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Vol.0204 「生活編」 〜神無刻 その2〜

「9・11のテロで、不意に命を落とした人たちはただ単に運の悪い、犬死した人たちなのだろうか?」 事件以降折に触れて考えてきたことですが、私なりに到達した答えは、「NO」でした。ただし、これを教訓に残された者たちが何かを学ぶ限りにおいて・・・という条件が付きますが。事件直後の衝撃でありとあらゆる対応がなされたとしても、それが一過性のものに終わり、事件が風化して犠牲者たちが忘れ去られてしまうようであれば、貴い死は無駄になってしまうと考えてきました。

彼らの身を挺しての犠牲を無駄にしないためにも、私は痛ましい事件を絶対に忘れず、子供達に対しても残酷な話や場面であっても、事実としてできる限りのことを伝えてきました。しかし、「これは残された者の自己欺瞞的な解釈でしかないのかもしれない」という思いも、断ちがたいものでした。犠牲者にしてみれば勝手に課せられた使命がどれほど恨めしかったか、断ち切られた人生、引き離された者への未練がどれほど深かったか、想像に難くありません。彼らが成仏できないまま、哀しい目で地上を見下ろしつつ漂っているのではないかと思うと、自分の答えへの自信は急に萎えてしまいそうでした。

その命題への最終的な回答を見つけたのは、スペイン列車爆破テロの少し前でした。それは「スピリチュアル・ドリーム」(シルビア・ブラウン著、英語原題"Book of Dreams")という本の中に記されていました。この本は眠っている間に見る夢がいかに人生を豊かにし、感情のバランスを取っているかを、サイキックとしての著者自身の深く長い経験から説き起こし、クライアントから送られてくる一般の人にはたわいもない夢のかけらを見事に読み解いては、そのメッセージの大切さを伝えています。

その中でいかに多くの人が、9・11のような大惨事を夢として予知していたかを知りました。エレンという女性が見た夢は、夫と二人で車に乗っている時に、嵐が近づいてくる気配を感じて引き返すところから始まります。遠くに高層ビルが見え、「オズの魔法使いの」のエメラルドシティのようだったと言います。そして、「近づくと、二つの高い塔のようなものが見えました。竜巻だと思ったのですが、その二つの塔は先端が炎に包まれているのです」という光景を目にします。

著者は、「私たちは、この地上に転生する前に、非常に細かい人生の計画書を書いています。私たち自身が決めた目標を完遂するために。」と、主張しています。これは目新たしいことではなく、多くのニューエイジ的な考え方をする人は、人生のほとんどは生れ落ちた時にすでに定まっていると信じています。著者によれば、その計画書には家族や友人、パートナー、病気、障害、喜び悲しみ、好き嫌い、良い選択・悪い選択などあらゆるものが記されており、この世に別れを告げる正確な時さえ含まれているそうです。

そのため著者は9・11以来、同じ質問を"何千回も"尋ねられることになります。それは、「あなたは、あのテロリストの攻撃の被害者たちもあらかじめそんな風に死ぬことを計画していたというのですか?」と、いうものです。彼女の答えは、「YES」です。「いつか私たちは、あの恐ろしい朝が私たちに思い起こさせたものがどれほど大きな意味を持っていたかを理解する日が来るでしょう。(中略)そして、私たちは、より良きもののために、生まれる前に犠牲になることを受け入れた、非常に進化した何千という魂たちに感謝することができるのです。」としています。

しかし、テロそのものに関して著者は、「神様は、なぜ、こんな風に恐ろしいことが起こるようになさったんだろうと思うことに時間を費やさないで下さい。すべての恐ろしい出来事がそうであるように、これもまた、絶対に、人間が自分で作り出したものなのです。そこには神様はいません。神様は、今、故郷の永遠の愛の中に、それらのすばらしい魂たちを迎え入れているのです。」と語っています。この説明は「神との対話」(ニール・ドナルド・ウォルシュ著)の中での、神の返答とまったく一致しています。

別の女性L.Rの見た夢は、9・11の夜にたくさんの人たちの魂が亡くなる夢です。その中で特に一人の男性と一人の女性の顔が目に入り、「彼らは二人とも微笑んで、はっきりと見えるところまで近づいてきました。」と語っています。「あの恐ろしい日に、数え切れないほどの魂が無事に故郷に帰ったことを見届けたことを誰かと分かち合う必要があると感じ」、「それが愛する人を失った人々に希望を与えることだと思うからです。」とも述べています。彼女は写真を見れば夢の中の女性を言い当てられるとし、「もしたった一人でも、私の経験から慰められるものなら興味深いことだと思います」と、語っています。

私自身、このくだりにはとても、とても慰められました。「彼らは受け入れていたんだ。犬死したんじゃない。」と信じられるだけでも、残された一人としてどんなにほっとしたことか。寝ている間に夢を通じてこういう場面にまで出かけて行く、"思いやり深い旅行者たち"が数多く存在していることも(ほとんどの人は夢を見たことすら思い出せないのでしょうが)、大きな励みになりました。テロのような血も凍るような事態を引き起こすのも人間なら、見ず知らずの人に惜しみない愛を注げるのも人間なのです。私達もまだまだ捨てたものではありません。

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「マヨネーズ」 「この手の話には拒否反応を起こす人も多いだろううな〜。」と想像しながら書きました。宗教に興味のない私が、名前も姿もない"神"の存在を疑わなくなって以来、痩せっぽちだった人生がふっくらしてきた気がします。

西蘭みこと