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Vol.0057 「NZ編」 〜カタツムリ休暇〜

「先日、出掛けついでにキャンピングカーのレンタル屋へ立ち寄ってみれば、なーんと!12月の予約は既に一杯とのこと。のんびりしていそうなKiwiなのに、ホリデーの手を打つのがこんなに早いとは。8月にして既にクリスマスの予定が立っているってことなんですよね。私は目をまん丸くして驚きました。冬休みも春休みもお芝居のチケットなら難なく最前列中央をゲットできたのに、繁忙期料金のキャンピングカーがさっさと出払ってしまうなんて」

ニュージーランド移住の師と仰ぐレディーDからの8月の終わりのメールには、こうしたためてありました。彼女のさり気ない日常描写は、移住を目指す者にとってはため息の出るようなものばかりですが、特にここ香港ではキャンピングカーのレンタル屋どころか、キャンピングカーそのものがないので、本当に遠い世界のお話で二重にため息が出ました。

香港でのホリデーは必然的に海外となり、あえて中国にでも行かない限り、飛行機やホテルを予約して家族で何十万円もかけて、大きな荷物を持っていく、仰々しいものになってしまいます。一方、車で出かければ、香港島を最長コースでかなりゆっくり目に一周しても40分かかるか、かからないかで自宅まで戻ってきてしまいます。

ですからNZ旅行中に、前の車が本格的なキャンピングカーだったり、キャビンの部分だけをマイカーにくっつけてお尻をフリフリ走っていたりする車だと、「これだったら家族5人でも寝られそう」、「カーテンがカワイイ♪」など、ついつい後ろから見入ってしまいます。窓越しにかなり年代ものの家電製品が見えたり、パジャマ姿の子供がいたりと、自宅がタイヤをつけて移動しているようなものですから、垣間見えるキウイライフに興味津々。

NZでここまでキャンピングカーが一般化しているのは、思わず出かけて行きたくなるような美しい風景とそれが簡単にできる道路網があり、大家族でも車だったら気軽に行けて安上がりっていう一般的な理由がまず思い浮かぶことでしょう。ここからは私の推論ですが、@社会自体が非常に家族単位にできていて、かなり狭いであろうキャンピングカーの中で家族全員が身を寄せ合って寝起きすることがさほど苦痛ではなく楽しみとなる、Aハレとケの敷居が非常に低く、本来ハレである旅行に、限りなく日常生活そのものであるケを引っ張り込んで来て混在させていると、いう印象があります。

これは「日常生活の鬱積をハレの時に晴らす必要がないほど、溜まっているものがないのではないか?」と、更に飛躍した考えにつながって行きます。もちろん、仕事や人間関係のストレスはキウイにだってあるはずですし、最近では深刻な犯罪も多数起きています。それでも私達が認識しているものより、その水準がかなり低いのでは?と、つい勘ぐりたくなります。

レディーDは続けます。「そして、ここからどうこじれて、と言いますか、どう流れてそのようになったのか、これまたオットの早業なのですが、"それならいっそ日本からキャンピングカーを輸入しよう"と、もうほとんど決定の方向で進んでいます。もちろん中古なのですけれど、オットが言うには"通販の高い買い物みたいだな"ということで、試乗もできずに、ただネット情報で画像を眺めて注文です。私は大いに頭を悩ませます。キャンピングカーが本当に必要なものなんだろうかと」

必要です、きっと。いきなり"輸入"っていうのはスゴ過ぎとしても・・・。キャンピングカーでの旅行は手軽るではありますが、自宅を旅先に持ち込むわけですから、洗濯や食事の用意などフツーの日常もこなさなくてはならないでしょう。ですから、そういうものが苦にならず、お金を払ってでもその煩わしさから逃れようという発想とは違う、まったく別の休日なのではないでしょうか。まるで家や家族との結びつきを確かめ、楽しみ、それを更に深めていくような、"カタツムリ休暇"なのかもしれません。それを可能にするのがキャンピングカーなら、借りてでも買ってでも、やはり必要なのではないでしょうか?

「これは家族しか頼る者がいなかった開拓民以来の伝統なんだろうか?」と、またまた深読みしたくなってしまいます。だとしたら開拓民の後輩として、それに続かない手はないでしょう!「是非ともじゃんじゃんカタツムリしちゃって下さい、レディーD!西蘭家もいずれそれに続きます。私は運転免許から始めないといけないんですが(汗)・・・」

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「マヨネーズ」  「キャンピングカーは10月中にも届くようです。ええ確かにキャンピングカーの響きは日本の皆さんには憧れがあるでしょう。でもNZでは、近くで見かける数から言って、決して特異な持ち物ではありません。ショッピングモールでも、市街地でも、一般乗用車と並んで駐車されています。願わくは"中を覗かせて"と声をかけたいところなのですが」。

9月に入ってからのレディーDのメールによれば、事は軽やかに進展していたようです。う〜〜ん。この決断と手際の早さ!西蘭家のカタツムリ並みの移住計画とは違って、トントン拍子で移住を実現させてしまっただけのことはある、とますます尊敬と憧れの念を強めてしまった次第です。これで夏支度はバッチリのようですね。かく言う西蘭家も来年1月末からの冬休み計画だけはしっかり決まってまして、「旅行で行くのはこれが最後!」と念じながら、ウェリントン、ネルソンなど今まで訪れたことのない中央部を周ろうと思ってます。

(写真はロトルアで見つけた日本の救急車を改造したオリジナル・キャンピングカー!日本のどこ走ってたんでしょうね?)

西蘭みこと