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Vol.0133 「香港編」 〜愛しの湾ブラ〜

「ちょっと出かけてくる・・・」 ほんの3ヶ月半前までやっていたサラリーママ時代、チームの二人にそう言い残して私が昼休みに姿を消す時は、だいたい湾仔(ワンチャイ)に出かけていました。会社の近くから運賃一律30円のトラム(路面電車)に飛び乗り、三駅目で降ります。歩いても地下鉄一駅分くらいの距離ですが、現地での時間を長く取りたいのと、下町の湾仔に乗り着けるものとしては最も正しいと思われる百年来の庶民の足、トラムを愛用していました。

降りるとそこは湾仔のド真中。いかにも香港らしいゴチャゴチャした場所で、混沌の度合いが一気に強まります。「押」と大書された質屋の看板が目に入り、荷車が行き交います。ほんの二駅前は高層ビルが立ち並んでいたというのに、アッという間に風景が変わります。でも、ここに来ると体中のアドレナリンがザ〜ッと循環し始め、俄然元気が出ます。そして、私が勝手にそう呼んでいる、一時間一本勝負の「湾ブラ」スタート!!

回るコースは何種類かあり、@銀行で用を済ませ、サメの骨のダシ入りスープがウリの手打ち中華麺を食べて、付近のアウトレットでカジュアルウェアや子供服を探す、Aトラム通りに平行するもう一本のメインストリートに抜けて、トッピングを自由に選べる車仔麺(チェーチャイミン。要は昔の屋台で食べる麺のこと)専門店、その名もズバリ「車仔麺」に直行し、食後は近所の雑貨屋や文房具屋をのぞいて市場に抜ける、B探し物があればその店に直行し、適当な麺粥屋で食事を済ませ、アウトレットや市場を抜けてフレッシュジュースを買って帰る、などありますが、いずれも帰りは時間を惜しんでタクシーを利用します。

日本でバブルが弾けるずっと前だったと思いますが、「ないものがある伊勢丹」というデパートのコピーがありましたが、私にとっての湾仔はまさに「ないものがある」場所なのです。忘れられないのが97年秋、長男・温が3歳の時のハロウィーン。その前の年は大きな黒猫のアップリケをハンドメイドし、カボチャ色の鮮やかなオレンジのシャツに縫い付けて切り抜けましたが、3歳ともなると物心もついてきてもっと本格的な"モンスター"のかっこがしたいと言い出しました。パーティーグッズの店では、その手の被り物は1万円近くするでしょうし、幼児用となると探すのも大変です。

「困った時は湾仔!」と、あてもないのに昼休みに出かけて行きました。知っている限りのアウトレットをはしごしていくと、「あった、あった〜♪」 緑の恐竜の背中に紫のギザギザがついた被り物!しかも足や手の甲までついた本格的なもので、中のクッションもかなり立体的で、なかなか質のいい物でした。アメリカで売られる商品だったのでしょう。しっかり米ドル表示の値札までついていましたが、もちろん支払いは香港ドルで、価格もアウトレットならではの二束三文。確か1,000円以下でゲッツ!今でも善が着ているので、あれから何年も活躍しました。みんなに「どこで買ったの?」とさんざん聞かれます。

他にも子供の学校行事で必要になった、真黄色(!)の長ズボン、子供用の防水ジャケット、トナカイの角がついたクリスマス用カチューシャだの、「一見どこで買うんだろう?」と思うようなものはすべて湾仔へ探しに行き、必ず見つけ出しました。500円で登校用の黒い革靴も見つけました。ドレスコードが「チャイナ」だったパーティーで、「チャイナドレスはいっぱいいるだろうから・・」と、あえて湾仔で見つけた真っ赤なミニドレスで臨んだこともあります。かなり凝ったビーズの手刺繍のあるドレスで、こんな細かい仕事をここまで丁寧に仕上げるのは、イマドキ中国くらいです。しかも、赤は中国人が最も尊ぶ色。けっきょく、この中国製ドレスでコードをクリアし、ベストドレッサー賞をもらいました。

他にもリボン、誕生日カードやサンキューカード、ラッピングペーパー、クリスマスやバースデーパーティーの飾り、オモチャなども買います。戦利品があってもなくても時間になるまで歩いて歩いて、気分は爽快。帰りがけに目の前でオレンジを3個ぐらい絞ってくれて、一杯たった80円のオレンジジュースを4杯買って(これでコーヒー一杯分の値段!)帰ることもあります。同僚や入り口の守衛さん、お茶汲みのおばさんと、その日の気分で回りに配って、「さぁ、午後の仕事開始!」。お腹も気持ちもそこそこ満足で、長い残業を乗り切る元気が出てくるものでした。香港に戻ったら真っ先に駆けつけるだろう、わが愛しの湾仔。待っててね〜☆

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「マヨネーズ」 日本にいると、外国がものすご〜〜く遠く感じられます。英語を聞くことも話すこともまれで、電車で外国人と乗り合わせると、息子たちはなんとなく熱い目でその人の方を見ています。英語が話したいんだろうな〜、と思って、「話してくれば?」とそそのかすものの、いきなりという訳にはいかないようで、今のところ実現してません。

ある電車で、乗り合わせた黒人の若いおニイさんが、こちらをしっかりと見ながらツカツカと歩いてきたので、「道を聞かれる!」と、親子で期待を込めて軽く身構えていたら(なにせ、私たちは千葉近郊のことが全然わからないので・・・)、「コレ西船橋イキマスヨネ?」と、淀みない日本語・・・。思わず、地図を確認して「ハイ」と答えて、チャンチャン。

ですから、英語を話すことや外国暮らしの経験がないまま、ニュージーランド移住に向けて政府が義務付けている英語テスト・IELTSを受け、実際に受かってしまう方々を本当に尊敬します。日本で暮らしてみて、「この環境で合格点の6.5ポイント取るのはキツイな〜」と、いうのを実感しています。これから受ける方には心から声援を送ります。

西蘭みこと