇がないほどありとあらゆる国からの食品がスーパーに並んでいます。

農業従事者がほとんどいない土地柄ですから、ニュージーランドの約二倍に当たる680万人の人口は食品を外部から調達しなくては、文字通り"食っていけない"のです。そのため世界中からいろいろな物が流入してくるのですが、事は食べ物。工業製品のように同じ物なら安ければ安いほどいい・・・という訳にはいきません。けれど、生鮮食料品を筆頭に「安くて新鮮で・・・」となると勢い中国産に頼ることになります。

ところが中国からの食品は、残留農薬が強過ぎてそれを食べた人が痺れや嘔吐を訴えたり、果ては死亡したこともあるほど汚染された野菜や、ほとんどないに等しい工業排水規制の中、水銀等身体の中で分解されない鉱物を含んでいる魚介類が混じっていることなどが、繰り返し報道されています。肉は狂牛病の発症こそ報告されていませんが、トリ風邪といわれる、ニワトリを始めとする家禽が感染するインフルエンザの発症元と見られ(実際の発症は香港だけですが)、数年前には香港で死者が出たこともあり社会問題化しています。

感染経路を断ち切るために、一度に200万羽の生きたニワトリを処分したこともありました。あの時は胸が潰されるようでした。「食用にならない。人に移る」という人間の都合で200万もの命が失われたのです。しかし、それを決定した香港政府にもほとんど選択の余地がありませんでした。最近でも時々大量処分が行われていますし、笑い話のようですが、ニワトリに予防接種を受けさせるようにもなっています。

もちろん中国からの食品のすべてが汚染されているわけではないでしょうし、中国と日本が長葱で貿易摩擦を起したことは記憶に新しいかと思いますが、輸入審査が厳しいであろう日本市場にも、中国野菜はかなり出回っていますから色眼鏡で見ることは慎みたいと思います。しかし、いろいろな問題が次ぎ次ぎに報じられているのも事実なのです。こうした食べ物を毎日口にしなくてはいけない身には、これらの一つ一つが深刻な問題です。

そんな折に持ち上がっているニュージーランドの遺伝子組み換えトウモロコシ問題。作家ニッキー・ヘイガー氏が最近出版した「疑惑の種」の中で、2000年にアメリカから輸入された5.6dのスイートコーンの種の中に遺伝子組み換えが行われていたものが混じっていたと暴露したことから端を発したこの疑惑は、クラーク首相がこの事実を把握し、既に作付けが終わったトウモロコシをすべて引き抜かせようとしたのにもかかわらず、業界団体の強いロビー活動でそれを断念したという経緯を詳述しています。農林省は既に、疑惑が持たれるトウモロコシ約30dを見つけ出し、近く破棄することになっています。

ヘイガー氏が組み換え作物に一貫して反対している緑の党と深いつながりがあるため、これは政治問題として扱われかねませんが農業国NZにとっては政党間の党是を超えた、非常に重要な問題ではないでしょうか。世論でも言われているように、「組み換えフリー」の農作物というのは、「狂牛病フリー」の牛肉同様、NZの農作物への絶対の信頼となります。しかし、政府は限定的な組み換えの導入を検討しているようです。

組み換えられた遺伝子の野菜や、抗生物質が混じった魚介類や肉類を前にして、消費者にはなすすべがないのです。遺伝子操作はいったん受け入れてしまえば、種子を介してなし崩し的に広がってしまうことは素人にもわかることでしょう。組み換え食品は地球の食糧不足を解消する可能性を秘めていることになっていますが、現状ではそれがアフリカの飢餓を解消する訳ではなく、企業のコスト削減の手段となり、「こんなに安いなら・・・」と既に食べ物が十分行き渡っている私達の更なる飽食を煽っているだけではないでしょうか。

スーパーで鶏肉を買う時に、「このトリは風邪を引いてないだろうか?こっちの解凍済みのブラジル産の鶏肉とどっちが安全なんだろう?」と日々考えあぐねながら買い物をしなくてはいけない身には、NZの現状は羨ましい限りです。皮が硬かろうが、多少大味だろうが、安全性の高さは何にも変えられません。おまけに産地直送で鮮度も高い訳ですから、料理の腕を磨けばいくらでも美味しくいただくことができるはずです。次世代を育む身にとって、自分たちを越えたもっと長期にわたる磐石な安全がどうしても必要です。失ってからではどうにも遅過ぎるのです。

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「マヨネーズ」  先日、家族で歌舞伎を見に行きました。夫以外はみんな初めて。ド素人でも「連獅子」、「藤娘」と言う名前くらいはわかったので、「子供を連れて行くにはいいかも。NZに行ったら見れないし」とちょっと奮発してチケットを買い、大雨にもめげずに出かけていきました。ところが、次男の善は始まる直前から突然の爆睡!そんな〜、夏休みになってからは10時くらいまで起きているのに、「まだ7時半・・・(汗)」。長男も最初の「歌舞伎とは・・」という説明の時はかろうじて起きていたのに、獅子が真っ白な長いたてがみを振り乱して出てきた頃はZZZZZと夢の中。夫は寝入っている二人を一人ずつ指差し、「コレも、コレも160j(約2500円)」とため息。しかし、善は翌日の絵日記に「I saw Kabuki!」と書き、舞台の絵も堂々と・・・。世渡り上手なヤツになりそうです。

西蘭みこと