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Vol.0184 「生活編」 〜子供たちへ〜

日本人は昔から「一年の計は元旦にあり」って言って、その年の大事な計画はお正月のうちに決めなさいって言ってきたの。「いつかやろう」、「後でやろう」と思ってても、なかなかできないでしょう? だから1年の初めに決めて、後はそれが本当になるように一生懸命頑張ろうってこと。わかるかな? 今年の家族の目標は、もちろん「ニュージーランドにお引越すること」。パパもママも、今年はきっと行けるんじゃないかと思ってるの。

香港生まれの温くんと善くんは、「何で行かなきゃいけないの?」と思ってるかもしれないけど、一緒に来てね。香港は小さくて便利で、タクシーでどこへでも行けて、お手伝いさんも簡単に来てくれるいい場所だけど、これはかなり特別なことなのよ。世界のほとんどの国はこういう所じゃないの。よくわからないかもしれないけど、一つの国に住むといろいろな責任が出てくるの。税金とか政府にたくさんお金を払わなくてはいけなくもなるけど、ママはそういう普通の暮らしをあなた達に知って欲しいのよ。それがわかれば、多分どこの国でも生きていけるでしょう。

もちろん、おいしい空気やお水、少しでも安全な食べ物があるところで育って欲しいという願いもあるわ。あの国で10年暮らして二人がほとんど大人になった時、「それでも来ない方が良かった」と思っていたとしたら、ママは心から謝ります。その時には自分で香港に帰るなり、好きなところに行くなりしてちょうだいね。

1月3日。次男の日本語力もかなり上がってきたことから、親として年頭に言っておきたいことを、息子たちにきちんと話してみました。「気持ちが少しでも固まれば」という願いを込めて、移住実現に向けた確固とした想いを語り、私からの願いを一つ伝えてみました。

ママはね、あなたたちに強くなって欲しいの。強いと言っても、誰かをやっつけたりすることじゃないのよ。難しい言葉で「克己心」というんだけど、自分で自分に克つという意味。例えば走っている時に、「疲れたな〜」と思って立ち止まったり、宿題をしている時に「面倒くさいな〜」と止めてしまったら、自分に負けたことになるでしょう? その「イヤだな〜」と思ったところから、今年はほんのちょっとでいいから頑張ってごらん。「どうせ止まるなら、あの木まで走ろう」とか、「もう3問やってから止めよう」という風に、少し我慢してみて。次には最初から木まで走れるかもしれないし、宿題ももう少し進めるかもよ。そうやって、自分で自分に克つクセをつけたら、とても気持ちの強い人になれると思うわ。

どうして強い人にならなくちゃいけないのかと言うと、今の世の中はママ達の子供時代よりもとても危険になってしまったの。ニューヨークのビルに飛行機が突っ込んだり、バリでパパのチームメイトがいっぱい亡くなったりしたテロを覚えてるでしょう? あんな事件はママが子供の頃にはなかったのよ。日本でも簡単に子供が連れ去られたり、殺されたりするようになったし、駅で肩がぶつかったくらいで人を殺す人までいるのよ。

こんな時代を生きていくためには、まず自分がしっかりして、気持ちも身体も強くならなくちゃいけないと思うの。テロで何もわからないうちに死んでしまったら仕方ないけど、生きるチャンスが少しでもあるんだったら、ママはあなた達に絶対に生き残って欲しい。テロリストは人が死ねば死ぬほど嬉しいんだから、彼らを許さないためにも絶対に死んではいけないの。わかる?諦めてはだめ。最後まで諦めないでいられるように強くなろうよ! イラクの地震でパパもママも死んでしまった子供が1,200人もいるの。どこの誰なのか名前もわからない赤ちゃんだっているのよ。その子たちはまさか自分が一人ぼっちになるなんて考えたこともなかったでしょう。でも、これからはずっと一人で生きていかなくてはいけないの。明日どうなるかなんて、誰にもわからない。だから何があっても強く生きて、家族が一緒にいられる間は、それがどんなにありがたいことなのかよく考えようね。

自分に克つクセをつける以外に、もう一つ強くなる方法があるよ。それは、人と比べないこと。SMAPの「世界に一つだけの花」っていう歌を知ってるでしょう? お花はどれもきれいでどれが一番きれいなんて言えないって歌ってるでしょう? 人間も同じなの。"No.1"よりも"only one"の方がずっとずっと大事で強いのよ。比べてばかりいて、「自分の神様が一番偉い」と思えば、人間は戦争までしちゃうものなの。でも、本当は人に勝った負けた、自分が何番なんてどうでもいいこと。人と違っていても構わない。みんなが違っているのを認め合って、お互いに信じることが一番大切だと、ママは思ってるよ。

よく温くんが「何でボクだけ?どうして善はないの?ズル〜い」と言う時があるでしょう?ママはあれを聞くたびにとっても残念に思ってる。ママなりに「3歳違いだから、これぐらい差があってもいいな」と考えてるつもり。ご飯でもお小遣いでも温くんの方が多いでしょう? だから重い荷物を持って、勉強も長めにするのは当たり前じゃない? それを「ズルい」と言われると、「ママが一生懸命考えたことをわかってくれてないんだな〜」とがっかりしちゃうの。もう少し、ママを信じて!それでも文句があったら言いに来てちょうだい。

本当に強い人は人には優しいもの。弱いところを一つ一つ直してきた人だから、みんなの気持ちが良くわかるんだろうね。昔から人をいじめる人は本物の弱虫よ。二人に言うだけじゃなくて、もちろんママも頑張るよ。自分には強く、人には優しく生きていけば幸せに暮らせるといつも思ってる。そんなことを考えながら今年も仲良くやって行こうね。そして、みんなでNZに行こう!

西蘭みこと