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Vol.0227 「NZ・生活編」 〜遠恋の果て〜

恋は困難が多ければ多いほど燃え上がるそうで、その筆頭と言えば不倫でしょう。他には、一昔前なら周囲に反対された「ロミオとジュリエット」ばりの恋、今なら遠距離恋愛でしょうか? いずれの経験もない私にはエラそうなことは言えませんが、ニュージーランド行きを控えた今の心境をあえて言うとすれば、3年間抱き続けた片思いに近い遠恋が、いよいよ実ったというところです。(←いよいよ行きます!)

NZ在住の読者の方から、「そんないいことばかりじゃないですよ」、「来てからがっかりしないで下さいね」、「こんなキウイを嫌いにならないで」など、夢から覚めるのを見越した、転ばぬ先の杖的アドバイスをいただいたことは数限りなく・・・。もちろん、「みことさんの想いに、ここに来た頃の情熱を思い出しました」とか、「絶対、後悔しませんよ。待ってま〜す!」など、励まし系のコメントも多数寄せられ、けっきょくプラス、マイナスで言えば半々ぐらいでしょうか?

こうした反応は13年前の結婚の時の周囲の態度によく似ています。「おめでとう。でもホントにいいの?よく考えた?」という慎重派から、「ヨカッタね。これから楽しいよ〜♪」という手放しの称賛派まで千差万別でした。「結婚という同じ経験でも、こうも感想が違うものか〜」と思ったものですが、興味を持ったことに対しては、「とりあえずやってみよう。ダメだったらその時考えよう」で、長年やってきた人間なので、とりあえず結婚し、幸い現在に至っています。

かなった夢が今後どういう展開になっていくのか、正直言って皆目分かりません。今になって香港への未練をほのかに感じているのも事実です。15年近くこの不夜城を自由自在に闊歩し、生き馬の目を抜くような価値観の中で怒涛の暮らしを続けてきたのですから、季節を身近に感じ、夕焼けを眺め、夜の闇に包まれるような生活を頭では理解できても、実際そこに身を置いた時どう感じるのか、ましてや香港生まれの子供たちがどう思うかなど想像もつきません。それでも今の私は、「きっと上手くいく!」という漠然とした予感に支えられています。

40数年生きてきて、最近つとに感じることは、「まだ起きてもいない問題を心配するのはよそう」ということです。香港でリスクと見返りのからくりをとことん叩き込まれ、「普段はリスクという引き算に甘んじても、ここぞという時には掛け算で勝負をかけろ!」と教えられてきたはずなのに、最後に行き着いたのは、この場当たり的な考え方でした。人生には計算そのものが成り立たない局面がたくさんあるという事実を認め、自分の決心を正当化するための理論武装を捨てたとも言えます。

「好きだから結婚する」、「好きだから移住する」ことに、私の中で計算はありません。今の生活とまだ見ぬ新しい生活との間の損得勘定はしません。それで決心が変わるわけでもなく、二つの生を同時に生きられない以上、意味のないことだと思っています。損得に囚われているうちは私達のように自分自身を売り込み、ほとんど口説き落とすように移住する者には、NZが首を縦に振らなかっただろうと思っています。世の中には一見ラッキーで、「あんなビジネスプランが通った」という例も多々あるそうですが、こと私達の申請に関しては、移民局(実際は委託された大手会計事務所)がしっかりと読み通した結果、コメントしてきた跡がはっきりと見て取れました。

特に私達の場合、最初の所見がこれ以上はないほど否定的なものだったので、あそこから話を180度逆転させるためには、ゆるぎない信念がどうしても必要でした。移民局よりも誰よりも、自分たちこそが移住の成功を信じていなければ、どんなに素晴らしいプランを完ぺきな英文で綴ったとしても、最後の決め手に欠けたのではないかと思っています。最終的に役に立ったのかどうか定かではありませんが、会計士たちの書類とともに、拙いながらも追加書類のかなりを自力で作ったことは、信念の証明への唯一の方法でした。今や古色蒼然とした言葉かもしれませんが、あれはまさにNZへの"ラブレター"でした。

日本という生みの親の元を20年前に離れ、香港という育ての親の元で15年暮らし、今、ニュージーランドという遠いところへ嫁ついでいきます。世間一般には実家というものはいつ帰ってもくつろぐところらしく、どうしてもという時には香港に舞い戻るかもしれませんが、私の場合は実生活通り、一度出たらそれっきりになりそうな気がします(笑) もちろん親への義理と感謝はどこにあっても忘れません。今の気持ちは13年前の夫との結婚の時とまったく同じです。「とりあえずやってみよう。ダメだったらその時考えよう。」

75時間後には機上の人となります。

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「マヨネーズ」 ほとんどのおもちゃをNZに送ってしまい、さすがに退屈したのか、7歳の善が「折り紙折って〜」と、ヨレヨレになった色紙を持ってきました。「ツルにする?風船にする?」と言いながら、適当に折っているうちになぜか巾着型のゴミ箱(!)ができてしまい、意外なものに二人ともきょとん。

善は何を思ったか、「ママ、ゴミ箱って昔から日本にあった?」と、意外な質問。「あったでしょう。」「お侍さんのころから?」「もっと前からじゃない?」「じゃあ、"あけぼの"のころから?」「あけぼの???あのお相撲の?」「なに言ってんのママ、"あけぼの"だよ〜、ずっ〜と前の」「???」「知らないの?"日本の歴史"(マンガ版)に書いてあったよ」 確かあの本の最初は「日本のあけぼの」という章で、石器時代の話だったような・・・;´▽`A

西蘭みこと