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Vol.0068 「NZ編」 〜扉の向こう側 その3〜

ニュージーランドでは移住に必要なポイント(学歴・職歴、移住資金等をポイント制にしたもの)である"パスマーク"が今月7日より30ポイントに引き上げられ、私達のように永住権取得を目指す者にとって、移住への門が一段と狭くなってしまいました。「そろそろ申請しよう」と思っていた場合では、たかが1ポイントでもそれゆえに申請ができなくなるケースもあることでしょうから由々しき事です。

そうした気持ちを反映するように、インターネットの移住関連の掲示板では「アジア人の受け入れが厳しくなった」という内容の書き込みを目にすることがありますが、個人的にはこれはかなり錯覚に近いものだと思っています。まず、移民局の現行制度は完全なポイント制なので、必要ポイントを取得していて、無犯罪証明などの条件を満たしていれば、どこの誰でも申請でき認可もされるはずで、希望者を国籍で振るいにかける段階がないのです。

申請条件は非常に明確で、内容に目を通せばほとんどの人が自分は何ポイントに相当するのかがわかるほどです。つまり、どこかの国籍の人に対し受け入れを厳しくしたり緩和したりすることが制度上できないのです。この明白さは認可手続きを効率化させるだけでなく、審査官によって申請が通ったり通らなかったりするという恣意的な部分を限りなく排除することで、申請者の不公平感をできるだけ取り除いた、申請側、受け入れ側双方にとって透明度の高い制度と見受けられます。

少し前の2000年の資料になりますが、移民局による永住権取得者の出身国統計によれば、四大出身国は、1位イギリス、2位インド、3位中国、4位南アフリカで、多そうに見える韓国は9位止まり、台湾や日本は上位10位には入ってきません。ちなみに、南太平洋諸国は5、6、10位の順でサモア、フィージー、トンガとなっています。インド人を西アジア人としてアジア圏内に含めれば、確かに上位4位のうち半分はアジア人となりますが、中国を除けば東南アジアや日本、韓国からの申請が突出しているというわけではありません。

ただここ1年で申請件数そのものが急増しているので、出身国の比率に変化が生じている可能性がありますが、審査中のものも多いでしょうから実際の数字はもう少し経たないと明らかにはならないでしょう。以前、景気動向と移住者数の関係に興味を持ち少し調べたことがありました。ざっと俯瞰した限り、アジア人の場合は97年までの未曾有の好景気の際の申請が突出していて、台湾や韓国でその傾向が顕著でした。その少し前には香港人が97年の中国返還を嫌って申請していた時期もありましたが、比率から言えばたいした数ではありませんでした。

つまりアジアの場合、出身国に政治もしくは貧困等の特別な要因がない限り、本国の景気が良い時に移住申請が増え、景気が悪くなると減る傾向があるようです。景気が良ければ申請者の所得や貯蓄も高いでしょうから、移住資金を用意したりNZでの事業投資に出たり、子弟を留学させるなど選択肢が広がることでしょう。また経済のファンダメンタルズとしては、好景気の時は自国通貨高に振れる可能性が高いですから、ニュージーランドドルが割安に感じられることも追い風になるはずです。ということは、アジア人の移住にとって一番の押し出し要因は、景気に左右されない学歴や職歴(不況でリストラされればこの限りではありませんが)などの条件よりも"金回り"である可能性が高そうです。

となると、現在、世界で最も高い経済成長を遂げている中国からの申請がうなぎのぼりであっても不思議はありません。NZのメディアを賑わせている人種差別的発言の矛先や留学生の起こす問題の多くが、漠然と"アジア人"として報じられているものの、前後関係から見て、それが中国本土からの"中国人"(一部台湾人も混じる場合もありますが)を指していることが容易にわかることが多々あります。人数が多い分、問題も頻発し、それが地元との摩擦を生んでいると推測されます。

こうして見てみると、景気の良いアジア諸国(中国以外にインド、意外かもしれませんが2000年に永住権取得で7位だったマレーシアなど)からの申請の増加が、年間受け入れ枠を設定しているNZの移民政策の遂行を狂わせている原因となっている可能性があり、それが政府に受け入れへの門戸を狭くさせているとも考えられます。これが事実であれば、「アジア人の受け入れが厳しくなった」のではなく、皮肉にも、アジア人自らが供給圧力となり、結果的に受け入れ条件を「厳しくさせている」のかもしれません。(もしかしたら、まだつづく)

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「マヨネーズ」  「ほらね、言ってた通りだろう?」。夫は得意気です。毎週日曜恒例の子供のラグビーで、温が8才のチームの中で一本目(いわゆる一軍)に昇格したのです。でも夫が得意になっているのは息子が昇格したことではなく、自分の読みが当たったことなのです。温は今まで万年三本目で、足が速くないこともあって目立ったところがないまま来ました。ただ本人がとてもエンジョイしているので親としては全く不満はありませんでした。

しかし夫は、「8才から面白くなる」とずっと主張していました。ここからはスクラムやタックルなど最もラグビーらしいプレーが本格化する年齢で、ボールを手にしたら誰にもパスせず一気に走り抜いてトライを取る俊足のスターよりも、チームスポーツらしいパスを回し合う本来のプレーが求められるため、ゲームの流れがガラリと変わるのだそうです。おまけに柔道で鍛えた押しの強さと打たれ強さ・・・どんな展開になりますことやら?

西蘭みこと