>"
  


Vol.0108 「NZ編」 〜人生の履歴書〜

ご報告します。私たちは明日、明後日にもニュージーランド移住への第一歩として、長期事業ビザ(ロングターム・ビジネス・ビザ、LTBV)を申請します。私が突然、移住を思い立ってから丸2年。とうとう夢が具体化します。この間、夫を始めとする家族、友人、同僚、メルマガの読者やホームページのビジターの方々、移住経験者、移住エージェント等の専門家など、たくさんの方のお世話になりました。それが直接的なものであれ、間接的なものであれ、私たちがどれほど力づけられ心強かったことか。これから時間をかけて、この感謝の気持ちをお返ししていきたいと思います。ともあれ、ありがとうございました。

・・・とは言うものの、これで終わった訳ではなくまさにここが始まりです。申請は移住計画の入り口を入ったばかりの一里塚。これからどうなっていくのかは移民局の胸先三寸。場合によっては思いもかけない長丁場になるかもしれません。しかしながら、私たちが提出すべきものはすべて提出してしまうので、質問でも来ない限りできることもなく、果報は寝て待て状態です。エージェントとの共同作業で作成した提出書類がベストかどうかはわかりませんが、最終的に20ページにまとまり、補足資料をたくさん貼付されて自分たちの手から離れて行きました。

前回のNZ旅行中にエージェントと契約してからはプロの第三者が計画に加わってきたため、今までのような夫婦二人で、「あーでもない、こーでもない」と言っていたのんびりした時期が終わりました。書類作成や計画の詳述など細かい作業に追われ、まるで果てしないテストを受けているかのようでした。ですから今の達成感と解放感は何とも言えません。しかも私たちは現地で仕事を見つけてから申請する最も一般的な一般技能ビザを早々に諦め、自分たちで起業するLTBV申請を選択したのでかなり詳細なビジネスプランを作成しなければならなかったため、なおさら肩の荷が下りた感じです。

書類を作成しながら改めて自分たちがしてきたこと、学業も職業も含めあらゆることを、ひいて言えば人生そのものをしみじみと振り返る機会を得ました。そしてその一つ一つを拾い上げ、「移住」という最終目標につなげられるかどうかを見極め、使えると思えば文章に挟みこみ、使えなければ先に進むという落ち葉拾いのような作業が毎晩のように続きました。大学の専攻や十年前にしていた仕事さえも、ビジネスプランナーが作ったプランの中では移住に結びつくことになり、一見無理があるように見えなくもないのですが、その辺は良心に照らし合わせ、やましいところがない限りは取り上げることにしました。

例えば私が25歳で最初に就いた仕事である広告代理店の営業職という職歴は、ビジネスプランナーによると「あらゆる商品を売り込むセールスのプロ」となり、夫の最初の仕事であった旅行代理店勤務も「シンガポール、香港という競争の激しい市場にあって任されたオフィスの採算性を維持することで管理職スキルを磨いた」ということになります。何だか大袈裟なようですが実際、私は広告代理店の時にあらゆる職種、人種、年齢の人とのビジネスを覚えました。職業柄お客さんが売りたいものであれば別荘から墓石まで何でも売らなくてはいけないのです。「どんな人でも広告代理店のお客になり得るんだから、知らない人と目が合ったら先に会釈しなさい」と、当時勤めていた会社の社長に教えられたものです。

夫の方も、スタッフ十数人の小所帯であっても自分がそれを任されるとなれば、業績、総務、営業、人事、企画、会計すべてを把握しつつ責任をとっていかざるを得ず、バランスシートや損益計算書が否が応でも読めるようになり、キャッシュフローを見たり、自分より年上の人間や外国人スタッフを使っていくことも覚えざるを得ませんでした。そうした経験が職種や住む国が違っても今日の私たちにまで脈々とつながっているのです。その時々では放り出したいような事が次から次へと起こり、悩んだり、途方に暮れたり、愚痴を言ったりもしてきましたが、逃げたり諦めたりしないでこつこつやってきて良かったと思いながら書類に書き入れました。

「今、私たちは人生の履歴書を作ってるんだ・・・」。ある日の夜、一人でパソコンに向かっていた時、ふとそんな想いが頭をよぎりました。日本人に生まれ日本で教育を受け、海外に出て経験を広め、気に入った香港で本当にコスモポリタンな生活を続け、業界での知識を積み、ニュージーランドに出会って人生の岐路に・・・。それまでの経緯を詳述しながら、身につけてきたこと、それを基に自分達ができそうなこと、そして更にそれを通じてNZに貢献できそうなことなどを洗いざらい検証し、これはと思うことを心をこめて書き連ねていくうちに書類ができあがっていきました。

ビジネスプランナーのメールの中に何度も出てきた、"conservative, credible and viable"という言葉が自分の気持ちにピタリと合い、それを目にするたびに「いい人たちと組めたな」と嬉しく思いました。心から住みたい、どうしても受け入れて欲しいNZに対してだからこそ、"慎重に、信頼できる、実現できる"ものを正直に伝えたかったのです。そこが職を得るために多少背伸びした内容になりがちの普通の履歴書と違うところで、できる限り私たちという人物とプランが額面通りに伝えられるものになるよう努力したつもりです。ですから受け入れられた時の喜びはひとしおでしょう。ダメならダメでもちろん次の方法を考えますが・・・。さて、果報を待つためにもしばらく眠ることにします。

***********************************************************************************

「マヨネーズ」 本当に残念なことですが戦争が始まってしまいました。早々に地上戦に入り双方に多数の犠牲者が出ているはずですが、私たちが本当の惨状と正確な犠牲者の数を知ることは永遠にないのでしょう。1日でも1時間でも早い終戦を祈ります。

西蘭みこと